2016年12月04日

「ギャンブルの怖さ 世間は知らなすぎる」

「ギャンブルの怖さ
   世間は知らなすぎる」
2016年12月3日 東京新聞朝刊

 「世間はギャンブルの怖さを知らなすぎる。人が狂うんです」。

午後二時すぎ、職場のテレビで流れたカジノ解禁法案の衆院委可決のニュースを、横浜市神奈川区の男性会社員(46)は冷ややかに見ていた。
 男性は二十年近く、ギャンブル依存症で苦しんできた。
大学生のころからパチンコにのめりこみ、借金は一時三百万円に。
勝ち続けてもおもしろくない。
負けているときに「明日どうしよう」と思いながら、打つドキドキ感がたまらない。
亡くなった父の香典をくすね、妻の結婚指輪を質に入れたりもした。

狂っているのは分かっている。
でも、ブレーキが利かなかった」と当時を振り返る。

 六年前、妻がギャンブル依存症の当事者や家族を支援するNPO法人「ギャンブル依存ファミリーセンター ホープヒル」(横浜市旭区)に連絡。
ホープヒルの回復施設に住み込みながら、三年かけて治療した。

 「ギャンブル依存症の怖さは、犯罪にまで行き着くこと」。
一緒に治療していた仲間の中には、横領や窃盗で逮捕された人も。
男性もかつて、勤務先の飲食店の売上金に手を出した。
もうギャンブルには手を出していないが、今でも、ふっと「パチンコで稼ごう」という思いがよぎるという。

 カジノ解禁法案の審議に至っても、具体的な依存症対策が聞こえてこないことに、男性は不安を覚える。
「ギャンブルに対する政治家の認識は甘すぎる。
浅い認識でカジノまで解禁すれば、私のように苦しむ人を増やすのでは」と訴える。

 男性が治療していたホープヒルの回復施設では二日夜、定例のミーティングが開かれた。
理事長の町田政明さん(64)が投げ掛ける「我慢している時は、どんな気持ち?」といった質問に依存症の人たちが答え、自分の内面と向き合った。
 ふってわいたカジノ法案の採決に、町田さんは「あまりに拙速」と語る。
依存症は治らない人のほうが圧倒的に多い。ギャンブルは毒の部分もあり、人をむしばむ。
国はもうけ話ばかり強調するが、もっと社会的損失に目を向けるべきだ」と訴える。
 (中沢誠)

<ギャンブル依存症>
 ギャンブルへの欲求を抑えることが難しくなる精神疾患の一つで、借金を抱えたり家族関係が破綻したりといった問題につながる。
厚生労働省の研究班は2013年7月、全国から無作為に抽出した20歳以上の男女のうち4153人(回答率58・9%)を対象に調査を実施。
研究班は調査結果を踏まえ、ギャンブル依存症の疑いがある患者は536万人と、成人の4・8%に上るとの推計を出した。
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする