2018年01月11日

え? 「希望の改憲」って=与良正男

熱血!与良政談
え?「希望の改憲」って=与良正男
毎日新聞2018年1月10日 東京夕刊

 安倍晋三首相が憲法改正について「今年こそ新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿をしっかりと提示する」と語った年頭記者会見を私もテレビ中継で見た。

 「スケジュールありきではない」と言いながら、「今年こそ」に力点があったのは明らかだろう。
政府高官は改憲の国会論議は「今秋の臨時国会がヤマ」と語っているそうだ。
 来年は4月30日に天皇陛下の退位、5月1日に新天皇即位が控える。
夏には参院選もある。
それを踏まえると今秋に発議して年末から来年初めに国民投票とする道を探るしかないと首相は思い描いているはずだ。
 結局、日程ありきではないかという点以上に、気になったのは「希望を生み出す」という言い方だ。

 首相の本音が9条改正にあるのは疑いがない。
自民党の議論も首相の提起に従い、「9条の1、2項を維持して自衛隊を明記する文言を加える」方向に集約されていくと思う。
 すると自衛隊の明記が国民の「希望」につながるということなのか?
 それは少し違うと思う。

 要するに今の憲法は連合国軍総司令部(GHQ)の押しつけであり、9条を変えて、そこから脱皮する−−というのが首相本人のそれこそ「希望」なのではなかろうか。
 安倍政権は憲法解釈を大きく変更し、限定的とはいえ集団的自衛権の行使を認めた安全保障法制を施行している。
最近では海上自衛隊の護衛艦を空母に改修し、攻撃能力を持つ最新鋭の戦闘機を搭載する検討に入ったとも報じられた。
9条に基づく「専守防衛」の原則は既に改憲を待たずに崩れ始めている。

 自衛隊の明記はそれを追認するだけでなく、文案次第ではさらに時の権力が恣意(しい)的に活動範囲を広げる余地を残す恐れがある。
安倍政権はそもそも憲法順守の意識が希薄なのだ。
それを忘れてはいけない。
 何より国民投票により、国民世論が分断されるのはよくない。

日経新聞が5日の社説で「改憲の発議はいちかばちかではなく、国民が『そんなのとっくに常識だ』と感じるくらいの案がちょうどよい」と書いていた。
その通りだと感心した。
 安定した基盤を生かすなら、改憲よりも少子高齢化や人口減少に腰を据えて取り組むようお勧めする。
それが希望を生む。
  (専門編集委員)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(3) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする