2017年03月23日

人間ドックとがん検診の真実

新見正則「医療の極論、常識、非常識」
【人間ドックとがん検診の真実】
無意味で、かえって「悪い事態」のケースも?
2017.03.22 Business Journal

 今回は、人間ドックや検診のお話です。

“極論君”は「早期発見は何より大切だから、機会あるごとに人間ドックや検診は受けるようにしている。少なくとも毎年受けている」という意見の持ち主です。  

一方で“非常識君”は「人間ドックや検診はまったく受けずに、何か調子が悪いときに病院を受診する」というポリシーです。

“常識君”の解説です。
「まず健診と検診がゴチャゴチャにされています。
健診は健康診断の略で、健康でない人を幅広く拾い上げることが目的です。
検診は特定の病気を発見することが目的で、がんを見つけるのであればがん検診という文言が使用されます。
健診には40歳から74歳の公的保険加入者を対象とする特定健診や、学校健診、職場健診などがあります。
そうすると本人の希望で行う人間ドックも健康診断に含まれますが、人間ドックでも特定の病気をターゲットにすれば検診の意味合いが強くなります。
また、病気の手前で見つけようという『一次予防』と、病気を早く見つけようという『二次予防』という見方から考えると、健診は主に『一次予防』、検診は『二次予防』に強く関連します」  

極論君の意見です。
「検診と健診の違いよりも、僕は長生きしたいのです。
ですから、病気になりたくないし、病気があれば早く治すことがよりよい選択肢と思うので、可能な限りたくさんの健診や検診を受けるのです。
そして人間ドックには毎年欠かさず行って、すべてのオプション検査をお願いしています」  

非常識君の意見です。
「病気を早く見つけても、症状が出てから見つけても、予後にほとんど差がないということを聞いたことがあります。
ですから、人間ドックには行ったことがないし、また地方自治体から来るがん検診などのお誘いはすべて無視しています」  

常識君のコメントです。
「確かにカナダの大規模臨床研究で乳がん検診を行った群と、行わなかった群で生命予後に差がないという結果もあります。
また、がん検診の普及で早期の段階のがんが見つかる頻度は上昇しているが、進行したがんが見つかる頻度は変わらないというものもあります。
それらの結果を早く見つけても御利益(ごりやく)が少ないと解釈する人もいます。
そうであれば、症状が出てからすぐに病院を受診すればいいので、検査に必要な費用や時間が無駄になります」

陽 性  

非常識君の意見です。
「がん検診などでは、がんと疑われて、しかし精密検査の結果、がんでないという人が少なからず生じます。
擬陽性ということです。
すると、『がんでなくてよかった』という結論ですが、実は検査をしなければ、こんな無駄な時間とお金は不要だったということになります。
そして、何よりがんではないかとハラハラして過ごす日々がなんと無駄であったことでしょう。そして、この時間が人生のなかでとんでもないストレスを感じた無益な日々ということになります。
むしろ、この擬陽性が最大の問題だろうと思っています」  

極論君の意見です。
「擬陽性がストレスを生じることに異論はありません。
しかし、毎年検査を受けていれば、そして異常がなければ、安心なのです」  

非常識君の追加意見です。
「むしろ、人間ドックや健診で異常がないと言われて、かえって無理を続ける人が少なからずいます。
そうであれば、人間ドックや健診を受けるよりも、日常生活の管理、いわゆる養生を心がけたほうが、長生きするようにも思えるのですが」  

常識君のコメントです。
「健康に注意を払うことは大切です。
ですからそんな観点から、人間ドックや健診を受ければいいのではないでしょうか。
治療手段がない病気や、死ぬまで放置しても問題ない進行の遅いがんなどは見つからないほうがいいかもしれません。
しかし、医療は進歩していますので、早期発見で命拾いするがんも、また疾病もどんどんと増えています。
ですから、あまり極端なことを言わずに、適切に人間ドックや健診を利用すればいいのではないでしょうか。
何より、調子が悪いときには早急に病院を受診するべきです。
また、どんな項目をどのくらいの頻度で受けるかは、いろいろなことを気軽に話せる『かかりつけ医』の先生と相談してください」

(文=新見正則/医学博士、医師)
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posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(2) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする