2013年05月16日

診察室のワルツ:不満を聞き取り信頼構築=岡本左和子

診察室のワルツ:不満を聞き取り信頼構築=岡本左和子
毎日新聞 2013年05月16日 東京朝刊

 患者やその家族から苦情を受けたとき、「それを私に言われても、という内容で困った」という病院スタッフの相談をよく受けます。

例えば、「MRI(磁気共鳴画像化装置)検査の結果が出て説明を聞きに来たが、A医師の『特に悪いところはありません』という一言で診察が終わった。

検査をした腕が痛く、日常生活にも困っているのに、もっと丁寧な診察と説明の仕方はないのか」と、病院の事務や薬局、または受付で患者が怒ったとします。
「あなた」が病院スタッフだとしたら、このような苦情をどうしますか。


 同様の話をセミナーで紹介したとき、「私に言われてもなあ」とつぶやいた人がいました。
聞いてみると、「治療や診察内容なので、事務や薬局は『すみません』としか言いようがない」と言うのです。

しかし、自分の役割や担当範囲を主張しているだけでは、患者・家族の不満や苦情は理解できません。
そればかりか、双方が納得できる対応ができず、何かのきっかけで悪い方向に広がる可能性を含みます。


 苦情を持ち込んだ患者の側に立つと、どうでしょうか。
「検査で異常がなくても、痛くてたまらないのだから、他の原因はないのか」と、医師に聞くことができなかったのでしょう。

一方、全く関係ない部署の人には言いやすく、助けてほしかったのです。
患者・家族が治療で世話になる医療者に、直接苦情を言うことは難しいものです。
ささいなことであっても、患者・家族が疑問や苦情を言葉にするときは、声を荒らげるくらいの気合がないと言い出せないこともあるようです。


 患者・家族の話は「私だから言ってくれたのだ」と思って聞いてください。
最初の例は、「もう少し説明がほしいそうです」と担当医に伝えたり、診察室まで一緒に付き添ったりするだけでも、患者には大きな助けになります。


 医療機関内のどの部署も、どの病院スタッフも患者・家族の不満や苦情を聞き取る力をつけることは、医療者と患者・家族の関係を支え、信頼構築の第一歩につながります。
患者・家族の小さな疑問や思い違いをため込ませない工夫が必要です。

(おかもと・さわこ=患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋理事)

posted by 小だぬき at 09:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする