2017年03月28日

なぜ安倍昭恵夫人の言動は「軽い」のか? 神さまに呼ばれ「自分探し」

なぜ安倍昭恵夫人の言動は
「軽い」のか?
神さまに呼ばれ「自分探し」
2017.3.27 dot (熊澤志保)

 左かと思えば右、行動理念はスピリチュアル──。
奔放すぎる言動に、永田町も世間も震撼している。
アッキーこと安倍昭恵とは何者なのか。

「なんでこんなに私は注目を集めてしまっているんだろうって、すごく戸惑っているんです」  3月7日、東京都文京区で行われたイベントに出席した彼女は、こう語った。
 安倍昭恵さんといえば、首相夫人でありながら、沖縄を訪れ、防潮堤に異を唱え、反安倍の人とも記念撮影する、「家庭内野党」ではなかったか。

その彼女がなぜ、右派的思想の学校法人の名誉職を受けたのか。
 辻元清美衆院議員は言う。
「彼女の一連の言動は、パーソナリティーの問題であるという見方と、戦略的なものという見方があります。
私自身、後者ではないかと考えていましたが、今回その認識を深めました。
首相夫人が園児に教育勅語を素読させる学校法人の名誉校長であったことは、『日本は軍国主義に回帰している』と海外でスキャンダラスに報じられ、明らかに国益を損なっています」

 首相夫人が公人か私人かについて、官邸は「私人である」との見解を崩していない。
 首相夫人には非常駐の職員1人がつき、首相外遊への同伴などを補佐してきた。
だが、昭恵さんには、常駐2人、非常駐3人、計5人の職員がついていた。
「いつ、誰が決めたのか。
5人もの国家公務員をスタッフにつけながら、私人であるという理屈は通用しません」(辻元議員)

●名刺には事務所と自宅
 AERAでは、これまでに複数回、昭恵さんのインタビューを掲載してきた。
彼女の名刺に肩書はなく、「安倍昭恵」とだけ記されている。
連絡先は、安倍晋三事務所と自宅だ。

 日本マナー・プロトコール協会理事であり、外務省の儀典官室で数多くの国賓・公賓の接遇をしてきた寺西千代子さんは、こうしたスタイル自体は、「時代に即している」と語る。
「公人の配偶者であれ、一個の独立した人間として活動するケースが増えています」
これまで日本の要人の妻は表舞台に出るケースはまれだった。
だが、欧米では夫婦随伴が基本だ。
夫婦で意見が異なることもあり、来日中はそれぞれ興味に沿った日程が組まれることもある。
ドイツのシュミット元首相夫妻などは、「夫婦で異なる価値観を持ち、尊敬しあう関係が印象的だった」という。

 昭恵さんのあり方は、従来の日本的な慣習から脱却したという点で画期的だ。
だが、ふるまいについては、どうか。
 東京工業大学教授で政治学者の中島岳志さんは言う。
ファーストレディーは選挙で選ばれたわけではなく、政治的正当性を持ちません。
政治的な言動は限定的に行い、節度を保つのは世界の常識です
「ファーストレディー」のふるまいに、求められるものとは何か。
菅直人元首相の妻、伸子さんに話を聞いた。

●あまりに子どもっぽい
 伸子さんが、首相夫人時代に引き受けた講演は数回だけ。
依頼は多く舞い込んだが、事務所が彼女の意思を確認し、ふるいにかけていた。
政治家の周囲には様々な人が集まってきます。
中にはとんでもないことを頼む人も、利用しようとする人もいます。
もっと気をつけたほうがいいと思いますよ」(伸子さん)

 伸子さんが「理解不能」と断じるのは、昭恵さんがしばしば夫の了承を得ず行動している、と報じられていることだ。
「私が表に出るときは、必ず夫の耳に入れていました。
夫に反対されても、思いがあればやることもありますが、何も話さず受けることは考えられない。
私の行動でも、必ず政治家である彼に影響がいきますから」

 伸子さんは昭恵さんの行動について、「軽い」と指摘する。
冒頭の発言がその証左だ。
ものごとをあまり考えない。
非常に子どもっぽい方のように感じています
 しかし、昭恵さんの心情には一定の理解も示す。
自分が行けば、周囲が喜んでくれる。
素直に楽しかったんでしょう。
私は疑り深いですから、様々な腹づもりの人がいると思って周囲を見ますけれど」

「神さまに呼ばれた」
 昭恵さん本人の理念は、極めてシンプルだ。
2015年の著作『「私」を生きる』(海竜社)には、第1次安倍内閣が終わった07年、「心に決めた」こととして、こう記されている。
「五十歳からの人生に向けて、安倍晋三の妻としてより、一人の女性、安倍昭恵としてどう生きるかを考えたい」
 前出の中島さんは言う。 「昭恵さんは、森永製菓創業家に生まれ育った、超お嬢様です。
40歳を過ぎて、あまりに遅い自分探しを始めました。
大学院に通い、ミャンマーに行き、11年6月には山口県に昭恵農場を開きます。
同時にスピリチュアルな世界に関心を持ち、関係を深めていきます。
特徴的なのが、対談などに頻出する『神さまに呼ばれた』といった表現です

 ナチュラリストを突き詰めて、「日本の伝統」にぶつかるのは、よくあることだという。
「私たちが彼女に違和感を抱くのは、右派的思想と左派的思想が混在しているから。
しかし、彼女にとって、なんら矛盾はありません。
スピリチュアリズムを入り口に、従来の右や左とは違う軸で動いているのです

 中島さんが危惧するのは、安倍昭恵本人ではなく、こうした安倍昭恵的なもの──「安倍昭恵現象」だという。
「1960年代、感性を重視するヒッピー文化が米国から流入し、エコ運動などと融合して左派の一翼を担ってきました。
この層が、土着回帰から日本伝統礼賛にハマる流れができつつある。
昭恵さんはその象徴です。
戦前の日本の超国家主義の担い手は、ゴリゴリの右派ではなく、実はこうした層でした。
藤村操のような自分探しをして煩悶した青年たちの回帰先が、超国家主義だったのです」

 昭恵さんは今、何を思うのか。
 昭恵さんが開いた東京・神田の居酒屋の名はUZU。
「渦を起こしていきたい」と、日本神話のアメノウズメにあやかって名づけた。
かつてAERAに語ったように、彼女とその夫に「天命」があるというなら、踊り子として踊ることが自身に任じた「天命」なのか。
間違いなく、渦中に彼女はいる。
(編集部・熊澤志保)

※AERA 2017年4月3日号
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posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする