「自分はバカだ」と言う子に
親ができること
子どもの自己肯定感を上げる「10の言葉」
2018年01月25日 東洋経済
石田 勝紀 :
一般社団法人 教育デザインラボ 代表理事
小学5年の男児の母親です。
共働きのため、小学校入学前に十分読み書きの勉強などさせてあげられませんでした。
最初から、勉強が遅れぎみで現在まで来ています。
そのため、子どもは自分で「バカだから」と言います。
親からみると、バカなのではなくやる気がでないのだと思っています。
自分から、勉強に取り組む気持ちになるには、どうしたらいいのでしょうか。
今は、自信を持たせるためになるべくプラスの声かけができるようにと考えています。
(仮名:大西さん)
「自己肯定感が低い」日本の子どもたち
ご相談内容を拝読しましたが、まず小学校入学前の状態が今の結果を招いているということは、おそらくありません。
小学校に入ってから読み書きを学んでいって、その後しっかりと勉強ができるようになっている子は無数にいます。
それよりも、「子どもは自分でバカだからと言う」ということに問題の核心部分がある気がします。
お子さんは、簡単に言ってしまうと「自己肯定感が低い」状態にあります。
自己肯定感とは、自分のことを否定的にとらえずに、大切な存在であると考えている状態のことです。
お子さんは今、勉強に関しては自己否定の状態になっています。
世界的な統計データでも日本の子どもの自己肯定感の低さはよく知られていますが、筆者も、日本の子どもたちに対して、この「自己肯定感が低い」ということを常々実感しています。
全国で、中学生や高校生に講演をする機会が多く、その度に感じるのです。
自分に対して自信を持っておらず、自信を持つ勇気もなく、ただ漫然と過ごす子が多くいるのです。
なぜこのようになってしまっているのか考え続け、そしてわかったことが、「過去の勉強で自己肯定感が潰されている」ということでした。
特に中高生に多いのですが、中学では定期テストがあり、それによって点数化され、成績によって無意識に序列化が行われます。
さらに高校受験の段階で、偏差値が登場し、さらに学校の序列化が始まります(筆者は決して偏差値という言葉に対して完全否定の感情は持っていませんが、あくまでも序列化する第一歩であるという事実を言っています)。
すると、この「学力」の序列が、「自分という人間の価値」の序列と同じであるという“錯覚”に陥るようなのです。
実は、このような錯覚は、私たち大人もかつて経験していることですから、よくわかるのではないでしょうか。
学力は大切な指標ではありますが、社会に出れば、学力とは別の尺度、たとえば人を大切にする、思いやりがあるなどといったことによって、幸せに自分の人生を歩んでいる人、自分のやりたいことで成功する人はたくさんいます。
これらのことを考えると、ある重大なことに気づくのです。
それは、次のようなことです。
「親は、子どもの学力を引き上げることに焦点を当てるのではなく、子どもの『自己肯定感』を高めるということに焦点を当てる」 すると、結果として学ぶ力が高まり、学校の成績といった学力につながっていくのです。
子どもの自己肯定感を上げる言葉
大西さんは、子どもに「自信を持たせるためになるべくプラスの声かけ」を心掛けられているようですが、ネガティブな言葉よりは、とてもいいことだと思います。
ですが、これまでの筆者の経験では、「プラスの言葉かけ」が子どもにとって、ストレスや過度のプレッシャーになったり、時には嫌味になってしまったりすることが少なくありません。
大西さんはプレッシャーになるような言葉かけはされてはいないと思いますが、現状、プラスの言葉かけをしているにもかかわらず、特に子どもが変わることがないということであれば、筆者がこれまで使ってきた【子どもの自己肯定感を引き上げる10のマジックワード】を使ってみてください。
【自己肯定感を上げる10のマジックワード】
1.「なるほど〜」
2.「すごいね〜」
3.「大丈夫!」
4.「さすがだね〜」
5.「知らなかった!」
6.「いいね〜」
7.「助かった!」
8.「ありがとう!」
9.「うれしい!」
10.「〇〇(子どもの名前)らしくないね〜」
これとは対照的に、子どもの自己肯定感を引き下げる3つの「呪いの言葉」というものもあります。
これを使うと、子どもは「自主的でなくなり」「自己肯定感は下がり」「依存的」になる言葉です。
ただ、「このような言葉を言わないようにしてください」と言われると、今度は親がそれを意識しすぎてストレスになるため、今回はひとまず触れません。
この10のマジックワードは、次のような要素を持っています。
◆あなたのお陰・感謝
◆予想以上に驚いた
◆軽い感じの承認
◆「もともとあなたはすごい」ということを知っていることを感じさせる
このような要素の言葉をかけられて、うれしくないはずはありませんし、子どもの自己肯定感が上がらないはずはありません。
一方で、このような言葉を発する親の立場はどのようになっていると思いますか?
上から目線の言葉にはなっていませんよね。
親子といえども、上から目線の言葉は、プラスの言葉であっても、マイナスの言葉であっても、子どもは素直には受け取らないという傾向があります。
親子が同等の立場とは言いませんが、少なくとも上から目線にはなっていないということは重要なことだと考えています。
短い言葉のほうが、心に残っていく
それともう1つ、ここに掲げた10の言葉は、いずれも単純明快な言葉です。
意味がわからないという人はいないことでしょう。
そして、いずれも、短い言葉となっています。
この短いということが重要なのです。
通常、親はあれこれ“しつこく、くどく”言ってしまいがちです。
話が長いときは、相手はほとんどその内容を聞いていません。
ですから頭に残らないことが多いのです。
何が残るかといえば、「もう聞きたくない」という気持ちです。
ですから、言葉というものは、「短い」ほうがいい場合があります。
短い言葉であれば、相手は、その言葉以外の部分を「想像」します。
すると、その想像部分も含めて言葉が心に残っていくのです。
たとえば、次のようなケースを考えてみるとわかるでしょう。
例1)「あなたは頑張ればできるんだから……(さらに頑張っていない原因や、どうすればいいか対策まで話す)」(×)
例2)「あなたはバカじゃないよ……(バカではない理由を話す。さらに親は熱心に子どもを信じているということを滔々と語る)」(×)
例3)「〇〇(子どもの名前)らしくないね〜」(○)
例1や例2は、頻繁に使われている典型的「励まし」パターンです。
しかし、話が長すぎて、子どもは実際にはほとんど聞いていません。
親は熱心なのかもしれませんが、主役である子ども自身が、主体的にならなければ何も変わりませんね。
このように、短い言葉である10のマジックワードをぜひ、使ってみてください。
お子さんの変化に驚かれることでしょう。