2017年11月02日

病気が原因で嘘つきになってしまう? その心理と特徴

病気が原因で
嘘つきになってしまう?
その心理と特徴
2017.11.1 All About

性格のせいではないのかも……
嘘をついてしまう病気とは 程度の差こそあれ、私たちは人の目を気にしながら生きているもの。
周りの人からどう思われているのか、気になることもあるでしょう。
また、周りの人に高く評価されたいという思いが、モチベーションを高める大きな原動力になることもあります。
そんな心理がある中で、周りの人から「あの人は嘘つきだ!」といった目で見られるようになってしまったら大変です。
その人たちの輪の中で気持ちよい人間関係を保っていくのは、かなり難しくなるかもしれません。
しかし、つい嘘をついてしまう背景に、心の病気が関与している場合もあるのです。

ここでは、嘘に関連する心の病気を詳しく解説します。

パーソナリティ障害……
嘘つきが平気になるのも症状のひとつ
相手に嘘をつかれることも、ショックなものです。
嘘の度合いによっては、相手の人格を疑ってしまうこともあるでしょう。
しかし、実はパーソナリティ的に、嘘をつく敷居が低くなっている場合もあります。

もしも自己の何らかの利益や都合のために平気で嘘をつくようになっている場合、反社会性パーソナリティ障害の可能性があることにも注意してください。
反社会性パーソナリティ障害の発症率は人口のおよそ1〜3%前後。
性差は男性に多くなっています。

反社会性パーソナリティ障害では、社会的規範に対するモラルが深刻に低下し、平気で嘘をつくといった問題行動が起きやすくなります。
反社会性パーソナリティ障害の場合、本人が自ら精神科を受診することは少ないですが、対人関係上のトラブルを軽減し、日常生活の質を向上させるためにも、心理療法などの治療を受けることが望ましいです。

アルツハイマー型認知症
・慢性アルコール依存症
・解離性障害……
記憶がないことが嘘の背景にあるケース
もしも、はっきり記憶がない時間が自分にあったとしたら、なかなか嫌なものだと思います。
例えば、仲間と酒を飲んでいるうちに泥酔してしまい、気づいた時は、自宅のベッドの上……しかも服も何も着ていなかったとなると、一体どうやって帰って来たのか、いや、それ以上に、帰る途中、何か間違ったことをしなかったか不安になるかもしれません。
後にその日のことを誰かに尋ねられたら、面目を保つため、適当に答えてしまうこともあるでしょう。
適当に答えてしまうことも、広義には嘘の一形態です。
もしも記憶がない時が頻繁に現れると、作話も多くなります。
例えば、アルツハイマー型認知症では短期記憶が障害されやすく、昨日のことだけでなく、数時間前のことも、全く覚えていないといったことがあります。
また、認知症では現実と、自分が思いこんだことの違いが曖昧になりやすいのも、作話が生じやすい素地になります。
また、慢性アルコール依存症でも記憶障害が現れることがあります。
アルコール依存症では食生活が片寄りやすく、もしも長期間にわたりビタミンB1(チアミン)摂取不足が生じると、脳内の神経細胞の一部がダメージを受け、コルサコフ症候群と呼ばれる病態が生じることがあります。
記憶障害はコルサコフ症候群の特徴的な症状のひとつ。
コルサコフ症候群では、失われた記憶を埋め合わせる作話がよく現われます。
また、記憶のない時間が現れやすい心の病気として、解離性障害が挙げられます。
心の解離が進んでしまうと、まれではありますが、記憶のない時間にもうひとつの人格が現われる、いわゆる多重人格が生じることもあります。
もっとも心の解離自体は、日常的に誰でも経験することです。
例えば、誰かに肩を叩かれてハッと我に返るような時ですが、仮に家族の誰かが大事な相談事を自分にしていたとして、相手が自分に意見を求めてきた時、ハッと我に返っても話の内容が実は頭に入っていなかった……ということはあるでしょう。
その際、相手の話を聞いていなかったことを素直に謝るべきか、それとも適当にお茶を濁した方がよいのかは、なかなか判断が難しいものです。
このような日常レベルを明らかに超えたレベルで、もし身近な誰かに作話が多くなっていることに気付いたら、相手の人格を疑う前に、記憶障害の可能性もあるのではと、一応疑ってみることも大切です。

虚偽性障害……
一般的には嘘と思われる仮病
仮病も時についてしまいがちな嘘かもしれません。
ちょっと人に言いにくい用事ができて持ち場を離れるために、ちょっと仮病を使ってしまう……。
日常生活上、時に起こり得ることかもしれませんが、もしもそれが原因で日常生活に深刻な問題が生じている場合、その反社会性パーソナリティ障害的な傾向には注意が必要です。
また、まれではありますが、病気のふりをすること自体が、仮病の目的になってしまうこともあります。
病気になれば、周りの人は普段よりずっと優しくなるものですが、その優しさを求めて、病人を演じてしまう「虚偽性障害」が挙げられます。
これも嘘に関連する心の病気のひとつです。

以上、今回は嘘に関連する心の病気をいくつか解説しましたが、もちろん大多数の方は時に嘘をついてしまっても、日常生活が深刻に障害されるまでには至らないでしょう。
しかし嘘はつかれた相手にとっては大変嫌なものです。
長年の付き合いを通じて築き上げた信頼関係が、たった一度の嘘で壊れてしまうこともあります。
もしも嘘をついてしまうことで、日常生活上に深刻な問題が生じているような場合、心の病気が関連している可能性もあることを、どうか心に留めておいてください。
posted by 小だぬき at 07:05 | 神奈川 ☀ | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の予防のカギは運動・睡眠〜休日の睡眠がいつもより2時間以上長ければ<寝不足>

うつ病の予防のカギは
運動・睡眠〜
休日の睡眠がいつもより
2時間以上長ければ<寝不足>
2017.10.31 ヘルスプレス
文=里中高志
精神保健福祉士。
フリージャーナリスト。
1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。
精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。
著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。  

2014年に行なわれた患者調査によると、うつ病を中心とする気分障害の患者数はおよそ112万人――。
 また、少し古いデータになるが、2002年〜2005年に行なわれた疫学調査によると、日本の成人人口をおよそ1億500万人とすると、220万5000人が過去12カ月の間にうつ病の診断基準を満たしたと推計できるという。
 もはや<国民病>とも言えるうつ病だが、じつは「生活習慣病」に似ているところがある。

健康なときから自身の心と身体の状態に気を配ることで予防することができる」と話すのが、国立精神・神経医療研究センター、精神保健研究所の西大輔医師だ。
  西医師は、かつて災害医療センターで自殺未遂患者の救急医療に携わっていた経験から、深刻な事態に至る前に<うつを予防する方法>を研究するようになり、2012年には『うつ病にならない鉄則』(マガジンハウス)という著書も刊行している。
 西医師のナビゲートのもと、
@睡眠と運動、
A栄養、
B思考パターンの3回に分けて、うつの予防法について紹介したい。

休日の睡眠が平日より
2時間以上長ければ
<睡眠不足>の証拠  
「現在行なわれているうつ病の治療法は、抗鬱薬によるものが主体です。
しかし、私は薬物ではないアプローチ、たとえば栄養や運動でうつ病を予防できないか――という研究をしています」  
「気をつけていただきたいのは、<薬は必要ない>と言っているわけではないということ。
重症のうつ病に薬物療法が有効であることは明らかですが、そのような深刻な状態に至る前に、うつを予防したり重症化を防いだりするためのエビデンスを集めています」

 こう話す西医師が、まず提唱するのは睡眠の重要性だ。
不眠が続くとうつ病が発症しやすくなるだけでなく、睡眠不足によって肥満や糖尿病などの生活習慣病になりやすくなること、さらにうつ病と生活習慣病との間に密接な関係があることも明らかになっているという。
 「平日の睡眠時間が少なくても『休日に寝だめをすれば大丈夫だ』と考えている人は多いのですが、それはいわば<平日に借金をして休日にその返済>をしている状態」
 「どうしても忙しくて睡眠を長く取れないのなら仕方ないが、休日の睡眠時間が平日より2時間以上長かったら、それは平日の睡眠が足りていないのだと自覚をすることも大切です。
睡眠時間を30分〜1時間増やす余裕がまったくない人って、じつはそれほどいないものです」  

ついつい寝る前にネットサーフィンやゲームに時間を費やす人も、<睡眠時間の確保=うつ病の予防>を意識して、少し早めに眠りにつく習慣をつけるのがいいかもしれない。

うつが深刻になる前に
カラダに目を向けること  
 そして、西医師が睡眠と並んで力説するのが運動などを通して<身体に目を向けること>だ。たとえば、有酸素運動などを継続的に行うことでうつ症状が改善することが多くの研究から示されている。
また、最近では寝る前の10分程度のストレッチでも寝付きがよくなり、メンタルヘルスが改善することを示した研究結果もあるという。
軽いジョギングやウオーキングでも人によっては効果的かもしれない。
 だが、その程度の運動でも、うつが重くなると、とてもではないがやる気が起きなくなるだろう。
だからこそ西医師は、うつになってしまう前から身体に目を向けることを勧めるのだ。

 「予防のうえで一番大切なのは、運動量よりも自分の身体に目を向けること。
身体のちょっとした不調や体の使い方のクセなどは気持ちの変調に気づくためのサインになりますし、身体から働きかけてメンタルヘルスがよくなることを実際に経験しておくと、落ち込んだ時にも役に立つと思います」
(取材・文=里中高志)

西大輔(にし・だいすけ)
国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所精神保健計画研究部
システム開発研究室長。

2000年、九州大学医学部卒。
国立病院機構災害医療センター
精神科科長を経て2012年より現職。
2016年より東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻精神保健政策学分野連携講座准教授を併任。
著書に『うつ病にならない鉄則』(マガジンハウス)がある。
専門:精神保健学、うつ病・PTSDの予防、栄養精神医学、産業精神保健、レジリエンス。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする