2014年02月27日

命の大切さ、若者に教えることができるか

命の大切さ、若者に
         教えることができるか

宋 美玄(そん・みひょん)
産婦人科医、性科学者
2014年2月26日  読売新聞yomiDr.

  遅ればせながら娘の誕生日プレゼントが到着しました。
アンパンマンのジャングルジムと滑り台とブランコのセットです。
かなり大きいので我が家のリビングは窮屈になってしまいましたが、天気の悪い日でも体を動かしてもらえるのでいいと思いました。
ブランコを上手にゆらゆらしている姿はすっかり子供です。

精神科と産婦人科、本質は同じ?


 先日、リストカットなどの自傷行為や薬物依存をする若者を診ておられる精神科医の松本俊彦先生の講演をききました。

一見産婦人科と関係ないように思える分野かもしれませんが、実は共通する部分が非常に多いことが分かり、むしろ本質は同じであると感じました。


 自傷行為をする若者には、自尊心が低い、摂食障害が多いなどの他にセックス経験が多く避妊をしていないという特徴があるそうです。

自傷行為は決して他者の気を引くためのアピールではなく、心に辛(つら)いものを抱えた人が、自傷行為によってエンドルフィンなどの脳内麻薬が出ることで一時的に苦痛から解放されるために行うものです

麻薬と同じで、同じ量だと効かなくなるため、どんどん傷つける量が増えていくとのことでした。


 自傷行為をやめさせるためには、「傷つけちゃだめ」「もうしないって私と約束して」と言ってもだめで、結局その人の抱えている辛(つら)さを解決しなければいけません。

「ハッピーな人は自傷行為をしない」との言葉に、深くうなずきました。

「親からもらった体を傷つけるようなことをしてはいけない」と自傷行為を道徳の観点から否定しても、その人は心を閉ざしてしまうだけなのです。


 産婦人科医や助産師が担うことの多い「命の教育」にも同じ危うさがあります。

「命は大切だ」「あなたは望まれて生まれてきた」と言っても、そもそも育てられる過程で自分は他者にとって大切な存在だということが実感出来ていない若者からすれば、「みんなは大切な存在なんだ、でも自分は違う」と余計に追いつめられてしまうそうです。

赤ちゃんを実際に抱っこさせるという命の教育もあるようですが、虐待された経験のある人は大事にされている赤ちゃんを見ると腹が立つことがあるのだと言います。


自分を大切に出来ない若者、
               友達の助けが必要


 結局、そういった命の教育で「命は大切なんだ」と思える人は、もともと大切に育てられて自分を大事に出来ている人で、1〜2割いると思われるそうでない人が置いてけぼりになってしまうのです。

本当はその1〜2割の人にこそ、届けなくてはいけないにも関わらず、です。


 生きづらさを抱えて自分を大切に出来ていない若者は、今まで裏切られてきた経験から大人というものを信用していないことが多いので、年の近い友達がどれだけそれに気付き、力になれるかによって大きく違うとのことでした。

命の教育は、メルヘンチックなものではなく、残り8〜9割の命を大切に出来る若者たちに、「周りにそういう友達がいたら力になって信頼出来る大人につないであげてほしい」ということを伝えるものとなるべきではないかというお話に、私も深くうなずきました。


 講演の後に、今まで命の教育を行ってきた方からの困惑の声があがりましたが、「教育は子どものためであって、教育を行う者の存在意義や自己満足のためではないのでは」と発言してしまいました。


 産婦人科では、性感染症や望まぬ妊娠のために若い女性がよく受診します。

実用的な体の情報だけでなく、どうすれば出会った若者たちが自分を大切にすることを手伝えるか。

時間の制約もある中、簡単なことではないと思いますが、つながりが大事という松本先生の言葉を胸に、現場でがんばってみたいと思います。

posted by 小だぬき at 00:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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