2017年09月06日

「専門バカ」になると真実が見えなくなる 井沢元彦と予測する「日本の未来」

「専門バカ」になると
   真実が見えなくなる
井沢元彦と予測する
  「日本の未来」
2017.9.6 東洋経済オンライン(中原圭介)

 混迷を深める世界。日本はどうなるのか?
 まったく解がないように見えるが、実は、その答えは「歴史」の中にある。
『逆説の日本史』の人気作家・井沢元彦氏と、経済アナリストの中原圭介氏が、物事の本質や真実を問う「哲学的なアプローチ」から、2回に分けて「日本の進むべき道」を探る。

「生類憐れみの令」は
「バカ将軍」が出した
             アホな法律か?

 中原:
私は経済を見るとき、経済学の知識はあまり重要視していません。
その代わりに3つの視点を大事にしています。  
1つ目は、物事の本質とは何かという視点。
これは「大局を読む」ということでもありますが、その際に最も必要な学問は「哲学と歴史」だと思います。
哲学は古代からある学問ですが、もともとは「真理とは何か」という問い掛けから出発しています。
つまりは本質を問うているわけです。
経済でも、本質を見ることが極めて重要なんです。
 私がこういう着想を得たのは、若いころに読んだ井沢さんの著書がきっかけです。
井沢さんが語っておられる歴史は、いわゆる歴史学者の知見とは一線を画しているように思います。
言語学や天文学なども駆使しながら、その時代に何が起きたのか、当時の人々が何を考えていたのか、まさに本質を炙り出そうとされている。
その姿勢に刺激をもらいつつ、強く共感しています。

 井沢:
ありがとうございます。
でも、そんなに高尚な話でもないんです。
僕はちょっとひねくれ者なだけですよ。  
「裸の王様」という童話がありますね。
王様は明らかに裸なのに、いろいろな常識やそれまでの学問などが邪魔をして、そのことが見えなくなることがある。
それが学者や専門家の陥りやすい落とし穴だと思います。
 たとえば江戸時代、5代将軍である徳川綱吉の「生類憐みの令」というと、多くの人はアホな法律と思っているかもしれません。
歴史学者の中にも、そう思っている人はいます。
実は当時の人も、まったく評価していませんでした。
綱吉を「バカ将軍」と見なしていたんです。

 井沢:
でも、それは違うんです。
綱吉が将軍に就く前までは、まだ戦国の余韻が残っていてたいへん殺伐とした世の中でした。
ところが「生類憐みの令」によって、「人間どころか、動物を殺すなんてとんでもない」という風潮が生まれた。
実はこの法律は、人命尊重という意識を日本に定着させた画期的なものだったのです。
 人間の意識を変えるためには「劇薬」が必要です。
その劇薬をもって当時の意識の大変革をやってのけた綱吉は、「バカ将軍」ではなく「名君」。

しかし画期的なことがなかなか理解されないのは、学問も政策も同じですね。

経済学者は歴史的事象を
表層的に比較している 

 中原:
そういう見方を提示してくれるのが井沢流歴史観の醍醐味ですね。
私が経済を見るうえで大事にしている2つ目の視点は、まさに歴史学なんです。
 私は大学で歴史学を学びましたが、そもそも「歴史」と「歴史学」は分けて考える必要があります。
「歴史」とは、たとえば政治史や軍事史上の大きな事象を表層的な知識としてとらえること。
それに対して「歴史学」とは、その知識をもとに比較したり内容を分析したりしながら、その事象の真実を見極めること、そしてその結果を将来に生かすことです。
同じ失敗を繰り返さないために、どうすればいいのかを考える学問なのです。
 この観点から経済学者の方々を見ると、不思議に思うことがよくあります。
歴史的事象を表層的に比較しているだけの場合が多いからです。
これでは現実を見誤ります。
その事象の背景には、当時の文化、人々の価値観、生活スタイルなどさまざまな要素が絡んでいる。
それを考慮しないと、本当のことはわかりません。

 井沢:
僕は、経済学は全然ダメですが、歴史学に対する考え方にはまったく賛成です。
歴史の背景には必ず哲学があり、その時々の人間の営みがある。
そもそも哲学が人間を動かし、歴史を動かし、経済を動かしているわけです。
このあたりのことを、歴史学者はいちばんわかっていませんね。

 中原:
経済学者もそうです。
たとえば2014年に消費税率が引き上げられたとき、「1997年の増税が失敗だったから、今回も失敗する」と反対する経済学者がけっこういました。
しかしこれは、正確な比較ではない。
1997年と2014年とでは、経済状況がまったく違いますから。

 中原:
1997年の消費増税は、失敗していなかったんです。
個人消費は落ちず、実はプラスでした。
あるいは実質賃金などの経済指標も、堅調に推移していた。
増税に耐えうる環境だったわけです。
確かに1998年から不況に突入しましたが、それは1997年11月の北海道拓殖銀行の破綻から始まった金融システム危機が原因だったのです。
 しかし2014年は、前年からの円安で実質賃金が大きく下がっていました。
この違いを指摘しないのは明らかに間違いです。
だから、将来の経済政策に対する見方も間違うわけです。

「当事者になり切る」ことができるか

 井沢:
確かに結果だけを見て状況を知らずにいると、判断を誤ります。
たとえば、1600年の関ヶ原の戦いがわずか1日で終わったことは、ちょっと歴史に興味のある人なら誰でも知っていますね。
しかし昨年の大河ドラマ『真田丸』では、真田信幸や真田信繁の父である真田昌幸が「えっ、もう終わっちゃったの?」と驚いていました。
実は戦いに参加しなかった黒田官兵衛も同じように驚いた。
1〜2年は続くだろうと思って準備していたんです。
 では真田昌幸や、九州で戦況を分析していた黒田官兵衛はアホだったのかというと、それは絶対に違う。
地理的な状況などを整理すると、合戦が1日で終わると考えるほうがおかしいんです。
にもかかわらず西軍があっさり負けたのは、むしろ石田三成が負けることをまったく考えていなかったから。
やはり三成は官僚であって、軍隊を動かせる軍人ではなかったということです。
 三成をはじめ、当時の人になり切って考えてみれば、わずか1日で終わるという結果がいかに常識外れで意外で無念だったかがわかるのです。

 中原:
当事者になり切るということは重要ですね。
その視点はどうやって養ってこられたのですか。

 井沢:
僕の趣味は演劇なんです。
見るのも好きですが、高校生の頃から芝居を始めて、今でも文士劇(作家・記者を中心として行うアマチュア演劇)をやっています。
では「演じる基本とは何か」というと、当たり前だけど、その人物になり切ること。
歴史を見るうえでも、これがけっこう役に立つんです。

 中原:
経済学者も、もっと市井の人になり切って経済を見る必要がありますね。
 だいたい経済学というのは、原因と結果を簡単に転倒できるんです。
物理や自然科学の世界では絶対にありえないことが、経済学ではありうる。
むしろ積極的に転倒させて理屈をこねるのが経済学。
おかしな学問になっているわけです。
 「自然科学でありえないことが、経済学では起こる」。
実はこれが、私が経済を見るうえで大事にしている3つ目の視点です。
経済学の根本的な誤りに気をつけ、むしろ自然科学の法則に照らしてみるということです。

 井沢:
それもすごく重要なことです。
僕は大学を卒業してTBSに就職し、ドラマの制作でもやろうかなと思っていたら報道に配属された。
まったく予期しない仕事をやらされたわけですが、今から振り返ると非常によかったと思います。
 報道の基本は、うわさを信じないことです。
たとえ専門家の言っていることでも、鵜呑みにしてはいけない。
必ず自分の目で確かめ、真実かどうか裏を取る必要がある。
それをみっちり教えられたのです。
たとえば、世間が「この人はものすごく悪い奴だ」と評している場合でも、実際に調べてみると、そうではないことがよくあります。

歴史を検証すれば
「デフレ原因でなく結果」だとわかる

 中原:
その典型が「デフレ」のとらえ方ですね。
本来、デフレやインフレというのは「原因」ではなく、あくまでも「結果」なんです。
好況の結果、インフレになる場合もあるし、デフレになる場合もある。
不況の結果、デフレになるときもインフレになるときもある。
歴史をさかのぼってきちんと検証すれば、これは明らかです。
私がそういう説明をすると、自然科学の分野にいる人ならすぐに理解してくれます。
しかし経済学をガチガチに勉強してきた人ほど、それはおかしな話だと言い出すんです(笑)。  それが今、日本の経済政策にもおかしな影響を及ぼしています。
「デフレ克服」が合言葉のようになっていますが、だから実質賃金が大幅に下がり、誰もおカネを使わなくなっている。
こんな間違った常識が経済学の主流になっているからダメなんです。
ある意味、遅れた学界ですよね。

(後編に続く。
後編は9月11日に配信の予定です)
posted by 小だぬき at 10:31| 神奈川 ☁| Comment(3) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

無理して学校行かないで NPO呼び掛け「大人は居場所を」

無理して学校行かないで 
NPO呼び掛け
「大人は居場所を」
2017年9月5日 東京新聞朝刊

 夏休み明けに子どもの自殺が増える9月1日前後に、首都圏で中高生の死亡が相次いだ。
警察によると、いずれも自殺の可能性が高い。

いじめや不登校などの問題に取り組む関係者らは悩む子どもたちへ向け、
「無理して学校に行かなくてもいいんだよ」
「ささいなことでも相談して」と呼び掛けている。

 「子どもたちには『学校か死か』ではなく、『学校に行かない』という選択肢が許されることを伝えたい
 NPO法人「全国不登校新聞社」の石井志昂(しこう)編集長(35)は四日、取材にこう語った。
自身も中学二年で不登校になったが、「許されないと思ってため込んでいた『学校に行きたくない』という気持ちを親に打ち明け、受け止めてもらったことで命を拾った」。
周囲の大人たちには
原因探しの前に、安全第一。
まずは子どもがいたい場所にいられるようにすることが大事」とアドバイスする。

 いじめ防止に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の理事、小森美登里さん(60)は十九年前、学校でのいじめが原因で高校生の娘=当時(15)=を自殺で亡くした。

「原因がいじめだったとしたら、その現場は学校がほとんど。
夏休みに学校から離れてほっとしている心が、新学期が近づくにつれて不安が増して押しつぶされてしまうことがある」と話す。
 学校側には「いじめを把握していて状況が改善していないならば、教員から『無理して来なくていい。
心配しなくていい』と子どもたちに伝えてあげてほしい」と呼び掛ける。

 不登校新聞社などNPO法人五団体は八月下旬、登校がつらい子どもたちに向けた緊急メッセージ「学校へ行きたくないあなたへ、味方はココにいます」をインターネットで公表。
同新聞社などのウェブサイトに掲載されている。
 メッセージは、学校のことを考えるのがつらいのに「自分の味方なんていない」と感じている子どもたちへ「支えてくれる味方はココにいます」と呼び掛け、具体的な相談先として、無料で十八歳以下の電話相談に応じるチャイルドラインなどを紹介している。

 警視庁は相談電話ヤング・テレホン・コーナーで専門職員らが相談に応じる。
少年育成課は「名前を明かさなくても大丈夫。どんなささいなことでもいいので、相談を」と話している。

◆夏休み明け 中高生自殺相次ぐ
 四日朝、東京都内と千葉県で、中高生三人が相次いで死亡した。
墨田区では中学三年の女子生徒(14)がマンション十四階の自宅ベランダから転落。
向島署によると、家族に「夏休みの宿題ができていない」と話し、自室に遺書のようなメモがあった。
夏休み前には「勉強についていけない」と登校できなくなったこともあったという。

 江戸川区の公園の公衆トイレでは、区内の高校三年の男子生徒(17)が首をつっているのが見つかった。
葛西署によると、進路に悩み、一日朝から行方が分からなくなっていた。

 千葉県船橋市では京成電鉄東中山駅で、県内の高校一年の男子生徒(16)が通勤特急にはねられた。
船橋署によると、男子生徒は私服姿で駅のホームの端に立ち、運転士は「電車が通過する時に線路内に倒れてきた」と説明している。

 八月三十日から今月一日にかけても、都内と埼玉県で中高生四人が建物から飛び降りるなどした。
 東京都八王子市では一日午前、中学二年の女子生徒(13)が学校敷地内で倒れているのが見つかり、腰の骨を折る重傷。
南大沢署によると、高さ十三メートルの四階音楽室の窓から飛び降りたとみられる。
学校は二十九日に始業式があり、一日は通常授業だった。
友人関係に悩み、直前まで他の女子生徒が相談に乗っていたという。

 都内ではこの他、三十日朝に台東区で中学二年の男子生徒(13)が、三十一日夜には渋谷区で高校一年の男子生徒(16)が死亡。
いずれも自殺とみられる。

 埼玉県所沢市では三十一日午前二時ごろ、高校一年の男子生徒(16)が県営団地の前で倒れて亡くなっているのが見つかった。
所沢署は飛び降り自殺を図ったとみている。
高校は一日が二学期の始業式だった。

◆24時間子供SOSダイヤル 
  (0120)078310
◆子どもの人権110番 
  (0120)007110  
(月〜金曜、午前8時30分〜午後5時15分)
◆チャイルドライン 
  (0120)997777  
(月〜土曜、午後4時〜9時、18歳以下専用)
◆ヤング・テレホン・コーナー 
  03(3580)4970  
(年中無休、24時間)  
  ※ヤング・テレホンのみ有料
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする