2012年05月02日

東京大空襲訴訟 人道主義で立法を急げ

東京大空襲訴訟 人道主義で立法を急げ
2012年5月2日  東京新聞社説

 東京大空襲の被害救済を求めた裁判は、東京高裁でも原告敗訴に終わった。

多大な苦痛に対し「心情的に理解できる」にとどまっては、戦争の生傷は癒えない。人道主義に立った立法を急ぐべきだ。


 下町一帯に焼夷(しょうい)弾が落とされ、火の海をさまよいながら、無数の人々が逃げ回った。米軍による無差別爆撃で、死者は十万人を超え、被災者は百万人にものぼった。六十七年前にあった東京大空襲である。


 被害に遭った原告らは、日本政府が講和条約で米国に対する損害賠償請求権を放棄したことを踏まえ、責任は国にあるとし、謝罪と損害賠償を求めていた。
だが、一審の東京地裁に続いて、東京高裁も原告敗訴の判決を出した。


 米軍による空襲は名古屋、大阪など全国六十七都市に及んだ。

被害の救済を求める動きも連綿と続いてきた。旧軍人・軍属や遺族らが恩給や補償などの対象になっているのに対し、民間人は置き去りの状態だったからだ。


 一九七三年に民間人の被害救済の法案が提出され、八九年まで議論されたが、とうとう結実しなかった。
当時、日弁連が憲法の「法の下の平等」などに基づき、民間戦災者の援護法制定を求める決議をしたこともある。


 東京大空襲の地裁判決は訴えを退けつつも、「救済は政治的配慮に基づき、立法を通じて解決すべきだ」と述べた。
今回も「不公平と感じることは心情的には理解できる」との表現にとどまり、一審をほぼ踏襲する内容だった。


 確かに八七年に最高裁は「戦争被害は、国民の等しく耐え忍ぶべきもの」と「受忍論」を展開した。だが、原爆被害者に医療特別手当などが支給されたり、中国残留孤児も援護の対象になった。


 二〇一〇年にはシベリア抑留の特別措置法も成立し、戦争被害者の救済問題は“進化”しているのが現状だ。


 同年に名古屋市では、空襲などでの民間戦傷者に見舞金制度を創設した。
浜松市などにも同様の仕組みがある。


 そもそも、英国でもフランスでも、敗戦国のドイツやイタリアでも民間の被害者を補償している。人権と人道上の考え方からだ。

日本の空襲被害者をなぜ放置していいのか。この訴訟はそんな問題点を投げかけたはずだ。


 「空襲被害者援護法」をつくる動きは、超党派の議員らの間でも起きている。“悲劇”がなお続く現状は酷薄ではないか。

posted by 小だぬき at 18:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

甘え?若年ホームレス

香山リカのココロの万華鏡:甘え?若年ホームレス
毎日新聞 2012年05月01日 東京地方版

 路上生活者に雑誌を販売してもらい、仕事を提供して自立を応援する事業「ビッグイシュー」は、いまでは多くの人に知られる存在となった。

そのビッグイシュー基金が、このたび「若者ホームレス白書2」をまとめた。
その冒頭には、2008年のリーマン・ショック以降、40歳未満の若いホームレスが急増している、という衝撃的な事実が記されている。


 「若いのに仕事も家もない人」と聞くと、「やる気がないだけなんでしょう」と思う人もいるだろう。しかし、白書からは単に「やる気がない」だけではすまされない、彼らの複雑な事情が浮かび上がってくる。


 意外に感じるかもしれないが、20代、30代のホームレスの多くは、就業経験どころか正社員の経験も持つ。

白書に取り上げられているある若者は、過去に仕事で受けたトラウマがもとになり、働くことが怖くなり、身動きが取れなくなっている。

「職場いじめ」を受けたという20代の若者の言葉が痛々しい。
「ホームレス状態でいることはもちろんイヤ。でもそれと同
じくらいの恐怖が働くことがある」

 もちろん、「そんなの、甘えだよ」という声があるのもわかる。しかし、甘えているわけではない。
彼らは「困難にぶち当たっても、耐えたりまわりに相談したりすればなんとかなるはずだ」と思えない。自分のことも他人のことも、まったく信頼できないからだ。


 白書を読んでいると、彼らがホームレス状態から脱出するためには、仕事や住まい、準備資金などを与えるだけでは不十分だ、ということがわかってくる。

彼らにもう一度、世間や他人、そして自分のことを信じる気持ちを持ってもらわなければ、何ごとも始まらないのだ。


 では、どうすれば「他人や自分を信頼する気持ち」を回復させられるのか。まず必要なのは、「世の中や人生って悪くないな」と思ってもらうことだ。

ビッグイシュー基金でもホームレスの人たちのサッカーチームを作り、いろいろな大会に積極的に参加しているが、そこで「ホッとできる場所があるっていいな」と感じて立ち直りの一歩を歩み出した若者もいる。

 白書は言う。「若年ホームレスは特殊な現象ではない」。

厳しいこの時代、誰もがいまの職場や地域から「もういらないよ」と言われる危険性と隣り合わせだ。

「ああ、ただの甘えでしょう」と思わずに、仕事も住まいも人とのつながりも失った、若年ホームレスの問題や彼らの胸のうちについて考えてみてほしい。

〔都内版〕
posted by 小だぬき at 06:17| Comment(0) | TrackBack(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする