2013年12月05日

石井苗子の健康:術高齢者の「小さなお困りごと」にだれが対応するか

石井苗子の健康術
高齢者の「小さなお困りごと」に
                    だれが対応するか
2013年12月3日  読売新聞yomiDr.

(役場に「電気が切れた」と電話がくるそうです)


 来年で3年目に入る福島県の支援ですが、2011年震災当時の態勢とは違って、地元の自治体、社会福祉協議会や地域包括支援センターの方々と相談をしながら、私たちのプロジェクトチームが何をしたらいいかを決めていく作業をしています。


 少子高齢化という言葉はよく耳にするようになりましたが、地域で進み続ける高齢化が作り出す問題を解決する方法は、どうしても後手になってしまいがちです。
被災地でも、その問題は他の地域と何ら変わりはありません。


 私たち日本人の人口が、どういう状態であるかは多くの人が知っています。

しかし、それは情報として聞いているだけで、実際に自分が高齢になったとき日常生活が困ったらどうすればいいのかといえば、とりあえず役場に電話をして聞いてみようという方が多いのだそうです。

たとえば「電気が切れたので替えてほしいが、どこに頼めばいいのか」も、その電話のひとつです。
電気が切れて役場に電話をするという行為は、若い時には考えなかったことです。


 将来、自分が高齢になって、身体的・精神的・環境的にどうなっていくかを想定して準備をするという気持ちで地元の講習会や勉強会などに出かけていく人は少ないのだそうです。

介護保険制度の説明会も含め、役場が招集をかけても「忙しい」を理由に参加者は少なく、具体的に何か起きて初めて「はて!?」と思い立って役場に電話をしてくるのが特徴だと保健師さんたちから説明を受けています。

 「とりあえず役場に電話して聞いてみよう」となるのだそうです。

 以前このブログに、予防ほどつまらなくて退屈で、面倒で億劫(おっくう)なことはないと書いた記憶があるのですが、人はいよいよとなるまで面倒なことはやりません。
予防もそうです。「まだなんとかなっている」うちは、しばらく大丈夫と慢心しているものです。


 作家の渡辺淳一さんが、東海道新幹線の機関誌にエッセイを載せていらっしゃるのを拝読しました。
彼は医師でもありますが、ご自身の体験から「老いは急に訪れる」といった内容でした。

なにしろ今まで出来ていたことができなくなるのだから」とありましたが、「今まで出来ていたこと」とは、スポーツのような非日常的なことではなくて、買い物や家事、身づくろい、といったことも含まれます。

なんとなく「今日は疲れているから明日」と言ってごまかしてしまいがちです。

そうするうちに、突然転んだり、だんだん家の中が片付かなくなっていっているのに、気を払わなくなったり…。


 先日、ある市町村の社会福祉協議会主催の福祉大会で、ボランティア活動について講演をしてきましたが、そちらでも電話が増えてきているそうです。

重い物を動かしたい、部屋を掃除したい、買い物をしてもらいたい、ひとりの食事をつくるのが面倒だ、電化製品を取り替えたい、探し物が見つからない、銀行に行きたい、などなど。

こうした電話に「どなたかお近くに相談に乗ってくださる人はいませんか」と尋ねれば、「いない」か「いても遠い」とか、「頼むのが面倒」という答えが、全国的に増えてきています。
これからはもっと多くなっていくでしょう。


 社会福祉協議会は、戦後アメリカから導入された地域福祉事業で、日本では運営資金の多くが行政機関の予算措置によるものでした。

「半官半民」とよく呼ばれている運営方針で地域の方々からの募金集めも行っていますが、募金は強制的なものではありません。

地域の高齢者が増えていくにつれて、上記のような「小さなお困りごと」のお助けボランティア活動も活性化していかなくてはならないと思っている自治体も多いのですが、昔とは違い、独り暮らしや老夫婦の生活が増えていく中で、医療制度の改革だけでは回らないものも増していくことでしょう。

団体も運営費用がなければ、人も雇えません。ボランティア活動だけに頼っていても限界があります。


 「どうせ人口は減っていくのだから、各家庭が自己責任でやってもらおう」というご意見の方もいらっしゃいますが、どうにもならない時代に突入していくような気がします。


 今年の夏は熱中症で家の中でお亡くなりになる高齢のご夫婦もいらっしゃいました。

まだ動けるのに、どうして水を飲んだり、エアコンをつけたりできないのかという質問もありますが、足腰が思うように動かないほどの高齢になるということは、こうしたなにげない日常のことでさえ億劫に感じ、つい動かないで我慢してしまうものなのです。

筋力が弱れば、掃除も片付けも疲れてしまいます。
なるべく、小まめに出来るところまでやり、地域のボランティア活動をしている方々にお金を払ってでも、少しずつ家のゴミを片付けていくことから始めるといいと思います。

そうするにはどうしたらいいかの組織づくりを、地域の個性を観察しながら始めていかなければならないと思います。

posted by 小だぬき at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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