2013年11月30日

(記者有論)自衛隊と秘密 「言ったら懲役」の深刻さ 園田耕司

(記者有論)自衛隊と秘密 
「言ったら懲役」の深刻さ 園田耕司
2013年11月30日05時00分 朝日デジタル

 特定秘密保護法案の審議を見ると、防衛省担当記者として「秘密」の実態が知られていない、と懸念を覚える。


 「そんなこと言ったら懲役を食らっちゃうんですよ! 言えるわけないじゃないですか!」。

電話の向こうから、いつもは温厚な取材相手に、激高した口調でまくし立てられたことがあった。


 今年6月、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えた破壊措置命令の解除をめぐる自衛隊関係者とのやりとりだ。

正当な取材であっても、これを話すと処罰されると、取材相手本人が伝えてきたのだった。
私は初めて問題の深刻さに気付いた。


 この破壊措置命令をめぐる政府の対応は奇妙だった。
過去3回は公表しているのに、「手の内を明かすことはない」(菅義偉官房長官)として命令の発出を一切認めなかった。

防衛省がある東京・市谷のグラウンドには迎撃のためのPAC3部隊が大々的に展開し、本紙を含め、メディアが破壊措置命令が出ていると報じているのに……。

 取材相手を激高させた理由は、破壊措置命令そのものが防衛秘密に次ぐレベルの秘密事項「省秘」に指定されていたからだった。

これが秘密指定されているということを教えるのも秘密漏洩(ろうえい)で、懲役1年以下の罰則がある。

命令の存在が秘密だから、解除時期も含めて秘密。
秘密が新たな秘密を生み、この話題になると関係者は口をつぐむ。
小野寺五典防衛相は「(命令は)あったかなかったかは公にしない」と言う。


 国会で野党が質問しても、安倍晋三首相は「言わない方がいい」と説明を拒む。
解除後も政府の判断や対応が適切だったか議論すら出来ない。
これが秘密の実態だ。


 特定秘密保護法が成立すれば、防衛省が抱える多くの秘密事項が「特定秘密」へ移行する。

法案には将来の情報開示が盛り込まれているが、「政令で定める重要な情報」を例外扱いとしており、開示される保証はない。
なぜ秘密指定したのか、政権に説明責任はなく、外部が妥当性をチェックすることも不可能だ。


 特定秘密漏洩の罰則は懲役10年以下。
「通常の取材行為は処罰対象とならない」(森雅子・同法案担当相)と言われても、取材相手の身の安全が保障されなけば取材そのものが成立せず、国民に事実を伝えることはできない

防衛省の取り組みが他省庁に広がれば、官僚らに与える心理的な萎縮効果は絶大だろう。

 (そのだこうじ 政治部)
posted by 小だぬき at 14:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

陸自、独断で海外情報活動/首相や防衛相に知らせず/文民統制を逸脱/民主国家の根幹脅かす

陸自、独断で海外情報活動
      首相や防衛相に知らせず
文民統制を逸脱
       民主国家の根幹脅かす

共同通信47ニュース 2013/11/28 14:30

 陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)が、冷戦時代から首相や防衛相(防衛庁長官)に知らせず、独断でロシア、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせてきたことが27日、分かった。


 陸上幕僚長経験者、防衛省情報本部長経験者ら複数の関係者が共同通信の取材に証言した。


 
自衛隊最高指揮官の首相や防衛相の指揮、監督を受けず、国会のチェックもなく武力組織である自衛隊が海外で活動するのは、文民統制(シビリアンコントロール)を逸脱する。


 衆院を通過した特定秘密保護法案が成立すれば、自衛隊の広範な情報が秘密指定され、国会や国民の監視がさらに困難になるのは必至だ。


 陸幕長経験者の一人は別班の存在を認めた上で、海外での情報活動について「万が一の事態が発生した時、責任を問われないように(詳しく)聞かなかった」と説明。

情報本部長経験者は「首相、防衛相は別班の存在さえ知らない」と述べた。


 防衛省と陸自はこれまで別班の存在を認めておらず、 小野寺五典防衛相は27日夜、「陸幕長に過去と今、そのような機関があるのかという確認をしたが、ないという話があった」と述べた。


 関係者の話を総合すると、別班は「DIT」(防衛情報チームの略)とも呼ばれ、数十人いるメンバー全員が陸自小平学校の「心理戦防護課程」の修了者。
同課程は諜報(ちょうほう)、防諜活動を教育、訓練した旧陸軍中野学校の後継とされる。


 別班の海外展開は冷戦時代に始まり、主に旧ソ連、中国、北朝鮮に関する情報収集を目的に、国や都市を変えながら常時3カ所程度の拠点を維持。
最近はロシア、韓国、ポーランドなどで活動しているという。


 別班員を海外に派遣する際には自衛官の籍を抹消し、他省庁の職員に身分を変えることもあるという。


現地では日本商社の支店などを装い、社員になりすました別班員が協力者を使って軍事、政治、治安情報を収集。
出所を明示せずに陸幕長と情報本部長に情報を上げる仕組みが整っている。
身分偽装までする海外情報活動に法的根拠はなく、資金の予算上の処理などもはっきりしない。


 冷戦時代の別班発足当初は米陸軍の指揮下で活動したとされる。

陸幕運用支援・情報部長の直轄となった現在でも「米軍と密接な関係がある」と指摘する関係者は多い。
    (共同通信編集委員 石井暁)


 【解説】 
陸上自衛隊の秘密情報部隊「別班」が独断で行ってきた海外活動は、
政府や国会が武力組織を統制して暴走を防ぐ文民統制(シビリアンコントロール)を無視するもので、民主主義国家の根幹を脅かす。


 これまで元別班員らが出版などを通じ、冷戦時代の活動の一端を語ったことはあるが、防衛省と陸自は別班の存在すら認めてこなかった。


 今回、陸自トップの陸上幕僚長経験者と、防衛省で軍事情報の収集や分析を統括する情報本部長経験者らが別班の存在を認め、海外展開を初めて明らかにした。


 万が一発覚した場合に備え、陸幕長にも海外の展開先や具体的な活動内容をあえて知らせず、自衛官の身分を離れて民間人などを装った佐官級幹部が現地で指揮する。


 
首相や防衛相が関知しないまま活動する不健全さはインテリジェンス(情報活動)の隠密性とは全く異質で、「国家のためには国民も欺く」という考えがあるとすれば本末転倒も甚だしい。


 関東軍の例を挙げるまでもなく、政治のコントロールを受けず、組織の指揮命令系統から外れた部隊の独走は、国の外交や安全保障を損なう恐れがあり、極めて危うい。


 日米同盟を強化し、機微な情報を共有するには秘密保全が必要だとする政府は、国家安全保障会議(日本版NSC)発足と特定秘密保護法案の成立を急いでおり、その先に米中央情報局(CIA)のような対外情報機関の新設も見据えている。


 
だが、特定秘密保護法案は恣意(しい)的な運用の歯止めがなく、別班のような「不都合な存在」は歴史的経緯も含め、永久に闇に葬られる懸念がある。


 別班に目をつぶったまま、秘密保全や対外情報活動の強化を進めるのは公明正大さを欠く。

政府と国会は別班の実態を徹底的に調べて国民に明らかにし、民主国家の基本原理である文民統制の機能回復を図る責任がある。

posted by 小だぬき at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする