2023年12月12日

歩く速さは「生命の兆候」、健康に長生きできるかのサイン、いつまでも保つ秘訣とは

歩く速さは「生命の兆候」、健康に長生きできるかのサイン、いつまでも保つ秘訣とは
12/11(月) ナショナル ジオグラフィック日本版

改善にはテクニックも必要、実は歩行は驚くほど複雑な行動
 歩くことは単純な行動のように思えるかもしれないが、実はそうではない。
米カリフォルニア・パシフィック医療センター研究所の科学部長である疫学者のペギー・コーソン氏はそう説明する。

歩行は驚くほど複雑な行動であり、高齢者の生活の質をどうすれば高められるか探し求める研究者たちを困惑させ続けている。
「理由はまだわかりませんが、歩く速さは死亡リスクと関連しているのです」と氏は言う。
歩行速度を維持できる人は長生きする可能性が高いのだ。
 それだけではない。こういう人は、より健康な状態で長生きする可能性が高いという。

米国立老化研究所(NIA)によれば、移動能力の低下は高齢者が自立した生活を送れなくなる主な理由の1つだ。
また、認知機能の低下とも密接な関係があるという研究もある。
 この10年ほどで、歩く速さは体温、血圧、脈拍、呼吸数、酸素飽和度などと並ぶ「第6のバイタルサイン(生命兆候)」として注目されるようになった。
歩行速度から、その人がどのような健康問題を抱えることになるかを、幅広く予測できることが明らかになったからだ。
「歩行には身体のあらゆるシステムが関わっています」と、米ピッツバーグ大学の理学療法学教授であるジェシー・バンスウェアリンゲン氏は言う。
通常の診察で何の異変も見つからなくても、歩き方に変化が見られるなら、そう遠くないうちに何らかの診断が下されることになるかもしれない。

 NIAによると、私たちが活動的でいるためには、それぞれ持久力、筋力、バランス、柔軟性に効く4種類の運動が必要だという。
けれども、それは始まりにすぎない。
「運動は大切ですが、すべての問題を解決する万能薬ではありません」とコーソン氏は言う。
 さらに、そこへ脳がどのように関わっているかについてもわかっていないことが多いと、米ハーバード大学医学大学院と米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの助教で、ヘブライ・シニアライフ・マーカス老化研究所のオンイー・ロー氏は指摘する。
「筋肉にはまったく問題がないのに、動いてくださいと言っても動けない患者さんを大勢見てきました」と氏は言う。

 では、幼児期からどんどん遠ざかってゆく私たちは、移動能力を保つために何をすればよいのだろうか?
 いくつかのアイデアを紹介しよう。

動くのをやめない
 最もやってはいけないことは動くのをやめることだ、という点で専門家の意見は一致している。
「影響はすぐに感じられます」と、米スポーツジム、イオス・フィットネスの教育担当ディレクターであるピート・マッコール氏は言う。
何時間も座りっぱなしでいれば体じゅうが痛くなるし、手をよく使う日は関節炎があまり気にならない。
私たちの体は動くことを求めているのだ。

「とはいえ、毎回クタクタになるまでトレーニングをする必要はありません」と氏は言う。
氏は米国運動協議会のウェブサイトで、背骨、腰、足首を柔軟にするための簡単な日課を紹介している。
「歯磨きのようなものです。1日か2日サボると、自分でも違いがわかります」
 氏は、トレーニングの前後や、軽い運動をして疲労回復を促すアクティブリカバリーの日に、腰を回す動きや、片膝をついて反対側の腕を伸ばして上半身をひねる動きなどを取り入れている。

 これでも十分難しいという人に対しては、マッコール氏は自分の80歳の父親にするのと同じ助言をする。
歩いて、ヨガをすることだ。
「ネコとウシのポーズ」や「戦士のポーズ」は、背骨を意識することができる。
 けがをしている人も、水泳やサイクリングなど、自分に合った活動を見つけてみよう。
「自分にできる運動なら何でもいいのです」とロー氏は言う。

4歳の子をもつ働く母親であるロー氏の場合、それは子どもを追いかけ回すことだという。
 あなたはピックルボール(テニス、バドミントン、卓球をかけ合わせたようなスポーツ)に興味があるだろうか?
 社交ダンスは? 
ピッツバーグ大学の理学療法学教授であるジェニファー・ブラック氏は、「新しいスキルを身につけることを怖がらないでください」と話す。
「自分が楽しめるプログラムを見つけることで、それを続けることができます」

上手に歩くための訓練
 しかし、衰えはじめた歩行を本当に改善しようと思ったら、アスリートのように考える必要がある。
テニスをしたいがバックハンドが苦手だとしよう。その場合、漫然とテニスをしていてもバックハンドの問題は解決しないので、テクニックを磨く必要があるとバンスウェアリンゲン氏は言う。歩行も同じだ。

 トレッドミル(ウォーキングマシン)は歩行の仕方を教えてくれる。
「トレッドミルに乗ると足が後ろに引かれるので、前に踏み出すことができます」と氏は言う。
速度を変えて歩いてみて、快適な速度を見つけるのも簡単だ。
氏によれば、ほとんどの人にとって快適な速度は秒速1.3m(時速約4.7km)ほどだという。
適応力を鍛えるために、氏はときどき1分間だけ速度を10%上げることを推奨する。
 バンスウェアリンゲン氏は、どんな表面を歩くときにも「足から歩き始める」ようにと言う。

「足を持ち上げて前に置く」と考えるのではなく、足を使って地面を後ろに押しのけるのだ。
転びたくないなら、下を向いてはいけない。
「脳は、自分が見ている方に行きたがっていると思い込んでしまうからです」
 ピッツバーグ大学が高齢者向けに開発した12週間の歩行訓練教室「オン・ザ・ムーブ」は、このアプローチを基本としている。
この教室では、典型的なフィットネス教室が目標に掲げる筋力や持久力ではなく、筋肉を動かすタイミングとその協調に重点を置いている。
 例えば、歩きだすときには体重を後ろや横に微妙に移動させなければならない。

「私たちのエクササイズの多くは、一歩下がるところから始まります。
そうして後ろ足に体重を乗せたら、それを押して前に踏み出すことができるのです」とブラック氏。
こうした方法を使って上手に歩けるようになれば、体重が減ったり血圧が下がったりと、さらなるメリットが期待できる。

脳を活性化させる
 結局のところ、体のすべてを司っている部位は脳なのだ。
移動能力を保とうとするなら、そのことを忘れないでほしい。
コーソン氏は太極拳の効果に注目している。
太極拳はバランスを改善し、転倒のリスクを減らすことが示されている。
科学者たちは、それが太極拳が肉体に及ぼす効果なのか、それとも一連の動作を学ぶという認知的な負荷による効果なのかを調べている。

 2023年10月31日付で医学誌「Annals of Internal Medicine」に掲載された研究は、「認知機能強化型」太極拳の効果を示している。
太極拳と同時に頭の体操(単語を後ろから前に綴るなど)をした参加者は、通常の太極拳やストレッチをした参加者よりも認知機能テストの結果が良かったのだ。
 認知症の予防法を見つけることができればすばらしいとロー氏は言う。

氏によると、一般の高齢者の30%が転倒の経験があるのに対し、認知症の人では半数が転倒を経験しているという。
太極拳のほかにも、体に傷をつけない方法での脳刺激など、移動能力の改善に役立つ可能性がある有望な介入方法はいくつもある。
 多くの高齢者は、推奨されている運動の内容を知っているが、実践しないとロー氏は言う。
そこで氏は、行動カウンセリングを、意欲や実行機能(目標を達成するために思考や行動を制御する能力)に関係する脳領域への電気刺激と組み合わせるとどうなるかを研究している。
 電気刺激を受けた参加者は、受けなかった人たちに比べて平均歩数が増え、数カ月後も維持しているという。
現在進行中の別の研究では、脳刺激を利用して高齢者の不安定な歩行の改善を試みる予定だ。

 ロー氏は音楽療法士と協力して音楽刺激の実験も行っている。
「認知症やパーキンソン病の高齢者は、自分から動きだすことができなくても、音楽をかけると、それに従うことができるのです」と氏は言う。

今すぐ計画を立てよう
 では、移動能力を保つために何かをするには、いつ始めればいいのだろうか? 
歩行に問題が出てくる時期は、明確には決まっていない。
「あなたが何歳であっても、最大限に活動的であるべきです」とコーソン氏は言う。
氏によると、20歳から30歳にかけて健康だった人々は、将来、加齢に伴う変化に対応しやすいという。

「今始めるのがベストです。次に良いのは明日始めることです」
 自分の移動能力について考えることが重要になるのは、住む場所を決めるときだ。
引っ越すなら平屋か、高層のビルか? 建物にエレベーターは付いているだろうか? 「家を買うときに、将来、スロープが欲しくなるかもしれないなどとは想像しにくいものです」とコーソン氏は言う。

けれども、移動しやすい家であるかどうかで、高齢になってからの暮らしやすさに大きな違いが出てくる。
 家の外の環境も同じくらい重要だ。
「歩道がよく整備されていて、治安が良い地域に住んでいれば、散歩に出かけたくなるものです」とブラック氏は言う。
歩いて用事を済ませられる地域も、高齢者の移動能力を保つのに良い。

 バンスウェアリンゲン氏は、自分の気持ちや考えに注意を払うことを勧める。
例えば、椅子から立ち上がって部屋を横切る必要があるとする。理想は、何も考えずにそれができることだ。手順を考えていたとしたら、それは危険信号だ。「そのような考えが頭をよぎったら、そろそろ手を打つべき時ですね」

文=VICKY HALLETT/訳=三枝小夜子
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2023年12月11日

オスプレイ巡る珍問答=佐藤千矢子

オスプレイ巡る珍問答=佐藤千矢子
2023/12/8 毎日新聞東京夕刊

 人命や国防にかかわる問題を、言質を取られない「霞が関文学」や、意味のわからない「禅問答」のような表現で、ごまかされては困る。
 米空軍横田基地に所属する輸送機CV22オスプレイが、11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落した。
エンジンの周りから火が出ていたとの目撃証言があり、機体の異常が想定される。
 当然、政府は即刻、飛行停止を求め、しばらくは日本上空を飛ばなくなるだろうと思ったら、違った。
他の型式のオスプレイは飛び続け、日本側は「停止要請をした」、米側は「公式な要請は受けていない」と、言い分が食い違う事態になった。

 発端は、政府の及び腰にあると思う。
 木原稔防衛相は事故の翌日、在日米軍司令官に会い「安全が確認されてから飛行を行うよう要請した」という。
「飛行停止」とは言っていない。
 記者会見で「飛行停止を求めたと理解していいか」と聞かれると、次のように答えた。  
「飛行停止という定義が曖昧なので、使っていない。
あくまでも飛行に係る安全が確認されてから飛行を行うよう要請した」

 「飛行停止」に定義も何もないだろう。
明確に飛行停止を求めてはいないのに、国内向けにはそう受け取れるような説明の使い分けをしているのではないか。
米側からすれば、「安全確認」という当たり前のことを言われただけで、正式な要請はないということになるのだろう。
米側を怒らせないように気を使い、国内向けには曖昧な表現でごまかす姿勢が透けて見える。

 米軍は事故から約1週間後にようやく、世界に配備している全てのオスプレイの飛行を停止すると発表した。
日米とも無責任過ぎないか。

 2016年12月13日夜に米軍オスプレイが沖縄県名護市沿岸に落ちて大破した際、政府の初動は比較的、速かった。
翌日未明には米側に「遺憾の意」を伝えて飛行停止を要請し、その日に停止が決まった。
ただし飛行再開も事故から6日後と速かった。
容認した日本政府は大きな批判を浴びた。

 今回の政府の対応は、残念ながら7年前の事故の時にさえ劣ると私は思う。
             (論説委員)
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「裏金も引き継いだのか」昭恵さん、安倍元首相の政治資金3.4億円「税金払わず」ゲット…荒れるSNS「怒りしかない」

「裏金も引き継いだのか」昭恵さん、安倍元首相の政治資金3.4億円「税金払わず」ゲット…荒れるSNS「怒りしかない」
12/9(土) FLASH

 故・安倍晋三元首相の妻・昭恵さんが、巨額の政治資金を非課税で相続したことが問題になっている。
 安倍元首相は政治団体「晋和会」と「自由民主党山口県第四選挙区支部」の代表だったが、死去した2022年7月8日に昭恵さんが両団体の代表を引き継いだ。
その後、晋和会は第四支部や元首相のほかの政治団体から寄付を受け、総額は2億1471万円に上るという。

 現行法では政治資金は非課税扱いで、政治団体の代表を親族が引き継いでも税金はかからない。
つまり合法なのだが、それでも、昭恵さんは「私人」と閣議決定されたこともあり、政治資金を “私物化” しているのではないかとの批判が巻き起こっている。

「12月8日の予算委員会で、政治資金パーティー券問題に続き、野党は昭恵さんの非課税相続について追及しました。
立憲の蓮舫氏は、寄付のほか晋和会のパーティー券収入や繰越金などを加えると約3億4000万円になると指摘し、それがすべて非課税であることを参考人の国税庁次長に確認しています。
 蓮舫氏は岸田首相に対し、『この制度変えませんか?』と問いかけましたが、首相は『政治団体の関係者が判断すること』などとズレた答えしか返しませんでした。
 さらに蓮舫氏は、政治家の世襲問題に踏み込み、二世議員の宮下一郎農林水産相や自見はなこ内閣府特命担当相にも “遺産” について問いただしました」

「X」(旧Twitter)では、昭恵さんに対する厳しい声が殺到している。
《政治家がこれで金を受け継ぐのもおかしいのに昭恵は私人だろ》
《芋づる式だな。自民党アウト》
《怒りしかない》
《安倍昭恵さんの政治資金の継承が無問題なら、もし自見大臣のお父さんが亡くなったら、政治団体の政治資金をお母さんが継承。
次に、お母さんが自見大臣の政治団体に寄付した後に解散すれば、政治資金はまんま継承ということでしょうか。
余ったり解散した場合は返還というのが政党交付金だそうですが…》

 自民党・安倍派では、パーティー券の販売ノルマを超えて集めたカネを議員側にキックバックし、しかも政治資金収支報告書に記載していなかった “裏金問題” が騒動になっている。
そのため、 《安倍昭恵は裏金も引き継いだのだろうか・・・》
《この手口に対する課税、も追加で。安部晋三のキックバックはどのぐらいの規模だったのだろう?そして、この迂回の手口でどのぐらい遺産が税金逃れて安倍昭恵に流れたのだろう?》  などのコメントも寄せられている。

 立憲民主党は10月20日、政治資金規正法の一部を改正する法律案(政治資金世襲制限法案)を衆議院に提出。議員が引退や死去した際、政治団体の代表を配偶者または3親等以内の親族が引き継ぐこと、政治団体が親族の政治団体に寄付することを禁じる内容だ。
「世襲」を抑制する狙いがあるが、はたして法制化は実現するだろうか。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする