2013年02月14日

診察室のワルツ:後悔しないために=岡本左和子

診察室のワルツ:後悔しないために=岡本左和子
2013年02月13日 東京朝刊


 まるでジェットコースターの頂上から落ちて行くようでした。
40年ほど前、ジャンボ機同士が千葉沖でニアミスを起こし、もし衝突していたら約500人の命が奪われ、当時としては史上最悪の飛行機事故になっていました。
私は、その一方のジャンボ機に乗っていました。
あの時の機内の叫び声は今でも忘れることができません。


 このニアミス以来、私は多少なりとも危険が伴うことをする時は、後悔しないために必ず「自分はどうしたいのか」と問うことにしています。

例えば、健康診断の胃カメラなどの内視鏡検査でも、「検査をした方がいいと思っている?」と自分に聞いてみます。
常に安全に気を配っている医療者の皆さんには申し訳ありませんが、これらの検査は危険がつきものです。
万が一の場合は自分の身体が傷つきます。
一方、検査を受けなければ、病気を早期発見できない危険が伴います。
受けるか否かについて、「担当医に言われたから」「会社の規則だから」と、誰かに責任を押し付けることはできません。
患者自身が決断するものなのです。


 治療のため患者が選択できない検査や処置もあります。
その時は「理由に納得した? 受けようと思った?」と自分に確認します。

私たちは日々、置かれた環境や社会通念、他人の思いに影響され、受動的に決めることが多くあります。

実は、これは「自分を見捨てている」ことになります。
一般に医療は治療計画に従い進められますから、「先生に言われたから仕方ない」となりがちです。

しかし、仕方ない選択であっても、患者が「主体的に選んだか」は、治療の進め方や結果に大きな違いをもたらします。
以前にも書きましたが、治療の結果は良くても悪くても患者が引き受けるのです。


 これは「自分の思いを押し通せ」という意味ではありません。
医学的な決断をする医師が、患者の思いを取り入れて治療をするには、患者が「自分はどうしたいか」をはっきり伝えなければなりません。

治療の折々に、「自分はどうしたいの?」と問いかけてみてください。
闘病中に忘れがちな自分の思いに耳を傾け、自分自身を大切
にする方法でもあります

(おかもと・さわこ=医療コミュニケーション研究者)


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posted by 小だぬき at 05:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする