2014年12月24日

香山リカのココロの万華鏡:リセット願望 

香山リカのココロの万華鏡:リセット願望
毎日新聞 2014年12月23日 首都圏版

一年の計は元旦にあり、などと言う。
私も子どもの頃は、正月に「早寝早起き」「毎日本を読む」などと今年の目標を習字で書いた覚えがある。

 しかし、目標が達成されたことは一度としてない。
1週間もするとまた夜ふかしになり、読むはずの本はマンガにかわった。
いわゆる三日坊主だ。
 おそらく私のような人は少なくないはずだ。

それにもかかわらず、なぜ人は新年に「目標」や「計画」を考えようとするのか。

 その理由のひとつは、誰にでも「リセット願望」があるからだろう。
とくに日本の場合、正月をとても大事にしており、前の年の悩み、失敗や挫折、人間関係のゴタゴタなどはそこできれいさっぱり消えるはずということになっている。

大掃除で家の中もきれいにして、下着なども新しいものをおろして、「生まれ変わった私」として新しい年を迎える。
「いまの私はこれまでとは違う」という気分になるのでつい、達成不可能な目標や計画を立ててしまうのだ。

 よく考えれば、12月31日が1月1日になったくらいで人が生まれ変われるわけはない。

おっとりしていた人がいきなりテキパキしたり、ケンカしていた友だちどうしがさっぱりと仲直りしたり、というほうが不自然だ。
人間は、これまでの自分を引きずり、生きてきた時間の積み重ねの上に今日という日を築いていくのだ。

 とはいえ、とくにイヤなこと、マイナスなことは「年が改まったら消えてなくなる」と思うのは悪いことではない。

診察室にも「家族に傷つけられたことがどうしても頭を離れない」と過去にこだわる人が多く訪れ、「まあ、悩みは悩みのままひとまず棚に上げて、楽しい予定でも立ててみませんか」と“悩みの小休止”を勧めることがあるが、正月はその絶好のチャンスかもしれない。

 さて、あなたの場合、古い年に置いていきたいものは何だろう。
そして、新しい年にも持っていきたいものは何か。

「春に仕事でトラブルがあったことは忘れよう。
でも、夏に旧友と再会した思い出は大切にしたい」と“仕分け”してもよいのではないだろうか。  

私は、「いろいろな暗い事件でコメントをしてそのつど重くなった気分」を今年に置き去りにし、新しい年には「若い友人が何人かできてうれしかったこと」を持って行こうかな。
「それは都合よすぎる」と言われるかもしれないが、正月が来るのだから、都合がよくたっていいのです。(精神科医)
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする