2013年5月1日 朝日新聞デジタル
世界で初めて人口調査をしたダビデ王に、神が怒って罰を科したとき、ダビデは一切弁解をせずに自分の罪を認めた……。
という話を枕に「スモール・イズ・ビューティフル」の著者シューマッハーさんは、こう言っている。
「ダビデは、人間を一つの単位として取り扱うような人口調査には何か間違っているものがあることに気づいたのだ。
人間は、一人一人が一つの宇宙なのである」
いい話である。が、それから3千年たったいまも、人間がしばしば数字的な単位として扱われていることに変わりはない。
大企業が社員を何千人も一度にクビにできるのは、社員を人間ではなく、顔を持たない数字として見ているからだし、
安倍さんが夏の参院選に自信満々なのも、政策や候補者の質で勝てると確信があるわけではなく、当選者の頭数を計算してのことだろう。
憲法の改定だって、これからじっくり議論を重ねて実現したいというよりも、議席の数で押し切れるうちに押し切ろうとする算段に見える。
多数の暴力で、とはあえて言わないが(言っちゃった)、「消費税還元セール」という表現は許さん、なんて小売業界をおどすのも、調子に乗り過ぎている。
これは業界の猛反対に遭って、「消費税」や「税」に触れなければ認めるということになったようだが、小売業の広告キャッチフレーズにまで口を出すのは、あまりにも出過ぎた話である。
で、ここはひとつ、わが小売業界も国のおせっかいに感謝の気持ちをこめ、店内にこんなキャッチフレーズをかかげて話題を盛り上げたらどんなものだろう。
「政府ご公認3%値下げセール」
(コラムニスト)