2012年04月15日

〈時の回廊〉鎌田慧「自動車絶望工場」 夢も希望も奪い去る労働

〈時の回廊〉鎌田慧「自動車絶望工場」 夢も希望も奪い去る労働

[朝日新聞掲載]2012年04月13日

1972年秋から6カ月間、愛知県豊田市にあるトヨタ自動車工場で期間工として働いた。
当時、34歳。その体験を基に書いたのが『自動車絶望工場』だ。
そこには合理化を進める企業と疎外される労働者の姿があった。
若者たちの「夢」は日々、「絶望」へと変わっていった。40年たった現在も、その構造は変わっていない。
     ◇
 青森県六ケ所村について書いた記事を読んだ見ず知らずの農民から寄せられた手紙が、トヨタの工場で期間工として、働くきっかけになりました。

手紙の主は青森からホンダの工場に出稼ぎに来ていました。その彼と会った時に「どこの自動車工場が一番、きついのか」と尋ねたら「トヨタだ」と答えたんです。

労働の合理化に興味を持っていて、どういうふうにきついのかを知りたかった。それで一番きついトヨタの工場で働いてみようと思ったのです。

このルポの前に、公害の取材で九州に6カ月、滞在していたため、お金がなかった。期間工として働けば、お金が入るというのも理由の一つでした。

 トヨタにいた時は何度も辞めようと思っていました。寮に帰ると階段も上れないほど疲れている。「今日、辞めると言おう。今日こそは……」と思いながら日々を過ごしていました。期間満了の6カ月を残して辞めたら、本は書けないぞと思っていたから、最後まで続けられたんだと思います。

 タイトルに「絶望」という言葉を入れたのは、大きな工場で働くという夢が、実際に働くことによって「絶望」に変わっていくと感じたからです。

 寮で同じ部屋で暮らしていた工藤クンの気持ちをどこかに反映したというのもあります。
同郷だった21歳の工藤クンとは偶然、職安で出会いました。彼の「身上調査表」の志望動機の欄には「貴社の将来性」と書かれていました。

仏壇づくりから転業したかった彼は「本工に採用されたい」という希望を持っていたのです。しかし働き出してから4カ月後、工藤クンは工場で倒れました。結局、首になって田舎に帰されました。本工どころか、「期間満了」さえできなかったのです。

 数年後、工藤クンを見舞いに病院に行きました。リハビリを受けていた彼は、わたしのことを思い出せませんでした。それから何年かして、彼の実家を訪ねてみると、家は無くなっていました。もう彼の行方はわかりません。

 今年1月、労働ペンクラブのメンバーと、日産の神奈川県・追浜工場の見学に行きました。工場は自動化が進んでいましたが、やはり無機質で硬い時間が流れていました。時間に人間が押し込まれて、その中で動いている。あの当時と何も変わっていません。

 製造業は、ますます不安定労働に依存するようになっています。
以前は期間工しかなかった。いまは、期間工の下層として、派遣労働者が大量に採用されています。期間工の寮は無料で風呂もついていましたが、派遣はそれすらない。状況は悪化し、労働構造はさらに複雑化しています。

 「ルポライター」は、ほぼ絶滅危惧種になりつつあります。でも、僕はこれからも「ルポライター」であり続けたい。

「いつか作家になりたい」という憧れを持っていた、かつてのルポライターたちは、「作家」という言葉がついた「ノンフィクション作家」に肩書を変えていった。

僕は逃げ遅れたんです。いまさら逃げても仕方ないでしょう。「ルポライター」という肩書のなんとなく、うさんくさい感じがいいと思っています。僕は、これまでずっと片隅のことを書いてきたわけで、僕自身も同じように地味な所に居続けたいと思うのです。(聞き手・山田優)
    ◇
 かまた・さとし 1938年、青森県生まれ。新聞・雑誌記者を経てフリー。90年に『反骨―鈴木東民の生涯』で新田次郎文学賞、91年に『六ケ所村の記録』で毎日出版文化賞。

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たくさんの薬を出すとペナルティー

兵庫県尼崎市の「ドクター和」こと長尾和宏医師が町医者目線で熱く!語るブログです。

たくさんの薬を出すとペナルティー

朝日新聞 健康欄  アピタル


お医者さんは、お薬が好きです。
何かというと、お薬を出します。
まるでお薬を出すのが仕事のようです。


診療科によって、お薬の種類が違います。

一番多いのは、やはり内科でしょうか。
10種類以上の方も、よくみかけます。

これまで診た最高処方は30種類投薬。
全部止めさせたら、元気になりました。
笑い話のようですが、本当の話です。


あと、精神科も多いですね。
10種類以上の方をよく見かけます。

内科は、できるだけ遠慮して出します。

処方箋1枚の診療報酬は680円。

しかし7種類以上のお薬を処方すると、
400円に減額されます。


病院から当院にアルバイトに来た医師は驚きます。
「沢山処方して、沢山仕事をしたのにペナルティー?」
そう、ペナルティーがあるのです。

と説明しても信じてもらえません?

患者さんには、逆に「お得」になりますが。
保険診療の規則です。


お薬は、少ないにこしたことはない。
一剤がベスト。
いや、ひとつも無いのが、ベストですね。

posted by 小だぬき at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

朝日新聞「消費税がふさわしい」に東京新聞論説副主幹が反論

朝日新聞「消費税がふさわしい」に東京新聞論説副主幹が反論
※週刊ポスト2012年4月20日号

 野田佳彦政権が消費税引き上げ法案を国会に提出した。

野田政権は増税が社会保障制度との「一体改革」と宣伝してきたが、実態は違う、と東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏は指摘する。以下は、長谷川氏の解説だ。

* * *
 改革の目玉だった最低保障年金(月額7万円)の創設をめざす法案の提出は来年の(!)通常国会に後回しである。

共済年金と厚生年金の一元化をめざす年金一元化法案は4月の国会提出をめざし、公務員に有利な上乗せ分である「職域加算」の廃止は先送りされた。


 まさに「先に増税ありき」で社会保障制度の抜本改革は後回しになった

一体になっていない。それはもちろん問題なのだが、もっと根本的な論点を指摘したい。

それはそもそも社会保障財源に消費税を引き上げるのが適切なのか、という問題である。

たとえば朝日新聞は次のように書いた。


「社会全体で支え合う社会保障の財源には、一線を退いた高齢者から、働く現役組まで幅広い層が負担し、税収も安定している消費税がふさわしい」(3月31日付社説)


 こうした考えは朝日に限らず増税賛成派のマスコミに共有されている。「みんなに納めてもらうのだから社会保障の財源として適当」というのだ。


 社会保障とはなにか。「政府による所得再配分」である。

だれでも病気や怪我だけでなく、さまざまな事情で不運にも苦しい生活を余儀なくされる場合がある。

そういうときも安心して暮らしていけるように政府が豊かな人々から苦しい人々に所得を再配分する。

それが社会の安全網(セーフティネット)、すなわち社会保障制度だ。


 制度の本質がそうであれば、財源も豊かな人々による納税で賄われるのが自然である。つまり高所得者により重い税を課す累進性をもった所得税や儲けた企業に対する法人税だ。


 あるいは、財源不足なら保険料を高くしてもいい。厚生年金であれば保険料は企業と被雇用者の折半なので、きちんと管理されているが、保険料を引き上げると、所得税と法人税を引き上げたのと同じ結果になる。


 納める側からみれば、保険料も強制徴収されるので税と変わらず、違うのは個人記録が残る点だけだ。

日本では記録管理がいい加減だったから大問題になったが、保険料のほうが負担と給付の関係が一目瞭然になって納得感がある。

posted by 小だぬき at 08:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする