2013年12月25日

PKOで弾薬提供 説明なき転換を危ぶむ

PKOで弾薬提供 説明なき転換を危ぶむ
毎日新聞「社説」 2013年12月25日 02時30分


 極めて疑問の残る決定だ。
政府は、治安が悪化している南スーダンの国連平和維持活動(PKO)で、陸上自衛隊の弾薬1万発を国連を通じて現地の韓国軍に無償提供した。

武器輸出三原則に抵触することから、例外扱いにした。
日本の武器・弾薬が外国軍に譲渡されるのは初めてだ。

それなのに政府の説明は不十分で、理由にあげた緊急性・人道性がどの程度のものか、代替手段はなかったかなど、政策の妥当性を判断する材料が乏しい。
戦後の安全保障政策をなし崩し的に転換することのないよう、納得いく説明を求めたい。
 

◇三原則さらに骨抜きに 

南スーダンでは今月15日から政府軍と反大統領派の戦闘が続き、治安が急速に悪化している。
現地でPKO活動をする国連南スーダン派遣団(UNMISS)には、韓国軍工兵隊280人が参加しているが、避難民1万5000人とともに武装勢力に周辺を取り囲まれている。


 そんな中、約150キロ離れた首都に展開中の陸上自衛隊に、韓国軍とその要請を受けたUNMISSから「弾薬が不足している」と申し入れがあった。

陸自は2012年1月から道路や橋の建設などの活動をしている。
決定を受けて、5・56ミリ小銃用の弾薬1万発を提供した。


 弾薬提供には、二つの点で懸念がある。
武器輸出三原則を骨抜きにしかねないことと、武器・弾薬の提供を否定した国会答弁との整合性だ。


 武器輸出三原則は、11年に野田内閣が、平和貢献・国際協力や国際共同開発・生産のケースについて輸出を認め、大幅に緩和した。

これにもとづきハイチのPKOでは、自衛隊はブルドーザーなどを提供したが、武器や弾薬を提供したことはなかった。

またPKOでの武器提供は、参加国との政府間取り決めが前提で、現行では国連など国際機関は対象外だ。
韓国政府との取り決めは結べず、例外扱いにした。


 三原則は、憲法の平和主義を支えてきた基本原則だ。
例外を重ねて形骸化してきたが、その都度、国会などで議論されてきた。

今回は、三原則がさらに骨抜きになりかねない重要な政策変更にもかかわらず、政府は国家安全保障会議(NSC)と持ち回り閣議を開いただけで弾薬提供を決めた。
発表はA4判1枚の菅義偉官房長官談話を出しただけだ。
野党には全く連絡がなかったという。


 官房長官談話は、韓国隊員と避難民の生命・身体の保護に一刻を争うことや、現地で自衛隊だけが同型の弾薬を持っているとして、緊急性・人道性を強調している。

また弾薬は韓国隊員と避難民の生命・身体の保護だけに使われ、国連の管理下で武器移転が厳しく制限されるとして、理解を求めている。

韓国国防省報道官は24日、国内の批判を意識したのか「予備量を確保するため臨時で借りた。
(銃弾は)不足していない」と語った。日本政府の説明と食い違う。


 だからこそ安倍晋三首相は自ら記者会見できちんと説明すべきだ。
国会も安倍政権の政策判断が妥当かどうか、現地情勢や決定の経緯などを検証すべきだ。
一部野党は閉会中審査を求める考えを示している。当然のことだ。


 一方、過去に武器・弾薬の提供を否定した政府の国会答弁との整合性にも疑問がある。

 ◇国会で閉会中審査を


 政府はかつて「国連側から要請があるとは想定しておらず、仮にあったとしても断る」と述べていた。

この点について今回、政府は「緊急時の例外的提供は排除していない」とし、PKO協力法25条の物資協力の規定を適用したと説明している。


 そもそも物資協力に弾薬が含まれるかどうかの規定はない。
あいまいにしてきたのは、弾薬提供などの支援をした他国部隊が武力行使する場合、日本が直接武力行使しなくても一体とみなされ、憲法9条に違反する可能性があるためとみられる。


 PKO要員の生命・身体を守るための武器使用は憲法の範囲内だが、相手が国や国に準ずる組織であってPKOの任務妨害を排除するために武器を使用することは憲法に違反する恐れがある。
これが政府が積み上げてきた憲法解釈だ。


 このため談話では、弾薬は韓国隊員と避難民の生命・身体の保護のためだけに使われると説明している。

しかし武器使用の区分は、憲法の制約から生まれたもので、韓国軍は認識していない。
まして韓国側から生命・身体の保護目的だけという担保をとっているわけでもなく、日本側の想定に過ぎない。
状況次第で憲法に抵触する可能性をはらんでいる。


 安倍首相は24日の自民党役員会で「積極的平和主義にのっとって行った。
万が一断ったら国際社会から批判される」と語ったそうだ。

首相は積極的平和主義の名のもと、今回のような集団安全保障と呼ばれるPKO活動の拡大や、集団的自衛権の行使容認を目指そうとしている。


 緊急性・人道性が差し迫ったものであったとしても、今回のやり方はあまりに乱暴だ。
例外で既成事実を積み重ね、なし崩し的にことを運ぶようなやり方は容認できない。
政府のしっかりした説明と早期の国会審議を求める。

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秘密保護法 自民の「反論」は正当か

秘密保護法 自民の「反論」は正当か
2013年12月23日 東京新聞社説

 特定秘密保護法を批判する報道に対し、自民党が「反論」と称する文書を同党の国会議員に配布した。
反論権は十分に認め、謙虚でありたい。
それを踏まえても、中身には疑問を持たざるを得ない。


 文書のタイトルは「特定秘密保護法に関する誤った新聞報道への反論」だ。
東京新聞(中日新聞東京本社)や朝日新聞、毎日新聞の報道や社説を二十三本、取り上げて、それぞれ逐条的に「反論」を加えている。


 例えば、「『行政機関の長』が、その裁量でいくらでも特定秘密を指定できる」と書いた新聞について、「反論・事実に反します」と冒頭で記す。

さらに「特定秘密は、法律の別表に限定列挙された事項に関する情報に限って指定するもので、(中略)恣意(しい)的な運用が行われることはありません」と記している。


 問題なのは、肝心の別表の中身があまりに茫漠(ぼうばく)としていることだ

外交分野では「外国の政府との交渉」と書いてある。
こんな言葉では、どんな交渉も含みうる。
拡大解釈も、恣意的な運用も可能であろう。
どこが「限定」していると言えるのか、不可解というほかはない。


 「国会や司法のチェックも及ばない」と書いた新聞にも、「反論・事実に反します」とし、「国会の求めに応じ、特定秘密を提供しなければならず、国会で必要な議論ができます」と書く。


 この記述は、議員が誤解しよう。
たしかに国会の秘密会に提供する定めはある。
だが、行政機関の「長」が「安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき」に限られる。


 そもそも特定秘密とは「安全保障に著しい支障があるため、特に秘匿するもの」である。
支障がないと行政側が判断する情報は元来、特定秘密になりえない。法を読む限り、論理矛盾でないか。


 テロリズムの定義をめぐっても、「反論」があった。

政府とは異なる解釈ができる条文の書き方で、根源的な問題である。
法律自体が欠陥なのだ。


 自民党の文書は「一部の新聞は誤情報を流して国民を不安に陥れています」と記している。
批判に背を向ける姿勢がうかがえる。


 報道機関は良心に従い、権力を監視し、問題点があれば、報道し、言論を述べる。野党も追及する。
国民もデモなどで声を上げる。
民主主義社会では正常な風景である。
国民を不安に陥れるのは、秘密保護法そのものである。

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