2013年11月16日

社説:秘密保護法案を問う 報道の自由「配慮」では守れない

社説:秘密保護法案を問う 
報道の自由「配慮」では守れない
毎日新聞 2013年11月15日 東京朝刊

 報道の最大の使命は、国民の「知る権利」に応えることだ。

私たちが取材や報道の自由を訴える根拠も、そこに根ざしている。


 特定秘密保護法案の国会提出直前、「報道や取材の自由への十分な配慮」が条文に加わった。

だが、法案には、捜査当局による捜査手法に限定を加える規定はない。
強制捜査を含め、最終的には捜査側の判断次第なのだ。
「知る権利」を脅かす恐れが強いと指摘せざるを得ない。


 一つ例を挙げたい。
報道機関が特定秘密に指定された情報を入手し、国民に知らせるべきだと判断すれば、報道に踏み切るだろう。
その場合、取材源は明かせない。
取材源を守ることで、国民の信頼を得ることができ、自由な取材も可能になる。


 一方、捜査側はどう対応するか。家宅捜索で記者のパソコンや携帯電話を押収し、漏えいした公務員を割りだそうとする可能性が高い。

そうなれば、多くの取材先に迷惑が及ぶ。
記者や報道機関の信頼は地に落ちる。

たとえ刑事訴追の段階で、法案の配慮規定に従い記者が起訴されなくてもダメージは大きい。
取材先を守れなければ、その後の取材活動は続けられないかもしれない。


 報道機関に家宅捜索が入る可能性が今週の国会審議で取り上げられたが、政府答弁は一貫性に欠けた。

森雅子特定秘密保護法案担当相は当初、配慮規定を理由に「入ることはない」と述べたが、谷垣禎一法相や古屋圭司国家公安委員長は、捜索の可能性を否定しなかった。


 実は捜索をめぐる事件が2005年、ドイツで起きた。
国家秘密とされるテロリストの情報が月刊誌に掲載されたのだ。

ドイツの法律では、記者に証言拒絶権を認めている。
だが、捜索を禁じる規定はなく、当局は捜索を行った。
その是非が争われ、憲法裁判所は違憲と判断した。


 ドイツでは昨年、刑法や刑事訴訟法が改正され、秘密漏えいがあっても記者本来の仕事である情報の入手や公表ならば、刑事責任は問われず、取材源割り出しを目的とした捜索もできないことになった。


 一方、日本では取材源を秘匿するための記者の証言拒絶権や、差し押さえ禁止の規定が刑事法令にない。

そうした状況下で、「そそのかし」のようなあいまいな規定で罰せられる可能性がある。

森担当相は後に、「(取材が)著しく不当な方法と認められない限り、捜索は入らない」と述べたが、不当かどうか捜査当局が決める根っこは変わらない。
やはり法案は問題だ。

posted by 小だぬき at 00:00| Comment(6) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする