2012年04月26日

21世紀の日本でかくも異常な魔女狩り裁判

きょうで小沢裁判は終わったのか
2012年4月26日 日刊ゲンダイ掲載


小沢が無罪判決でどうなるこれから


<小沢抹殺は何のため 誰のためだったか>

 長く不毛な裁判にようやく一区切りがついた。
26日、検察審査会によって強制起訴された小沢一郎・元民主党代表に対し、東京地裁(大善文男裁判長)が無罪判決を出したのだ。

小沢の政治資金団体・陸山会の土地取引を巡り、政治資金収支報告書の虚偽記載が問題視された裁判は、政治的謀略以外の何モノでもなかった。

政権交代の立役者・小沢の元秘書らをいきなり逮捕し、小沢自身も裁判にかけることで、その政治活動を封印することが狙いだった。

ありえないような裁判の過程で明らかになったのは、魔女狩りのごとく、最初から小沢を狙い撃ちにしていた検察の横暴と、そのためには捜査報告書すらも捏造するというデタラメ捜査手法だった。

これで小沢が有罪になったら、まさに日本の司法は戦前の暗黒時代に逆戻りだったのだが、寸前で踏みとどまったとはいえる


しかし、それで「めでたし」と言えるのか。小沢裁判は多くの課題と疑問を投げかけた。小沢の今後も気にかかる。これにて一件落着といえるのかどうか。さまざまな角度から探ってみる。

<この暗黒裁判は歴史的にどう見られるか>

 オランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏は小沢裁判について、こう言っていた。
「小沢一郎氏の裁判で考えなくてはいけないのは、捜査、逮捕、起訴、裁判が先進国として、きちんとバランスのとれたものであったかということです」

小沢氏を標的にして進行していることは人物破壊です。
長年かかって築き上げてきた既得権益を破壊しようとする人物(=小沢一郎)に銃口を向け、そして引き金を引く。
体制側にとって、新種の人間というのはいつの時代も脅威なのですが、こういうことが許されていいのか」

 これが先進国の第一線ジャーナリストの見立てなのだ。この裁判がいかに異常で異様だったか分かる。

 言うまでもなく、小沢は政権交代の立役者だ。
政治主導、官僚支配打破の先頭に立つべき政治家だった。

だから、検察は狙い撃ちにした。2009年3月に西松事件で小沢の元秘書を逮捕すると、翌年は「陸山会」の土地取引に目を付け、現衆院議員の石川知裕など元秘書ら3人を逮捕。がんがん締め上げ、小沢への裏金を暴こうとした。

結局、裏金の証拠はなく、小沢本人の起訴は断念したが、検察審査会が強制起訴した。
検察審査会が強制起訴の根拠とした捜査報告書は捏造だった。恐怖の謀略と言うしかない。

 小沢に無罪判決が出たが、21世紀の日本でかくも異常な魔女狩り裁判が行われたことは歴史にハッキリ記さねばならない。

あってはならない「政治的謀略」と「人権破壊」が白昼堂々と行われ、しかも、大メディアはそれを批判するどころか、暴走検察のリーク情報を垂れ流し、そのお先棒を担いだのである。

 ウォルフレン氏は小沢の元秘書で衆院議員・石川知裕ら3人に有罪が下った判決にも驚いていた。

判決は推認による有罪でした。私に言わせれば、あれは司法による“大量虐殺”に等しい。秘書3人は、別に政治献金を着服したわけではありません。単なる記載ミスです。
推認によって有罪判決を受けるといったことが先進国であっていいのでしょうか

 これがこの国の司法の姿だ。だから、小沢無罪でも喜べない。
「これにて一件落着」にしてはいけない。司法の責任を徹底追及する必要があるのである。

posted by 小だぬき at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サンデー時評:「とっさの判断」がいかに大切か

サンデー時評:「とっさの判断」がいかに大切か
2012年04月25日  毎日新聞

一九八四年一月八日生まれの二十八歳とされているが、北朝鮮はなぜか生年月日を明らかにしないそうだ。
外見からみても、そんな年ごろだろう。北朝鮮労働党第一書記、新最高指導者のポストに就いた金正恩だ。


 このところ、毎日のようにメディアに登場する金正恩を見せられている。
初の肉声演説も聞いた。いつも引っかかるのはヘアスタイルだ。なぜあんな刈り上げ方をしているのか。〈建国の父〉である祖父の金日成国家主席にあやかっているという説も聞いたが、金日成の髪形はそれほど短くはなかったはずだが。


 とにかく、金王朝の三代目である。日本の政界にも三代目は何人もいる。四代目もいる。総じてぱっとしない。

代を重ねるにつれ次第に器量は劣っていくとみてよさそうだが、そうでない逆のケースもたまにあるから、ややこしい。
いまの金正恩のイメージは危なげ、頼もしいという感じではない。


 金正恩の命令によるのか、父親の金正日時代から決まっていたことなのか定かでないが、今回の北朝鮮によるミサイル発射と失敗騒動には気になることがたくさんあった。

その最たるものは、藤村修官房長官が、

 「ダブルチェックが必要だった」と公表の遅れについて釈明したことである。

ダブルとは何か。今回のミサイル発射に際して策定した〈新対処要領〉で、米軍の早期警戒情報(SEW)と自衛隊レーダー(イージス艦と地上)でダブルチェックした後、情報を公表することにしていたことを指す。それは、それでよい。


 しかし、今回は当てはまらなかったのだ。SEWがミサイル発射の熱源をとらえ、防衛省が情報を受信したのが発射約二分後の十三日午前七時四十分、このSEW情報がダブルのうちの一つ目である。


 ところが、田中直紀防衛相が記者会見で、

 「何らかの飛翔体が発射された」と発表したのが午前八時二十三分、つまり発射から四十三分後という驚くべき失態を演じ、批判にさらされた。

この間、「SEW情報が正確か確認中」(八時ごろ)とか、「わが国のレーダーでは確認していない」(八時三分)などの情報が防衛省から首相官邸に入っている。

ダブルの二つ目、自衛隊のレーダーによる懸命の確認作業が行われていたのだが、結果がでない。

 しかし、一方で、同時刻ごろ防衛省の統合幕僚長は田中防衛相に、「米軍が飛翔体を発見したがロスト(失探)、洋上に落下したもよう」(七時五十分)と報告している。自衛隊の探知可能高度まで上昇する前にミサイルが落下したことは明らかだった。

だから、こんどの場合は自衛隊レーダーがチェック能力を欠いていたのに、藤村長官も田中防衛相もダブルチェックにこだわり、モタモタするうちに時間が過ぎたのだ。
その理由については、さまざまな推測や噂が流れている。


◇間違いを恐れるあまり大間違い…

 だが、この種のこだわりは特殊な事例ではない。あちこちで日常的に起きている。

かつて、私の身辺でも、次のような体験をしたことがある。いい例ではないかもしれないが、情報処理という点では共通していた。


 ある深夜、重要な政治的決定がなされた。いまでいえば、民主・自民大連立ほどではないが、それに近い大ニュースだった。

M紙のA記者は、かねて昵懇で決定の当事者である実力者Bから深夜の情報を得た。Aは直ちに政治部デスクに電話連絡、


 「すぐに記事にしてくれ」と依頼した。デスクは、「ありがとう」と応じたが、翌朝の新聞を見ると一行も出ていない。Aは愕然とし、デスクに文句を言うと、「担当記者に裏付けをとるよう指示したが、とれなかったので」という釈明だ。

Bを補佐していた政治家もS紙に情報提供したらしく、S紙の一面トップを飾る特ダネになった。


 Aは政治部に長く在籍していた。その時は部員ではないが、M紙の記者であり、Bには古くから食い込んでいる。新米の担当記者に裏付けをとる能力があるはずがない。ところが、デスクは内部的なダブルチェックにこだわり、失敗を演じたのだ。

私がデスクだったら、ベテランのAの情報を信頼し、直ちに自分で記事を書き上げ、一面のトップを作ったのに、とその時の一部始終を知って、思った。
ミサイル事件になぞると、A記者は米軍のSEWであり、デスクが藤村長官、田中防衛相の立場になる。


 新聞の場合、ダブルの努力はいいとして、シングルだけで十分だった。Aの情報以上のものをどこからも得られるはずがなかったからだ。ミサイルについても、ダブルチェックの努力をするのは当然だが、最初の探知能力の優れているSEW情報をまず日本の国民に知らせるべきだった。国民は数分後にミサイル発射を知ることができたのだ


 両大臣もデスクも臨機応変の対応ができなかった。日ごろから身内の能力を知り、形式にこだわることなく、直ちに頭を切り替える才覚に欠けていた。これは、時に恐ろしい事態につながりかねない。


 新聞なら、抜いた抜かれたの競争レベルの話ですむが、国民の生命、財産にかかわると、重大な損害に直結していく。
福島原発事故でも同じことが言える。いずれのケースでも、とっさの判断がいかに大切かを教えているのだ。


 とっさの判断をしなければならない立場にいる人は、首相でも大臣でも、役所の局長、課長でも、企業のトップでも、自衛隊・警察・消防などの責任者でも、新聞・テレビの幹部でも、日ごろから心の準備が必要だ。そんなことは言わずもがなである。


 しかし、準備をしているつもりでも間違うことを、北ミサイル事件はみせつけた。間違いを恐れるあまり、結果的に大間違いをすることがある。

あとから、「検証、検証」と騒いでも、取り返しがつかない。


<今週のひと言>

 小沢判決がどうであれ、小沢観は変わらない。

 (サンデー毎日2012年5月6・13日合併号)

posted by 小だぬき at 07:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする