2013年09月12日

寝ても覚めても:470億円を考える=冨重圭以子

寝ても覚めても:470億円を考える=冨重圭以子
毎日新聞 2013年09月12日 14時20分

  以前から、国や自治体の予算に関する記事は、読むのが苦手だった。
予算額が1億円を超えると、実感がないため思考停止し、金額が頭にとどまってくれないのだ。


 東京五輪の経済効果は招致委員会の試算で3兆円といわれても、あるいは副次的な効果まで含めると100兆円を超える、という説をきいても、ふーん、という感想しか出てこない。


 ただ「470億円」は、なぜか頭に残り、いまも気になる金額だ。
東京電力福島第1原発の汚染水漏れを収拾するために、政府が投入を決めた国費の額。
完全にコントロールするには、さらに増額しなければならないようだが、470億円でとりあえず止められるのなら、なぜもっと早く決断しなかったのだろう。


 国費投入の発表が国際オリンピック委員会(IOC)総会の直前だったから、東京招致への影響を考えた、という見方も出た。

だとしたら東京が立候補していなかったら、いまだに東京電力任せにしていた、ということ?


 東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まってから、国内は想像した以上の祝賀ムードに包まれている。
不動産、建設、観光など五輪関連株が大きく上昇し、都庁前での報告会は人の波で埋まった。


 スポーツ界にもいい話だ。
政府はスポーツ庁の設置を検討するという。
バラバラだったスポーツ行政が、ようやく一本化する可能性も出てきた。


 佐藤真海さんの見事な招致演説のおかげで、パラリンピックへの注目度も、これまでになく高い。
東京のバリアフリー化が進めば、きっと他の地域へも波及するから、高齢者も行動しやすくなる。招致成功はいろいろな好影響をもたらす。


 「だからさ」と福島県出身の知人は言う。
福島も、五輪を利用すればいい」。
五輪ありきの470億円だったとしても、ゼロよりはまし。

「健康問題に関して今までも、現在も、将来も問題はないと約束する」と見えを切った安倍晋三首相に「忘れた」と言わせないよう、折に触れて確認し続けよう、というのだ。


 最優先事項は五輪なのだから仕方がない、という諦観も含んだ提案に、言葉が返せなかった。

(専門編集委員)
posted by 小だぬき at 17:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする