2012年09月19日

香山リカのココロの万華鏡:大きな話より目前の現実 

香山リカのココロの万華鏡:大きな話より目前の現実 
毎日新聞 2012年09月18日 東京地方版

政治の世界があわただしい。
民主党の代表選、自民党の総裁選、そして次の選挙の「台風の目」といわれる「日本維新の会」では衆院選の候補者の公募を開始。


 連日、いろいろな政治家たちがテレビの報道番組などで、力を込めて自分の思いを語っている。
新党「日本維新の会」の代表に就く橋下徹氏は新党の結成を宣言する際、「これから大いくさが始まる」と言っていたが、多くの政治家や周辺の人たちは戦いに臨む気持ちなのだろう。


しかし、国のリーダーたちがいくら勇ましい気持ちになり、心を奮い立たせても、社会で生活している人たちもそうなれるとは限らない。

診察室にいると、多くの人は政治の世界の競争や決戦とはかかわりのないところで、日々の仕事や家庭、学校などの問題に追われながら暮らしている。
被災地にいる人たちも、傷ついた自分の心と向き合いながら、毎日の生活を送るだけで精いっぱい、という気持ちなのではないだろうか 

こんな時だからこそ、広い視野で日本全体のことを考え、未来を夢見ることが必要なのだ、という意見もあるはずだ。
たしかに、心の視野が狭くなるとどうしても考えが暗い方に傾きがちなので、少し深呼吸をして遠くのこと、先のことも考えた方がよい場合もある


 とはいえ、「この国の未来のために」「必ず日本を再生させる」といった政治家たちのあまりに大きすぎる話は、どこか人ごとのように聞こえ、心に響いてこないこともたしか。
「壮大な話や勇ましい言葉もいいけれど、それよりもまず明日のことを何とかしてよ」とつい言いたくなる。

7年前、小泉純一郎首相の時代の衆院選、いわゆる郵政選挙の時も社会は必ずしもよい状態ではなかったが、だからこそひととき目の前の現実を忘れ、私たちは“小泉劇場”ともいわれた首相のパフォーマンスや政治家たちの対決に心を奪われ、熱狂にも似た気分を味わった。

しかし今、世の中にはあのとき以上に深刻な問題が山積みだ。
それでも私たちはまだ、勇ましいリーダーたちの対決に高揚できるのだろうか。
私は診察室で「今を何とかして」と訴える人たちを見ていると、今の日本や人々には政治に熱狂や興奮するだけの心の余裕もエネルギーもないのではないか、と思っている。

 大きな話より、まず目の前のことを。遠い先より、まず今のことを。
そんなことを言うと、「いくさ」に夢中な男性政治家たちに笑われてしまうだろうか。

posted by 小だぬき at 12:38| Comment(2) | TrackBack(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

親離れと子離れ、どちらがむずかしいのだろう

天声人語
2012.9.19   朝日新聞

親離れと子離れ、どちらがむずかしいのだろう

今年2月の本紙歌壇に一首があった。
〈どれだけの覚悟で言ったことなのか君は知らない「好きにしなさい」〉今村こず枝。
「なかなか怖い歌。一語に籠(こ)めた母親の覚悟」は選者の永田和宏さんの評だ

▼事情は想像するしかないが、へその緒を再び切るような思いの一時(いっとき)が、母親にはあるのかも知れない。
作家の森崎和江さんが「母性とは、抱く強さと同じ強さで放つもの」と書いていたのを思い出す。
抱くことだけに一途(いちず)では駄目らしい

▼とはいえ、昨今は親がかりの期間が延びるばかりのようだ。
ベネッセ教育研究開発センターが大学生の保護者に聞いたら、4年生の親の約4割が就職活動を助けていた。
ネットや雑誌で情報を集めるなど、父親より母親の方が熱心だという

▼調査の結果、就活だけでなく大学受験も含めて「高学歴の母親が自分で情報を集め、子の進路決定に関わっている姿」が浮かび上がるそうだ。
ありがたい親心か、自立を妨げる干渉かは、その母、その子によるだろう

▼何年か前、アメリカから「ヘリコプター・ペアレント」という言葉が入ってきた。
頭上を旋回するヘリのように子を見守り、すぐ降りてきては指示や助け舟を出す親、という揶揄(やゆ)だ。日本の大学生の親にも多いらしい

▼履修登録についてくる、授業の欠席連絡を親がよこす――など珍しくもないと聞く。となれば「へその緒」つきの社会人も結構いるのだろう。
叱り方ひとつにも注意がいる
posted by 小だぬき at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする