2016年06月09日

「非を認めぬ首相」=与良正男

熱血!与良政談
「非を認めぬ首相」=与良正男
毎日新聞2016年6月8日 東京夕刊

 先週、消費増税の再延期について「アベノミクスは思い通りに進んでいない」と率直に認めた方がよほど国民は納得するのに、非を認めようとしない安倍晋三首相の姿勢こそが参院選の争点だ−−と書いた。
「その通りだ」から「再延期はありがたい決断なのに、あなたは批判ばかりしている」まで、賛否両論、たくさんの意見をいただいた。

 このコラムを書いたのは首相が記者会見で再延期を正式表明する前である。
そして会見を聞いて、私はさらに驚いたのだ。
私の見立てをはるかに超えるものだったからだ。

 かつて「再延期はない」と断言していた点について、首相が「公約違反との指摘は真摯(しんし)に受け止める」と言いながらも、「これまでの約束とは異なる新しい判断だ」と語ったのはご存じの通りだ。

 状況が変われば公約の変更はあって構わないし、公約に縛られて失敗するより、よほどいい。ただし大切なのは変更に至った責任を認め、その理由をきちんと説明することだと従来、私は書いてきた。
ところが、アベノミクスは順調だが、世界経済のリスクに備えた「新しい判断だ」とは……。

私はこんな強引な弁明が今後、社会で横行するのを恐れる。
 首相は再延期について「参院選で信を問う」とも語り、「自民、公明両党で改選議席の過半数」を目標に掲げた。
通常「信を問う」は衆院選で使う言葉だ。
衆参同日選を見送った以上、参院選で目標を達成できなければ「信を失い、退陣する覚悟」を示したといっていい。

 だが、目標達成に必要なのは両党で61議席だ。
前回の参院選で両党は76議席を獲得しており、現状の世論調査を見れば、実はそんなに高い目標ではない。

 一方、首相の最終目標と思われる憲法改正に関して「与党で衆参で3分の2を取ることは不可能だ」とも会見で語り、改憲を選挙で強調しない姿勢をにじませた。
ただし、おおさか維新の会など改憲に前向きな勢力を含めれば、参院でも3分の2を占めるのは、まったく不可能ではないという声を政界で聞く。

 安保法制を思い出そう。
今の政権は選挙戦では意識的に語らず、勝てば一転、「すべて白紙委任された」とばかりに突き進んできた。
やはりそうした「安倍政治」そのものが争点なのだ。
                                 (専門編集委員)
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする