2017年01月14日

<生活保護>「受給は恥」思いつめた高齢困窮者の悲劇

<生活保護>
「受給は恥」思いつめた
高齢困窮者の悲劇
毎日新聞 1/14(土) 9:30配信

 少ない年金収入なのに、生活保護受給を「恥ずかしいこと」ととらえる高齢者が少なくありません。
申請すれば受給できるはずなのに、なぜ頼ろうとしないのでしょうか。
そこには制度を「施し」と捉える、悲しいほど真面目な国民性がありました。【NPO法人ほっとプラス代表理事・藤田孝典】

◇「生活保護をもらうなら死んだ方がマシ」
 以前ほどひどくないにせよ、申請窓口で生活状況を根掘り葉掘り聞かれる状況は変わりません。
 大学を卒業したばかりのケースワーカーや自治体職員に「家族を頼れないの?」「もうちょっと働けないの?」「なぜこんなに貯金が少ないの?」と聞かれます。
理屈は通っていますが、若者の遠慮ない質問は、長く生きた人間の最後のプライドにグサグサと突き刺さります。
 親族への扶養照会もあります。

生活保護法は、3親等以内の親族が扶養できない場合に保護を認めることになっています。
しかし、親族に困窮を知られたくない高齢者はたくさんいます。
とりわけ、子供や成人した孫ならなおさらです。

 例えば、成人した子供が困窮する親を扶養する義務については、「(子供の)社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上で、余裕があれば援助する義務」と規定されているに過ぎません。
しかし、「扶養照会で子供に困窮がばれるかもしれない」「子供の家庭生活に迷惑をかけるかもしれない」と親が考え、申請をためらわせるハードルにもなっています。
 また、困窮当事者には、保護されることを「恥ずかしい」と感じる意識が強くあります。

私たちが、「生活保護で当面の危機を回避しましょう」「恥ずかしい制度ではありませんから」と提案しても、「いや、恥ずかしい制度ですよ。
生活保護受けるぐらいなら、死んだ方がマシです」とか、「生活保護受けるようになったら人間終わりです」と言う人が多いのです。
 この意識は年齢に関係ありません。
会社を休職した男性(24)に保護を進めたところ、彼はこう言いました。
 「こんな若い僕が、生活保護をもらえるはずがないじゃないですか。本当に受給できるんですか。それ以上に、もらったら申し訳ないじゃないですか」  

◇働けなくなったらすべて自己責任?
 生活保護制度は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定する憲法25条の理念に基づいて運営されています。
条件さえ満たせば、無差別平等に保護を受けることができます。
困窮の原因は問われません。
 にもかかわらず、制度利用に対するバッシングや批判は止まることがありません。
私たちの意識のなかに、生活保護とは自立していない人が受けるもの、あるいは怠けていた人が受けるもの、計画性がない人たちが受けるものという感情があるのでしょう。

 勤勉で真面目な国民性ゆえに、一生懸命計画的に生活してきた人ほど、保護を必要とする人たちを枠からの逸脱と見なす傾向が強いように思えます。
私たちのような支援団体やソーシャルワーカーには、日本は過度に自立を求める社会、と映ります。その意識は保護を必要とする側も同じです。

 私たちが一緒に生活保護を申請した70代の男性は、無年金状態でした。
困窮していた彼はそれでも「ほんとに嫌だ。生活保護だけは嫌だ」と言い続けました。
 「生活保護以外の制度は? お金を貸してくれる銀行はないの?」と何度も尋ねるので、「こんな所得で貸してくれる銀行なんてないですよ」と言うと、今度は「じゃあサラ金から借りたい」と言います。
「貸してくれるはずがないでしょう」と説得し、ようやく申請に行きました。
 市役所のケースワーカーですら「こんなに困るまでがまんしなくていいですよ」と言うほどの困窮ぶり。
男性は「ありがとう」と涙を流しながら申請書類を書きました。
でも結局、自殺を図ってしまいました。

 アパートに残された遺書には、「この年になってお国の世話になるのは本当に申し訳ない。だから命を断ちます」と書いてありました。
ケースワーカーに聞いたところ、保護費を受け取りにくるたびに「ほんとに申し訳ない、申し訳ない」と頭を下げ、謝っていたそうです。
 「早く仕事を見つけますから」と謝る男性に、「大丈夫ですから、もう見つけなくていいんです。
年金だと思って暮らしてくださいよ」とケースワーカーが言葉をかけても、彼は「いやあ、私は年金を掛けてなくて、本当に自分の落ち度です」と、最後まで自罰的態度を崩しませんでした。  

「まさか自分が働けなくなるとは、夢にも思わなかった」
 そうなった時、あなたはどうしますか。

◇生活保護の申請方法は
 生活保護の申請は全国の福祉事務所で受け付けています。
事務所は市役所や分庁舎内にあることが多く、「福祉課」「保護課」「社会福祉課」など、部署名は自治体によって違います。
 申請後14日間の調査期間があり、ケースワーカーによる家庭訪問
▽預貯金、保険、不動産などの資産調査
▽扶養義務者に扶養が可能かどうかを確認する通知書送付(DV被害者など特別な理由は除く)
▽年金や収入などの調査
▽就労できるかどうかの調査−−が行われます。

申請から原則2週間以内に受給の可否が決まります。
生活保護法24条は「申請があったときは保護の要否、種類、程度と方法を決め、申請者に書面で通知する」と定めています。
申請を受理しないのは「保護申請権」の侵害とみなされます。
しかし実際には、申請意思を持つ人を窓口で追い返したり、相談扱いにして受理しなかったりする「水際作戦」も残っています。
posted by 小だぬき at 11:34 | Comment(2) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

野党の選挙共闘 小異残して大同に付け

野党の選挙共闘 
小異残して大同に付け
2017年1月13日 東京新聞「社説」

 年内にも想定される衆院解散・総選挙。
「安倍一強」の政治状況に野党はどう臨むべきか。
政権批判の民意集約には、野党候補の絞り込みが必要だ。
小異を残しつつも、大同に付かねばならない。

 第二次安倍内閣発足から四年。
昨年十二月の内閣支持率は54・8%と、前回十一月より5・9ポイント下がったとはいえ依然、高水準だ。
自民党総裁としての任期は三月の党大会で「連続三期九年」に延長され、次の総裁選に勝てば、長期政権も視野に入る。
首相にはまさに「わが世の春」である。

 しかし、安倍政権の下での国会は、惨憺(さんたん)たる状況だ。
 昨年の臨時国会では年金支給額を抑制する法律の採決を、議論を打ち切って強行した。
現行の刑法が賭博として禁じるカジノを合法化する法律の審議も強引に進め、会期を延長してまで成立させた。
 さかのぼれば、多くの専門家らが憲法違反と指摘した「集団的自衛権の行使」を認める安全保障関連法の成立も強行した。
 今月二十日に召集予定の通常国会では、問題点が多く、過去三度廃案になった「共謀罪」を盛り込んだ法案の成立も目指す。

 反対意見に耳を傾けない国会運営がまかり通るのは、与党が衆参両院で圧倒的多数を占めているからだ。
状況を変えるには、野党が選挙で議席を増やすしかない。

 昨年夏の参院選で、民進党など野党四党は、三十二の改選一人区すべてで候補者を一本化して選挙戦に臨み、一定の成果を上げた。
 暴走する安倍政治に歯止めをかけるため、民進、共産、自由、社民の野党四党は次期衆院選での共闘に向けた協議を急ぐべきだ。
 多くの候補者を擁立する民進、共産両党間では二百近くの小選挙区で候補者が競合する。
 民進党の支持組織である労働組合の連合では、共産党との共闘に慎重論が根強いが、野党候補が競合したまま衆院選に突入すれば、与党が漁夫の利を得るだけだ。
 どうしたら政権批判票を最も多く集約できるのか、という観点から候補者の絞り込みを進めてほしい。

 衆院選は政権選択選挙である。
与党側は、野党共闘を「理念も政策も違う選挙目当ての野合」と批判するだろう。
 野党の議席を増やし、政権の暴走に歯止めをかけることは共闘の大義に十分なり得るが、主要政策では可能な限り、安倍政治に代わる選択肢を示すことが望ましい。
その努力こそが、野党共闘をより力強いものとする。
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする