2012年12月12日

香山リカのココロの万華鏡:12月が身にしみる

香山リカのココロの万華鏡:12月が身にしみる
毎日新聞 2012年12月11日 東京地方版

 クリスマスや年末が近くなり、楽しい気分の人もいるかもしれないが、そうではないという人も多いだろう。

 とくに診察室にいると、「忘年会にパーティーでウキウキします」などという人に会うことはまずない。

クリスマスソングを耳にすると孤独が身にしみると涙ぐむシングルの女性、
人前に出ると緊張するのに取引先の忘年会に出なければならずにつらいと訴える会社員、
年賀状に「今年も無職です」と書くのかと苦笑する青年、
夫の実家への帰省を考えるだけで頭痛がしてくると顔をしかめる主婦。
みんな「12月なんてなければいいのに」とため息をつく。


 実は私も12月は好きではない。
「今年もできないことのほうが多かった」と自己嫌悪に陥るからだ。

しかし、診察室で肩を落とす人たちには、必ずこんな話をすることにしている。
「この季節、きらいですか。でも12月になったということは、今年もなんとか乗りきったということじゃないですか」


 これは慰めで口にしているわけではない。
私のような年齢になると、毎年、身のまわりでたくさんの知人や親族が病気になったりこの世を去ったりする。
「いよいよ仕事が立ち回らなくなったので、実家に帰ってひっそり暮らす。
もう連絡することはないと思う」などと言って、突然メールアドレスを変える友人もいる。

とにかくなんとか無事に1年を乗りきり、この季節までたどり着き、「今年もクリスマスか。
あまり楽しくないな」などとつぶやけるのは、実はとても幸せなことなのではないだろうか。


そんな幸福とも呼べないようなささやかな 「生きる喜び」を味わわなければならない私たちにとっては、「議席が何百まで伸びるか」「選挙後は連立で強大な政権を」といった“景気のいい話”にはあまり現実味が感じられない。


 ノーベル賞の授賞式のためにスウェーデンを訪れた山中伸弥教授は、「ずっと夢の中にいるよう」と語っていた。
もちろんこれは「いい夢」だが、大震災以降、いやそれよりかなり前から、日本にいる人たちの多くは「ずっと悪い夢の中にいるよう」と感じているのではないか。
ささやかな喜び、幸せを見つけなければ、私たちは生きていけない


でも、その中でも、満面の笑みをたたえた候補者を乗せた選挙カーが、「あと一歩です!」と大声を残しながら走り去る師走の街並みの中で、自分はどんどんテンションが下がっていくのを感じてしまった。

posted by 小だぬき at 07:48| Comment(2) | TrackBack(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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