2013年02月06日

困窮者支援 掛け声倒れは許されぬ

困窮者支援 掛け声倒れは許されぬ
2013年2月6日   東京新聞社説

活に困窮する人が増えている。
政府がその支援策をまとめた。

地域の力をうまく結集して生活保護に陥る前に自立につなげる。
実現に向け社会で取り組み、貧困の“防波堤”に育ててほしい。

 
 「遠くの親類より近くの他人」


 生活に困ったとき頼りになったのはかつては隣人だった。
地域の絆が弱くなった現在は、こうした支え合いは難しい。
 

一方、世帯の平均所得は十九年前から減り始め、現在二割が年収二百万円未満だ。
そこで生活保護に頼る前の困窮者の自立を後押しする。
厚生労働省の審議会がその支援策を報告書にまとめた。
 

自治体などに相談窓口を設けたり出向いて困窮者を見つける。
個々の事情に合わせた解決法を考え、力になる関係機関につなげる。
就労の場を提供したり、家計のやりくり、住宅の確保、健康管理、子どもの学習支援など自立力をつけるためきめ細かく支える。

支え手は自治体やハローワークなど公的機関にNPO、社会福祉法人、民間企業も加わる。お隣さん同士の助け合いの輪の代わりに、社会のいろいろな機能をつなげた輪で支えることを狙う。

介護を社会化した発想である。

 こうした支援は今、求められている。
自立できる人が増えれば生活保護費の削減にもつながる。 

支援の特徴は、困窮者が自立できるまでこの支援の輪のだれかが寄り添う伴走型サポートだ。
ただ、その具体像が不透明である。
「保護を受ける前に自立へつなげる」狙いを口実に、保護を利用させない新たな水際作戦になるとの懸念の声もある。

政府は地域で共有できる具体像を示すべきだ。
目指す理想像は分からないではないが、支援のカギは輪をつなぎ動かせるかだ。だが、関係機関の役割分担と連携の模索はこれからである。
人材や財源も要る。

 最大の課題は地域の要となる自治体のやる気だ。
報告書もいたる所でそれを指摘している。
NPOや企業が熱心でもなかなか輪にならない。輪をつなぐ“接着剤”になる自治体の人材が重要になる。
本腰を入れて取り組まねば、掛け声だけに終わりかねない。
政府は通常国会に関連法案を提出する。就労支援など一部は新年度予算案に盛り込まれたが、本格的な取り組みは数年先になる。

保護費の削減など生活保護制度の引き締め策だけでは困窮者を追い詰める。
寄り添う支援は一体で実現に努力すべきだ。
posted by 小だぬき at 19:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

香山リカのココロの万華鏡:広がる「嗜癖」の範囲 

香山リカのココロの万華鏡:広がる「嗜癖」の範囲 
毎日新聞 2013年02月05日 東京地方版

 よく一般の人から、「うつ病って言っても、血液検査やレントゲンで診断がつくわけじゃないんでしょう?
 医者や国によって診断にバラつきが出ることもあるよね」と言われる。
放っておくとそうなるかもしれないがそれでは困るので、世界の精神科医たちはなるべくみな同じ診断基準を使うことにしている。
そこで使われているのが、アメリカ精神医学会が作成したDSMという指針だ。


 それがこのほど約20年ぶりに改訂され、「DSM−5」として今年の5月ごろから使われることになった。


 なんだ、精神医療の業界でマニュアルがかわっただけじゃない、と言われそうだが、これはいまの社会の“心の問題”を反映するものであり、また逆に社会にじわじわと影響を与えるものでもあるのだ。


 たとえば、改訂版からはアルコールや薬物などへの「依存」という用語が消えて、「使用障害」という分類でまとめられている。

そして、一度、診断基準から消えた「嗜癖(しへき)(アディクション)」という大きな概念が復活している。


 この問題にくわしい精神科医・松本俊彦氏は、学会のシンポジウムで「この『嗜癖』という用語は、偏見を助長する侮蔑的表現としてではなく、より新しい意味をまとって復活した」と述べている。
その上で、この背景にあるのは、お酒にせよ薬物にせよ、何かに病的にハマってやめられないという問題の中心は、「身体依存の有無ではなく、人が物質にとらわれ支配される事態、『コントロール喪失』であり、今日ふうにいえば『精神依存』」だと考える。

そうか、アルコール依存はやっぱりからだの病気じゃなくて、こころの持ちようなんだな、という意味にとらないでほしい。

嗜癖」というより広い概念を提示しなければならないほど、いま「コントロール喪失」が原因で自分を抑えられず、さまざまな“やってはいけないこと”に手を出し、ついには生活や人間関係の破綻にまで進んでしまう人が増えているということだ。

また、そのハマる対象も古典的な酒や覚醒剤に限らず、ギャンブルや買い物、さらにはスマホやSNSなどより目に見えにくい方向へと広がりつつある。

今回の改訂では「嗜癖(アディクション)」はまだその範囲が限られているが、今後、「コントロール喪失」に陥る人がさらに増えれば、また変わるかもしれない。

「あの人もこの人もアディクションで治療中」という社会が来ないことを望みたい。

posted by 小だぬき at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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