2015年12月16日

香山リカのココロの万華鏡 ・ Xマスは「あなたの日」 

香山リカのココロの万華鏡
. Xマスは「あなたの日」 
毎日新聞2015年12月15日 首都圏版

 クリスマスが近づいてきた。
診察室では「楽しみです」と言う人より「孤独だと思い知らされる」「街がにぎやかだとよけいに自分がみじめ」と顔を暗くする人のほうが多い。

 どんな言葉をかけてあげればよいのか、と思っているところに、大門義和氏という牧師から小冊子が送られてきた。
大門牧師が手づくりで長年、発行しているものだ。

 冒頭に「すべての人が貴い人であるとの宣言がクリスマス」という言葉が記されていた。
「クリスマスはイエス・キリストと、あとはハッピーな恋人や家族のものじゃないの?」と思いながら読むと、こんなことが書かれていた。

聖書にはイエスは「例外なくすべての人を照らす光」とあり、その光は人を区別したり分類したりはしない。
だから、イエスが生まれたクリスマスは、分け隔てなくすべての人にとっての喜びであり、どんな人をも尊び祝う日なのだ……。

 私のような医者は、診察室に来た人の問診をして「何の病気か」「重症度はどれくらいか」とその人を精神医学の体系にあてはめていく。
そして、診察室を出る頃にはその人をすっかり「患者さん」として扱い、「無理しないでくださいね。
ではまた来週」と送り出す。
そうやって区別、分類するのが私の仕事と言ってもよい。

 しかし、その医者としての「区別や分類」は、いつの間にか、その人が幸福なのか、孤独なのか、かわいそうなのか、といった人間的な部分にまで及んでいたかもしれない。
そして私だけではなくて、患者さん側も、自分で自分を「私には価値がない」「負け組です」などと分類しているのではないか。

 先の小冊子で私は、キリスト教では、クリスマスは孤独な人がより孤独を感じる行事ではなく、孤独だと思っている人も「あなたが生きているのはすばらしいことです」とたたえられるための日なのだ、と知った。
なるほど、と私は膝を打った。
これから12月の診察室では、「クリスマスは誰も区別されない日なんですって」と話すことにしよう。
 いや、クリスマスだけではない。お正月、各地で行われる冬のイベント、いろいろな祝日。「まわりが楽しそうだとよけいにみじめになる」と暗い顔をする人には、そのたびに「これはあなたのための日ですよ」と声をかけてみることにしたい。
まずはこのクリスマスシーズンをひとりですごしている人も、「私も貴い人間なんだよね」と笑顔になってみてはどうだろう。
          (精神科医)
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(4) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする