2013年11月06日

石井苗子の健康術:ストレスがあると分かったら、どうすればいい?

石井苗子の健康術
ストレスがあると分かったら、
                      どうすればいい?
2013年11月5日 読売新聞yomiDr.

 (ストレスをコントロールする余裕がないんです)


 ブログのコメントの中にこれと同じ言葉があったのに驚きました。
研修先の病院の患者さまに、最近よく言われる言葉だからです。

「ストレスをコントロールする余裕がない」


 医師が、「ストレスは逃げるか慣れるかのどちらかです。
逃げることができなければ慣れるためにストレスをコントロールするように」と言われても、「今日は休めないのに、無理して病院に来てるぐらいなんです。

帰れば私の仕事がたまっているだけです。
誰も助けてくれません。
ストレスをコントロールする余裕なんかありません。
仕事を辞めなくては余裕ができません」と言い返されてしまいます。


 「体を壊してまでやる仕事はありません」と言えば、「すでに壊しているからここに来てます」となります。

そして多くの方が治療の途中で退職してしまうか、とりあえず仕事を辞めて勉強や趣味を始めるかになっていきます。
私は8年間、心療内科の研修をしていますが、ここ3年の間にこうした現象が増えてきているような気がします。


 どうすれば、過酷な仕事を続ける若者が心身ともに健康でいられるのでしょうか。


 本来、人間の身体は1日の疲労を1日で取り戻せるようにできているといいますが、そんな生活をしている現代人はほんのわずかしかいない。
老若男女とも、解決できない問題を引きずっていることや、限界を超えた長時間労働で疲労を蓄積していることが多い。


 こうした労働者の自律神経がどのような状態になっているか、つまり自分では気が付かないストレスの状態を測る自律神経測定機が、多くの企業によって開発されるようになりました。


 理想としては静かな部屋で2回測るのがいいのですが、ちょうど血圧を医師が測ると普段より高い結果が出る「白衣症候群」と同じように、自律神経も環境の変化に敏感に左右されます。

しかし、自分の自律神経が環境によってどう影響されているのかの目安ぐらいにはなります。
神経が高ぶっていると交感神経が優位に出ます。
一見落ち着いているように見えても本当はイライラしていれば、副交感神経が働いていない状態だとデータが知らせてきます。
交感神経と副交感神経のどちらも低い値しか出てこないと、自律神経失調症という結果が出されます。

どちらの神経もともに高い値が出れば、集中すべきときに集中し、それが終わればすぐにリラックスできる理想的な生活を送っている、と結果が報告してきます。


 問題は、自分の結果が悪かった場合に「どうやったら良くなるんですか? どうコントロールすればいいのでしょう」という質問に、その個人に合ったコントロール方法を見つけるためのカウンセリングをする時間の余裕がないことです。


 多忙な若者は、暇があったら寝ていたいと思うほど疲れているのが現実だからです。


 先週の心療内科早朝勉強会で、上記の問題解決のひとつとして紹介されたのが、自分で呼吸のリズムを訓練できる小型器材でした。
大きさは携帯電話ぐらいで、左手の人さし指をクリップに差し込むと現在の自分の呼吸のリズムがグラフの山の形になって表示されてきます。
吸うと上がり、吐くと下がり、山の形で表してくれる。

私などは吸ってばっかりで全然山の形になっていませんでした。
しばらくすると、機械のピッピッという音に合わせて「吸って〜、吐いて〜」と音に合わせグラフを見ながら呼吸で山の形をつくり、神経を落ち着かせる訓練をさせられます。
こうしていると、短期間でイライラがおさまって、眩暈(めまい)や血圧のコントロールができるようになるというものです。


 どこでも自分でできるというのが売りなのですが、私は音に合わせて山の形がうまく出て来てくれないとイライラが増してくるという、手に負えない性格をしていることが分かりました。

こういう人間は、何事も自分の思い通りにならないとストイックになんとかしようとするし、失敗すると過度に悔しがるタイプなので、常に交感神経が優位なのです。

ストレスのコントロールには、ヨガの呼吸法がよいとされているのはよく知られていることですが、ヨガも1回やったらそれで良くなるというものではなく、継続していくことで達人になっていくというものです。
そんな余裕がないという若者の意見はよく理解できます。


 先日私は、若者の診察を優先してあげたらどうかと意見しましたところ、猛反対にあいました。

理由は、人権にかかわるからです。
高齢者も若者もひとりの人間であるのだから、たとえ命にかかわる場合であったとしても、その中でも順番は守るべきだと。
風邪の熱なんだから若者を先に診てあげたらどうかはないと。
早くから待っている慢性病の高齢者の順番が先だと。

実際問題として、薬だけでつないでいた若者が、たまたま先生と長く話し込んでいた時に、廊下のイスに座っていた高齢者から、「薬は予約なしの飛び入りだそうですが、あんなに長く話をしているんじゃ診察と同じじゃないですか。

朝からずっと待っている私の時間はどんどん遅くなっていって。
私も今から薬に変えてもらえません? その方が早いなら!」と言われたので医師に相談すると、「どうして暇なのにそう急ぐのかな〜〜、4か月に1日の予約日なのに、待ってくれればいいのに」と苦笑されていました。

そこが人権にかかわりが出てくるところなのでしょう。
高齢者は暇なんだから待っていればいいは通らない。
心療内科は他の科の患者さんよりイライラする方が多いのが特徴ですが、これが急性の内科診療なら譲り合ってくれるだろうかといえば、なかなか実現しないのが現実です。


 高齢者は治療費も少なくて済むし、もし総合病院なら色々な検査をしてくれる。
静かで設備も整っていて、働いている人のほとんどが医療従事者で、便利でかつ安心できる場所です。
時間さえあれば朝から来たくなる気持ちもよくわかります。
そこを、どうやったら地域医療を改善して、高齢者がなるべく病院に行かないようにできるだろうかと、今考えている最中なのですが、医師も商売ですから患者さんが減っては困るのでしょう。


 「高齢になるほどたくさん医療費を払う制度にして若者を守りましょう」なんて公約して当選する政治家もまずいないでしょうし、日本の若者を守るにはどうしたらいいかは、考えても考えても良い案が浮かばない、案があったとしても反対されるという、頭が痛い難問です。

posted by 小だぬき at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする