新見正則「医療の極論、常識、非常識」
「安いジェネリック医薬品はトク」
への根本的疑問…
先発品と「まったく同じ」は誤解?
2017.02.24 Business Journal
文=新見正則/医学博士、医師
今回はジェネリック医薬品のお話で盛り上がっています。
まず“常識君”の解説です。
「ジェネリック医薬品とは『後発薬』ともいわれています。
製薬会社が開発した医薬品は『先発薬』といわれますが、その特許が切れた後に、同じ成分のものを作製し、そして生物学的同等性試験に合格したものが、ジェネリック医薬品として販売されます。
価格は先発薬の70%以下で、安いものでは20%近いものまであります」
そこで、“極論君”の意見です。
「この前、薬局でもジェネリック医薬品を勧められました。
薬剤師の先生は『今飲んでいる薬と同じ成分だから、安いほうがいいですよ』と言っていました。
そこで変更できるものはすべてジェネリック医薬品にしてもらいました。
これからもすべてジェネリック医薬品を飲もうと思っています」
“非常識君”が質問します。
「本当にジェネリック医薬品は、先発薬と同じだと思っているのですか?」
極論君の答えです。
「薬剤師の先生が『まったく同じ成分だから』と言っていましたよ」
非常識君のコメントです。
「ジェネリック医薬品は先発薬の特許が切れた後に、先発薬を真似てつくられています。
もちろん特許で押さえられていた部分は同じです。
正真正銘のマネをしているわけですからね。
ところが、それ以外の部分は、つまり材料や製造方法は違うかもしれませんよ。
例えていえば『あんパン』です。
僕はあるメーカーの『あんパン』が大好きです。
ジェネリック医薬品とは、『あん』は老舗のメーカーと同じですが、『パン』には一切同じものという保証はありません。
また、ちょっとした味付けの『胡麻』も大切ですよね。
つまり、ジェネリック医薬品とは主成分が同じで、ほかは違う可能性があるのです。
つまり薬剤師の先生の『ジェネリック医薬品は先発薬とまったく同じ』という謳い文句は、まったく間違いですよ」
ジェネリック医薬品と先発薬は別物
常識君のコメントです。
「でも価格が安いのです。それはすごい魅力です」
非常識君の意見です。
「まずどれぐらいの価格差があるかをしっかり聞いて、そして同じものではないという認識を持って、ジェネリック医薬品を選ぶか、先発薬を選ぶか決めればいいのです。
そして実際にジェネリック医薬品を飲んでみて効果に差がなければ、安いほうがいいでしょう。しかし、効果に差があると思えるときは、先発薬がいいと思います。
極論君が質問します。
「有効かどうかは、認可される段階で確認されていないのですか?」
非常識君が答えます。
「ジェネリック医薬品が認可されるには、生物学的同等性試験をクリアすればいいのです。
健康人でジェネリック医薬品と先発薬を飲んだときに、主成分の血中濃度の変動が同じなら認可されます。
つまり、他のいろいろな要素は一切斟酌されていませんし、ましてや有効性に関しては論じていません」
極論君がコメントします。
「ジェネリック医薬品と先発薬が同じでないことはわかりました。
しかし、日本の医療費は切迫しています。
ですから、安い薬剤を使用したほうが医療経済のためと思っています。
ですから、ジェネリック医薬品で遜色ないときは、そちらを使用したいと思っています」
常識君のコメントです。
「つまり効果が同じで相当安いジェネリック医薬品が流通すればいいのです。
決してジェネリック医薬品を否定するわけではありませんし、むしろ推進すべきと思っています。
しかし、ジェネリック医薬品が先発薬とは実は別物だと知っていて無理に勧める薬剤師の先生もいるでしょうし、もしかしたらまったく同じだと信じ込んで勧めている薬剤師の先生もいるかもしれません。
大切なことは患者さんが正しい医療情報を持って、そしてできる限り薬剤は減らして、そして同等の効力であればジェネリック医薬品を使用することだと思っています」
今日はなんとなく非常識君に軍配が上がりそうな内容でした。
●新見正則(にいみ・まさのり)
1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年〜 慶應義塾大学医学部外科
1993〜1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年〜 帝京大学医学部外科に勤務 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。
著書多数。
なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。
大学病院は紹介状が必要です。
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