年金はヤバくない?
「年金なんて払わなくていい」は
サイテーな大人の意見
2017.01.16 messy(川部紀子)
こんにちは。
ファイナンシャルおねえさんこと、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。
この国では、年齢を問わず老後のお金の心配をしている人が多いようです。
先日も「老後不安」を口にしている新成人がテレビに映っていました。
メディアでも、不安をあおるかのように、「老後難民」「下流老人」といった言葉が続々登場し、公的年金はまるで悪者扱い。
日本中が不安に思うのも無理はありません。
確かに、公的年金と平均的な老後の日常生活費を比較すると5〜6万円足りないことがデータからわかります。
実際60代の方も、申し合わせたように「毎月5万円貯蓄を切り崩しています」と言っているのを耳にします。
今回は、若い世代の老後、そして年金は本当にヤバいのかを考えてみたいと思います。
サイテーな大人の意見は
年金なんて元が取れないので払わなくていい
20歳になったばかりのフリーターから相談を受けたことがあります。
20歳から国民年金を払うことになるわけですが、母親が「お金もないんだし、元が取れないんだから、払わなくていい」と言ったとのこと。
この母親は巷で聞かれる意見を採用しているだけなので、個人を責める気はありませんが、残念ながらこれはサイテーな大人の意見です。
私が「サイテー」というのはどこを指していると思いますか?
「払わなくていい」という部分はもちろんなのですが、それよりも「元が取れない」の部分です。
日本の年金制度は「世代間扶養」という仕組みで成り立っています。
これは、今あなたが払っている年金保険料は、年金受給者、つまり現在のおじいちゃんやおばあちゃんのためのものなのです。
自分で積み立てたお金を老後に受け取るわけではありません。
そもそも、日本の年金制度には、元を取るとか取れないといった概念は一切含まれていません。ですから、私は「年金で元を取る/取れない」の議論が大嫌いです。
少子高齢化の時代ですから、将来の年金を支える若者が少なくなっていくことはすでに確定しています。
であれば、受け取る年金の額が今より少なくなることは当たり前の話なのです。
お金がないから国民年金をブッチするのは、
おバカ過ぎ!
お母さんの「お金もないんだし」という発言については、それぞれの事情もありますし、本当に苦しいときもあるでしょうからとがめられません。
しかしその場合でも、なにもせずただただ「未納」のままでいるのは絶対にNGです。
かならず「猶予」「免除」の手続きをしてください。
お金がないという事情が認められれば、払っている人たちと同じグループに入ることができます。
同じように国民年金保険料を支払っていなくても、ブッチ(未納)と猶予・免除では意味が大きく違います。
払っている人たちと同じグループに入ることがとても大事なのです。
このグループに入ると、たとえ国民年金保険料を払っていなくても老後に年金を受給できる可能性に繋がります。
また、もしものときの保険の可能性にも繋がります。
年金というと、老後の年金だけをイメージしがちですが、病気やケガで障害状態になった場合の障害年金、自分が死んでしまった時の家族への遺族年金といった保険の側面もあります。
実際に障害年金や遺族年金で助けられている人もたくさんいます。
自分だって、お世話にならない保障はありません。
そして、猶予・免除の手続きをしていれば、これらを受給できる可能性が出てくるのです。
年金には、老後だけでなく、
障害、死亡のときの保険の要素も含まれています。
積立貯蓄のように元を取る/取れないの議論がやはり無意味であることがお分かりいただけるかと思います。
もし国民年金保険料を支払えないという方は、年金関係のハガキに書いてある連絡先に電話等で確認してから「猶予」や「免除」手続きに出向きましょう。
郵送でできる場合もあります。
面倒くさいと思うかもしれません。
でもその少しの面倒を乗り越えることで得られる価値はとても大きいのです。
目指す境地は
「意外と悪くないじゃん、日本の年金」
未納者に対して厳しい仕組みに変わることも決まっています。
未納者には最初に「督促状」が届きます。
そこで指定されている期限内に保険料を払わなかった場合には、給与、預貯金、自動車などの財産が差し押さえられます。
これまでは年間所得350万円、未納月数7カ月以上が差し押さえの対象でしたが、平成29年4月からは年間所得300万円以上で未納月数13カ月以上が対象となります。
既に差し押さえをされた人もいますが、4月からは今まで以上に増えると思われます。
さらに平成30年からは年間所得300万円以上で未納月数7カ月以上と対象が拡大する予定です。
残念ながら、私たちがこの国の法律を簡単に引っくり返すことはできません。
もちろん望ましい方向に制度を変えていくことも重要ですが、日々の生活を問題なく送るためには、いったんこの国に生まれた宿命として今の制度を受け入れて、いいところを見つける方がずっと気持ちよく年金保険料を払っていけると思います。
現在の年金制度は、おじいちゃんやおばあちゃんたちを支えることができ、自分や家族の保険の要素もついていて、老後はどんなに長生きしても死ぬまで一生受け取れる、というものです。
長生きすれば、ものすごい金額を受け取ることができるかもしれません。
実際に、現在の年金受給者の夫婦は平均して生涯で6000万円以上を受け取っています。
悪者扱いをされているわりになかなかの金額だと思いませんか?
今後、受給額は減るとは思いますが、それでもトータルでは自分で積み立てて用意できないほどの金額を受け取れる可能性はとても高いです。
「元を取れないどころか、この国の年金が破たんするのではないか」という人もいます。
でも年金が破たんする可能性よりも、あなたが長生きをして「元を取る」可能性の方がよっぽど高いと思います。
過去と比べると実際ちょっぴり寂しさを覚える年金ではありますが、今は今で、未来は未来なので、過去と比べても無意味です。
勉強すればするほど「意外と悪くないじゃん、日本の年金」と感じるようになると思います。
「年金なんて元が取れないので払わなくていい」はサイテーな大人の意見だということをしっかり覚えておいてください。