<通常国会>失言、疑惑、隠蔽三昧
「安倍1強」ゆがみ露呈
6/16(金) 21:42 毎日新聞配信
◇政権、強引に国会「閉会」
第193通常国会は16日、事実上閉会した。
安倍政権が最重要法案と位置づけた改正組織犯罪処罰法は参院法務委員会の採決を省略する乱暴な国会運営によって成立した。
5カ月間の会期中は政権側の疑惑や失言が相次ぎ、その影響を抑えようと、情報隠蔽(いんぺい)と強弁が繰り返された。
常に安倍晋三首相の意向をそんたくして動く与党と官僚。
「安倍1強」のゆがみがあらわになった国会だった。
【政治部編集委員 平田崇浩】
国会が開会した1月はトランプ米政権の誕生を注視する緊迫感に包まれていた。
首相が訪米した2月、国会では二つの疑惑が政権を襲った。
南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自衛隊の日報隠蔽と学校法人「森友学園」の国有地取得を巡る政府対応が問われた。
「私や妻が関わっていたら首相も国会議員も辞める」。
森友問題の国会答弁で首相はたんかを切った。
その首相を守るため、夫人付職員の財務省への問い合わせは「個人」の行為だったなどと政府は強弁を重ねた。
「働きかけて決めているのであれば責任を取る」。
3月には学校法人「加計学園」の獣医学部新設に絡む疑惑も浮上し、首相は関与を全否定した。その後、「総理のご意向」などと記した文部科学省の内部文書も見つかったが、政府は閉会直前まで文書の存在を否定する強弁を続けた。
「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法の成立を政権側は強引に急いだ。
野党からの加計問題追及に幕を引く「加計隠し」だ。
会期延長を回避するために委員会採決を飛ばした暴挙が日本の民主主義の歴史に刻まれた。
◇長期政権におごり
天皇陛下の退位を実現する特例法にめどがついたタイミングで、首相は憲法改正の加速へとかじを切った。
「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」。
5月3日の憲法記念日、首相は改憲派集会に寄せたメッセージで、憲法に自衛隊を明記する「9条加憲」を提起した。
衆参両院憲法審査会の頭越しで首相が改憲方針を表明したことに野党は反発した。
自民党は「国防軍」を明記した改憲草案を発表済みだが、首相の意向に沿って年内に改正案をまとめる方向に転換。
来年の通常国会での発議も視野に「安倍改憲」が始動した。
今国会中には今村雅弘復興相と務台俊介内閣府復興政務官が失言で辞任し、東日本大震災からの復興に取り組む政権の姿勢に疑問の目が向けられた。
中川俊直経済産業政務官は不倫問題で辞任。
いずれも政権のリスクを減らす更迭人事だった。
首相の意向に逆らわず、そんたくするのが政権内のならいとなっている。
「安倍1強」であるがゆえに批判を許さない雰囲気の強まった国会だった。
野党の批判を封じるためには情報を隠し、強弁を弄(ろう)し、議論もさせない。
長期政権のおごりが後味の悪さを残し、18日の会期末を迎える。