2014年05月20日

裁判員制度5年 冤罪防ぐ法整備を急げ

裁判員制度5年
 冤罪防ぐ法整備を急げ 
毎日新聞「社説」 2014年05月19日 

 裁判員制度が始まって21日で5年になる。
3月末までに全国で約6500件の裁判員裁判が開かれ、約4万9000人の国民が、裁判員や補充裁判員として裁判に参加した。

 「市民感覚」を生かしながら、まじめに裁判や被告と向き合う姿は、法曹界から高く評価されている。

 インターネット利用が広まる中で、裁判や評議に関する情報の漏えいが心配されたが、そういった事案も起きていない。
国民の司法参加は、おおむね定着しつつあるといっていいだろう。

 ただし、裁判員裁判は、死刑や無期の懲役・禁錮が言い渡せる殺人など重大事件が対象だ。

裁判員に与える心理的負担は大きく、万が一、判決後に被告の冤罪(えんざい)が明らかになれば、筆舌に尽くしがたいほどの衝撃を裁判員に与えるだろう。
裁判員制度を一層安定させるには、冤罪や誤判を防ぐさらなる法整備が必要だ。

 この5年の間に、東京電力女性社員殺害事件で被告の再審無罪が確定し、袴田事件の再審開始決定も出た。

両事件では、被告に有利な証拠をなかなか出さなかった検察の姿勢が批判された。
裁判員裁判開始前の両事件ではあるが、改めて現行の刑事司法手続きへの不安が募る。

 裁判員裁判では、公判の前に法廷外で検察と被告・弁護側が争点や証拠の整理をする手続きが実施される。
このため、確かに以前より検察の証拠開示範囲は広がった。

だが、検察の裁量は今も残り、被告に有利な証拠が必ずしも法廷に出てくるとは限らない。
そうした場合、裁判員の判断を誤らせる可能性は残る。

 取り調べの録音・録画(可視化)も警察、検察が裁判員裁判対象事件で試行的に実施しているが、取り調べ側の裁量で行う面は今も残っており、完全可視化とは言えない。

 証拠の全面開示も可視化も法制化をめぐり、法制審議会の部会で議論が進んでいる。
だが、こうしている間も裁判員裁判は日々、行われている。
政府は法制化を急ぐべきだ。

 もう一つ、袴田事件で浮き彫りになったのは、究極の刑である死刑のあり方に目を向けるべきではないかということだ。

 死刑廃止国が大多数を占める欧州の国々などが、死刑執行を続ける日本に向ける目は厳しい。

存廃はもちろん重大問題だが、現行制度を前提としても、どういったケースで死刑を言い渡すべきか確たる基準はない。
裁判員の悩みは深いだろう。

裁判員制度見直しの議論では、死刑言い渡しの評決は全会一致とすべきだとの意見もあったが、採用されなかった。

 死刑囚の処遇や執行の様子など情報公開をさらに進めるべきだ。
死刑についての議論も深めたい。
posted by 小だぬき at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする