2017年06月23日

「平和の詩」に上原愛音さん(宮古高校3年) 全戦没者追悼式で朗読

「平和の詩」に
上原愛音さん(宮古高校3年)
 全戦没者追悼式で朗読
2017年(平成29年) 6月22日 沖縄タイムス

 沖縄県平和祈念資料館(原田直美館長)は9日、第27回「児童・生徒の平和メッセージ」の入賞作品を発表した。
23日の沖縄戦全戦没者追悼式で朗読される「平和の詩」には、高校生の部詩部門で最優秀賞に輝いた宮古高校3年生、上原愛音(ねね)さんの「誓い〜私達のおばあに寄せて」が選ばれた。

追悼式は糸満市の県平和祈念公園内で営まれる。
 同資料館の担当者によると、上原さんは小さい頃から周囲のおじいさんやおばあさんから聞いた話や、学校での平和教育などで学んだ「戦争は悲惨なんだ」との思いを発信しようと、作品に込めたという。
 また、県内5カ所とハワイで開催する展示会の告知ポスターには、高校生の部図画部門で最優秀賞の知念高校1年生の久手堅彰哉君が描いた「再生の大地」が選ばれた。
悲惨な戦争から立ち直り、繁栄と清らかな世界になるようにと願う気持ちを込めた。
 図画・作文・詩の3部門に127校から計3067点の応募があった。
優秀作品などは23日から同資料館を皮切りに、計6会場で開催される巡回展で展示する。

誓い〜私達のおばあに寄せて
 宮古高校3年 上原愛音

今日も朝が来た。
母の呼び声と、目玉焼きのいい香り。
いつも通りの 平和な朝が来た。
七十二年前 恐ろしいあの影が忍びよるその瞬間まで
おばあもこうして 朝を迎えたのだろうか。
おじいもこうして 食卓についたのだろうか。
爆音とともに この大空が淀んだあの日。
おばあは 昨日まで隠れんぼをしていた
ウージの中を 友と歩いた砂利道を
裸足のまま走った。
三線の音色を乗せていた島風に
鉄の臭いが混じったあの日。
おじいはその風に 仲間の叫びを聞いた。
昨日まで温かかったはずの冷たい手を握り
生きたいと泣く 赤子の声を抑えつけたあの日。
そんなあの日の記憶が
熱い血潮の中に今も確かにある。
決して薄れさせてはいけない記憶が
私の中に 私達の中に 確かに刻まれている。
少女だったおばあの 瞳いっぱいにたまった涙を
まだ幼かったおじいの 両手いっぱいに握りしめた
あの悔しさを 私達は確かに知っている。
広がりゆく豊穣の土に芽吹きが戻り
母なる海がまた エメラルドグリーンに輝いて
古くから愛された 唄や踊りが息を吹き返した今日。
でも 勇ましいパーランク―と 心臓の拍動の中に
脈々と流れ続ける 確かな事実。
今日も一日が過ぎゆく。
あの日と同じ刻ときが過ぎゆく
フェンスを飛びこえて 締め殺されゆく大海を泳いで
癒えることのない この島の痛み 忘れてはならない
民の祈り
今日響きわたる 神聖なサイレンの音に
「どうか穏やかな日々を」
先人達の願いが重なって聞こえる。
おばあ、大丈夫だよ。
今日、私達も祈っている。
尊い命のバトンを受けて 今 祈っている。
おじい、大丈夫だよ。
この島にはまた 笑顔が咲き誇っている。
私達は 貴方達の想いを
指先にまで流れるあの日の記憶を
いつまでも 紡ぎ続けることができる。
誓おう。
私達はこの澄んだ空を 二度と黒く染めたりしない。
誓おう。
私達はこの美しい大地を 二度と切り裂きはしない。
ここに誓おう。
私は、私達は、 この国は この世界は きっと
愛しい人を守り抜くことができる。
この地から私達は 平和の使者になることができる。
六月二十三日。
銀の甘蔗(かんしょ)が清らかに揺れる今日。
おばあ達が見守る空の下 私達は誓う。
私達は今日を生かされている。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする