2019年12月16日

あまりに大量すぎる医薬品情報に翻弄される医療従事者と患者さん

あまりに大量すぎる医薬品情報に翻弄される医療従事者と患者さん
2019.10.03 ヘルスプレス

 今回は、医薬品情報が多様化且つ複雑化する昨今、その「情報」に翻弄される医療従事者と患者さんについて考えてみたいと思います。
健康フェアにはたくさんの思いを抱え込む患者さんが

●事例1
 多職種が集う仙台市民向け健康フェアに、薬剤師として参加した時のことです。
僕は薬剤師会のブースで、健康相談員として、希望する市民に対してお薬のことを中心に何でも話を聞く担当となりました。  初めに先輩薬剤師に言われたのは、「こういう健康イベントに、統合失調症の方とかがよくいらっしゃいます。
こういったブースで何十分もお話をされていきますので、そうなると順番が全て狂います」でした。
 初め、相談にいらっしゃったのは高齢者ばかりでした、世間話に始まり、お薬のことや健康上の不安のことなど色々お話をされていきました。
 すると、20〜30代くらいの男性が僕の隣の薬剤師の前に座りました。
その後、10分以上は話していたでしょうか。
断片的に聞こえてきたのは、「私は、○○の添加物は一切取らないようにしているんです」、「睡眠薬というのは、???」、「私、OTC薬は信用できないんです」といった内容を延々と話されています。
対応した薬剤師は笑顔を崩さず、辛抱強く耳を傾けていました。
男性は最後に、「お薬とは関係ない話をしてたくさんの時間を取ってしまってすみませんでした。
ありがとうございました。」と言って帰って行かれました。

 対応した薬剤師は、「こういう場でしか色々話せないんだろうね。ひたすら耳を傾けるしかないです。」と話していました。
「先輩薬剤師の言ったことは本当だったんだ!」と驚いたと同時に、たくさんの思いを自分の中に抱え込むしかない精神疾患の患者さんに思いを馳せた経験でした。

説明不足で患者さんが抗がん剤の服薬拒否
●事例2
 高齢女性、胃がんでS-1の内服が外来で開始になった患者さんです。
調剤薬局から疑義照会がありました。
「患者さん、本当は3日前からS-1開始予定だったのですが、具合が悪くて今日まで薬局に来られませんでした。
どのように対応しますか?」でした。
S-1というお薬は服用期間と休薬期間が決まっております。
次回の外来日は休薬期間明けの日に決まっていましたので、「飲み終わりは当初の予定通りにしますので、3日分飲み残す方針でお願いします」と回答しました。

 その後、患者さん自身から電話が来ました。
他の薬剤師が対応しました。
内容は、「S-1内服前から皮疹があった。皮疹が治っていないのに飲んでいいのか?」でした。
薬剤師は電子カルテの診療録を確認した上で「主治医は皮疹の事は把握していますので、内服して構いません。
ただ、もしひどくなるようでしたらご連絡下さい」と返答しました。
すると患者さん「不安なので、次の外来までS-1は飲みません」と言って電話を切りました。

 主治医に報告したところ、この電話の前日に直接電話がきたみたいでした。
主治医としても説明に難渋していた様子でして、「飲まないって本人が言うなら、仕方がない。次の外来でまた考えます」という話で終わりました。
 結果的に、患者さんの不安が解消されず、服薬拒否に至ってしまった事例でした。

我々薬剤師の「ひどくなったら連絡するように」では、患者さんの不安をあおるばかりで、全然相談になっていなかったな、と非常に反省しました。

情報不足で医療従事者もどう説明すればいいか分からない
●事例3
 これは、2019年2月に第二回薬理ゲノミクスセミナー(主催:日本臨床薬理学会、浜松)に参加した時の経験です。
 セミナー参加の動機は、2018年12月にペムブロリズマブ(キイトルーダ)が「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌」の適応を取得した事です。

製薬企業主催の勉強会に参加し、その時に「我々のような一般病院はどのように対応すればよいか」と質問したところ、企業側は「うちらとしても情報を集めているところでして???」などと要領を得ない返答に終始し、結局分からずじまいでした。僕は、「この適応を取得したことで、我々のような一般病院でも遺伝子に関する倫理的配慮の体制が必要になってくるのでは」と思いましたが、情報があまりにもないことに焦りを感じました。

 セミナーには医師や看護師、薬剤師が主に参加していました。
セミナーで学んだ事はもちろん参考になったのですが、それ以上に、会場を包む雰囲気とフロアーからの質問が大変印象的でした。
参加者は「情報がない!」と切実な思いでセミナーに参加されている印象でした。
最後の質疑応答で、とある一般病院に勤務する呼吸器内科医から「NCCオンコパネルと言ったって、たくさんの遺伝情報を提示されても、どれをどう患者さんに説明すればいいのか分からない。
一般病院に勤める我々はどう対応すればよいのか?」という、悲鳴にも似た質問が出ました。
全くその通りだと思いました。

 がんゲノム医療中核拠点病院に指定されている病院(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin.html、 閲覧日:2019年9月21日)には、認定遺伝カウンセラーがおり、有料ですが相談が受けられます。
がんゲノム医療連携病院は、拠点病院と連携を取るよう決められていますので、ある程度の相談体制の質は担保できると思います。
では、拠点病院でも連携病院でもない病院に勤務する我々はどうすればいいのでしょうか?
きっと、患者さんはニュースなどで情報を得て相談に来るでしょう、現在、状況はほとんど進展していません。
「暗たんたる思い」が偽らざる心境です。

全ての病院・医療機関に専門のカウンセラーを
 三つの事例をまとめます。薬物治療を取り巻く情報は複雑多様化し、我々医療従事者はしばしば翻弄されます。
さらに、患者さんはインターネットや書籍で必死になって情報を探します。
重要なのは、病気の治療は「患者さんの生活」そのものであるということです
疾患は慢性化し、病気の治療には、医療従事者だけでなく家族や友人などの近しい人達も併走します。
仕事や趣味もこれまで通り続けたいでしょう。
そうなると、「納得して薬物治療を受ける」という思いに至るまでには複雑な経過をたどります。

 しかしながら、言い訳がましいかもしれませんが、色んな業務を実施しながらの中途半端な説明では患者さんに納得してもらうには不十分です。
また、忙しさから配慮を欠いた発言をし、知らないうちに不安を助長させてしまうこともあろうかと思います。
 ただ、医師にとって、病状説明の時間が膨大な時間外業務の一因となっている現状があります。
薬剤師も、薬局で待つ患者さんのプレッシャーを常に受けていますので(「早くしろ!」と怒り出す方もいます)、十分な説明の時間を取れません。
だから、事例1のように精神疾患の患者さんは健康フェアといった気楽な場でしっかりお話ししたいんだろうなと思いました。

理想は、全ての病院・医療機関に専門のカウンセラーを配置することです
専門的なカウンセリング技術で患者さんとその近しい人により添って欲しいと切に願っています
そうすることで、医師は治療に、薬剤師は処方鑑査と薬物治療のフォローに専念でき、患者さんもその恩恵を享受できます

最後に、今の日本は、「がんゲノム医療」や、「先駆け審査指定制度(医療ニーズが高い医薬品を優先的に審査する制度)」、「公知申請(日本では適応外だが海外では頻用されている適応について、書類審査のみで承認する制度)」、「医薬品副作用被害救済制度」などと制度ばかりが先行している印象です

実際、各制度の存在すら知らない医療従事者はたくさんいます。
こうした状況を放置し続けていれば、そのツケを最終的に払うのは患者さんである、ということを我々は忘れてはいけません。
どうすれば良いか、みんなで一緒に考えてみませんか。
(文=橋本貴尚、医療センター仙台オープン病院、薬剤師)

医療バナンス学会発行「MRIC」2019年10月1日より転載(http://medg.jp/mt/
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セブン-イレブン「残業代未払い」の呆れた顛末

セブン-イレブン「残業代未払い」の呆れた顛末
ガバナンスの利いていない経営体制が露呈
2019/12/15 東洋経済オンライン
遠山 綾乃 : 東洋経済 記者

24時間営業をめぐる加盟店への対応やセブンペイの不正利用など、問題が相次いだ2019年のセブン-イレブン・ジャパン。
年の瀬が近づく12月の初旬になっても、セブンの経営陣は、また会見で深々と頭を下げた。
「従業員、オーナーならびに関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」。
12月10日、都内で行われた会見で、セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長は謝罪した。

残業代の支払い不足は4.9億円 セブンはこの日、全国各地の加盟店で働くアルバイトやパート従業員に対して、セブンが創業した1970年代から長きにわたり残業代の一部が支払われていなかったと発表した。
記録が残っている2012年3月以降だけで、対象は8129店の計3万0405人、未払い額は遅延損害金の1.1億円を含めて4.9億円に上る。
1人当たりの不足額は最大で280万円に達し、平均は約1万6000円だった。
今後の進展次第では、対象人数や金額が膨らむ可能性もある。

セブンでは、本部とフランチャイズ契約を結ぶ加盟店がアルバイトなどを雇い、人件費を負担する。
給与の計算や支払いは、本部が代行している。
この給与計算の過程において、本部が計算式を誤っていた。
一部の加盟店では従業員に対し、休まずに出勤した場合などに支払われる「精勤手当」や、シフトリーダーなどの職務の責任に対しての「職責手当」が支給されている。

勤務時間が1日8時間、週40時間の法定残業時間を超えて残業手当が支給される際、この精勤手当や職責手当に対しても残業手当を支払わなければならないが、この部分が一部支払われていなかった。

1974年に東京都江東区に第1号店を出店したセブンだが、1970年代から1980年代に始めた精勤手当や職責手当に対する残業手当は、長らく支払っていなかった。
2001年6月に労働基準監督署から支払うように是正勧告を受け、セブンは給与の計算式を変更。
だが、精勤手当や職責手当に対する残業手当の計算式は本来、割増率を1.25倍としなければならないが、0.25倍として誤って適用していた。
この原因について、会見に出席したセブンの石丸和美フランチャイズ会計本部長は「法令に関する理解が不足していた。それだけでなく、社内でミスに気づけるチェック体制が整備されていなかった」とうなだれる。

2001年に計算式を変えた際、式に基づいて計算が正しく行われるかという確認はしていた。
しかし、人事や労務管理のプロである社会保険労務士によって計算式そのものが正しいか確認された記録はなく、今までミスが放置されていた。

当時、セブン-イレブン・ジャパンの会長だった鈴木敏文・現セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問も、この件を知らなかったという。
都内のある加盟店オーナーは、「加盟店では細かく調べたりせず、本部が計算した金額をそのまま支払う。
しかも、アルバイトに残業代を支払うのは、よほど人手が足りず苦しい加盟店に限られる。
そういう店舗のオーナーは細かいところに気づかないし、気づこうともしない。
多くのアルバイトは、給与をもらったら給与明細を捨てるのが現実だ」と話す。

給与明細には手当ごとの残業代が記載されず、総額としてまとめられていることも、問題が発覚しにくい要因となった。
事実を公表してこなかったセブン セブンの姿勢として深刻なのは、今回発覚した計算間違いそのものよりも、こういった事実を公表してこなかったことだ
2001年に労働基準監督署から是正勧告を受けた当時は、事実を公表せず、しかも2001年以前に未払いだった一部残業手当も支払われないまま今日に至った。
さらに2019年9月に、ある加盟店に対し労基署が残業代の一部未払いについて是正勧告を行ったと、セブン本部に連絡が入ったものの、「(対象が)非常に多くの店舗、人数となるので、どのような形で支払うのがいいのかといった詰めを今までやっていた」(永松社長)ため、発表が12月まで遅れたという。

複数の加盟店オーナーは、こういった本部の一連の対応を問題視する。
問題は、2001年に是正勧告を受けてからも公表しようとしなかった本部の根深い隠蔽体質にある
セブンが今後どこに向かっていくのか心配だ」と、西日本の加盟店オーナーは憂慮する。

2001年当時に公表しなかった理由について、永松社長は「(2019年9月に労基署から是正勧告を受けて以降)議事録などの確認や社員への聞き取り調査を実施した。
だが、この件に関する記録が残っておらず、当時と今の(本件に関わる)担当者が違うこともあり、詳細がわからなかった。この時点でなぜ公表しなかったのか、現時点ではわからない」と話す。

永松社長のこの発言に対して、前出の都内加盟店オーナーは「『議事録など過去の記録はない』『担当者は退社して不在』、こういった答弁で逃げ切ろうとしている。
みっともない記者会見だった」と、憤りをあらわにする。

再発防止策も打ち出すが…
今回発覚した未払い残業代については、本来加盟店が支払う必要のある人件費だが、セブン本部に落ち度があったため、すべて本部が負担する。
社内外のチェック体制の強化や社内研修等の強化など、再発防止策も打ち出す。
また、永松社長は自身の月額報酬3カ月分について10%を自主返上する。

だが、加盟店の本部への信頼を取り戻せるかどうかは疑問だ。
「創業から45年が経ち大きく環境が変わる中で、われわれ自身が変わってこられなかったのが1番の問題。
役員、社員全員でもう一度、本部としてのあり方や加盟店オーナーにどういうサービスを提供していくのかを考える。
今までのやり方を払拭していく」。

永松社長はこのように強調するが、信頼回復への道のりは険しい。
問題続出のセブン。
経営トップの強いリーダーシップによる、透明性のある経営体制への変革が求められる。
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月15日

膝関節・頸椎・腰痛の手術で痛み除去は2割未満

膝関節・頸椎・腰痛の手術で痛み除去は2割未満
2019年12月15日 PRESIDENT Online

■頼れる整形外科はどうやって探すか
「整形外科に通って電気治療を続けているけれど、なかなか治らない」――そんな不満を耳にすることがあります。
私からすれば、それはある意味、当たり前。
他の医科と違って、整形外科は通えば必ずしも治るものではないのです

たとえば消化器だったら痛みの原因を特定して、それを除去すれば大体は治ります。
しかし整形外科は、画像診断で飛び出した椎間板(ヘルニア)が痛みの原因ではないかと特定して、手術で切除しても、「まだ痛い」「しびれが残る」と患者が感じることはしょっちゅう
再発することも少なくない。

股関節の手術だけは比較的成功しますが、膝関節、頸椎、腰痛の手術になるとあまりうまくいきません。
総合的に見て、整形外科の手術で痛みがなくなるのは2割にも満たないのではないでしょうか

なぜそうなるかというと、整形外科が扱う症状は膝関節炎など、加齢による痛みが多いからです
そうした痛みを全部なくすことは難しい。
医師もそのことはわかっていますが、「年をとって痛いのは当然」と言っていたら、商売として成り立たない。
診察したりリハビリをしたりして、患者をつなぎとめておくのです。

では、いい整形外科をどう見つけるのか。
他の医師の選び方が整形外科にはそのまま通用しないのが、難しいところです。
私には「外科医は肩書よりも手術実績を参考にすべき」「空いている病院には行かないほうがいい」という持論があります。

外科医は経験豊かで手先が器用な医師が名医であって、手術数の多さと腕のよさは関連しやすい。
しかし、整形外科医は数多く手術をこなしていても、その成功率はなかなか見えてこない。
病院が繁盛しているからといって、腕がいいとはかぎらないのです。

アドバイスとしては、「慎重な整形外科医を選んだほうがいい」ということ
整形外科の手術はリスクが高い。
特に年をとったら、全身麻酔で体にかかる負担も大きい。
車椅子になるリスクだってあります。
靴をはくときに痛みを感じる程度なら、加齢の痛みと折り合いをつけて、だましだましやっていくのもひとつの手段です。

■医師に「私だったらやりません」と言われて回避
私自身、ヘルニアや脊柱管狭窄症に悩まされました。
後者は30人ぐらいに相談して、手術寸前までいったけれど、ある医師に「私だったらやりません」と言われて回避しました。今も痛みますが、後悔していません。
すぐに手術をしようとしない医師は、ひとつの目安になるでしょう

もしあなたが腰痛や関節痛に悩んでいるなら、必ずしも整形外科を選ぶ必要はないと思います。
整形外科は医療行為だから信用できるというのは勝手な考え。
指圧や整骨で治ることもあるし、民間療法も試す価値は大いにあります。
視野を広げて、選択肢の範囲を広げたほうが賢明です。
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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト
東京慈恵会医科大学卒業。
開業医、病院経営、早稲田大学講師、日本女子体育大学助教授などを経て、医療コンサルタントに。
慈恵医大相撲部総監督。
著書は『不要なクスリ 無用な手術』など、65冊以上。
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posted by 小だぬき at 14:11| 神奈川 | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする