2017年03月07日

「まさか自分が」若年性認知症に…働き盛りで発症、急に記憶が飛ぶことも

「まさか自分が」若年性認知症に…
働き盛りで発症、
急に記憶が飛ぶことも
読売新聞(ヨミドクター) 3/6(月)

 認知症というと、高齢者を連想しがちだが、40〜50歳代の働き盛り世代でも発症する。
「若年性認知症」と呼ばれるが、早期診断につながりにくいうえ、支援の少なさも指摘されている。
 都内で一人暮らしをする男性(60)は59歳の時、脳の一部である前頭葉が萎縮し、若年性認知症の疑いがあることが分かった。
 1年ほど前から、「何かおかしい」と自覚はあった。
街を歩いていて、急に記憶が飛び、気がつくと、別の場所にいた。
1日分の記憶がないこともあった。
久々に訪ねてきた姉が、電気やガスなど公共料金の請求書が何か月もたまっているのを見つけた。姉も「病気では」と心配し、男性は病院の受診を決意した。

 総合内科や神経内科では分からず、精神科で脳の画像を調べる磁気共鳴画像(MRI)検査などをして脳の萎縮が分かった。
約20年に及ぶ母親の介護を終えたばかりで、「まさか自分が認知症になるとは……」と振り返る。
 進行の程度は軽く、予定や出来事を紙に書き留めることで生活に大きな支障はなくなった。
 だが、勤めていた会社は退職。
若年性認知症に理解のある警備会社で今は週3〜4日、警備員として働く。
休日は、趣味の会などに出向き、姉とも毎月顔を合わせる。
「進行を防ぐためにも、仕事を続け、人と接する機会を持つようにしている」と男性は話す。

精神障害と誤診も
 若年性認知症の全国調査は行われていないが、茨城県など5県2市に地域を限定した厚生労働省の2009年の調査では、全国で推計約3万8000人。
男性に多く、発症の平均年齢は51歳前後という。
 若年性認知症の専門外来を受け持つ順天堂大の新井平伊(へいい)教授は、「働く世代は仕事に支障が出てくるので、自分で異変に気づきやすいはず。
ただ、まさか認知症とは思わず、医療機関の受診が遅れることもある」と指摘する。

 診察を受けても、初期の頃は、もの忘れよりも、性格の変化やうつ病のような症状が目につき、精神障害と間違われるケースもある。
新井教授は、「周囲に気づかれるようなら、進行している可能性がある。
異変を感じた時点で認知症疾患医療センターなど専門医を受診してほしい」と促す。
 働き盛りの世代のため、発症後は経済的な問題も起きやすい。
要件を満たせば傷病手当金や障害年金、雇用保険の失業給付を受け取れる場合もある。
認知症介護研究・研修大府センター(愛知県)が運営する若年性認知症コールセンターのホームページでは、制度の情報をまとめた「若年性認知症ハンドブック」を公開している。

支援を行う介護事業者も
 最近は、若年性認知症に特化した支援を行う介護事業者も出てきた。
 埼玉県の三芳町社会福祉協議会が昨年7月から、デイサービスセンター「けやきの家」で始めた事業もその一つ。
家庭の事情などで放課後の居場所がない子どもに無料で食事を提供する「子ども食堂」も運営しており、夕食作りをしたり、卓球やバレーで一緒に遊んだりしてもらっている。
現在は58〜64歳の男女4人が週1〜2回利用する。

 「けやきの家」の管理者の内城(ないじょう)一人さんは、「体力もあり、サービスを受けるばかりでなく、役割を持つことを望む人は多い。
地域貢献とリンクすることで、『役に立ちたい』という思いに寄り添うことができれば」と話す。  ただ、こうした場所はまだ各地で少ないのが実情。
40歳以上でも使える介護保険のデイサービスは、高齢者を想定したものが多いためで、障害福祉サービスも含め、発症後の居場所づくりも課題となっている。
     (手嶋由梨)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする