「メールを返信してこない人」は
なぜ返信してこないのか?
2018/02/05 HARBOR BUSINESS Online
【山口 博(やまぐち・ひろし)】
グローバルトレーニングトレーナー。
大学生、新入社員から役員まで、各層に対してリーダーシップ開発プログラムを実施していると、各層の人々との間で頻繁にメールのやりとりが発生します。
◆年齢? 多忙さ?
メールの返信をして来ない人の傾向
プログラム参加者に限らず、各層とメールのやりとりをしてきた私の肌感覚をふまえると、最近になるほどに、メールの返信率が下がっているような気がしてなりません。
返信してくれる人と返信してくれない人の傾向について、業務多忙さに相関があるのではないかという仮説を持っていました。
多忙な人は返信してくれず、比較的多忙でない人が返信してくれているのではないかと考えたわけですが、どうも異なるようです。
一般に年齢が上がり職責が重くなるにつれて多忙になるわけですが、注意深く見てみると……年齢が下がるほど返信率が下がり、年齢が高い人ほど返信率が高いという傾向が、あくまで私とのメールのやりとりの状況だけからですが、わかってきました。
だとすると、私との関係の近さ、遠さにもよるのではないでしょうか?
しかし、毎月2度、半年間にわたってかなり密度濃く演習している間柄でも、メールの返信をして来ない人もいれば、コンタクトの密度ははるかに薄くともにすぐに返信してくる人がいます。
私個人の経験に基づくだけの、かなり乱暴な切り口であることを承知の上でメール返信率についての傾向をまとめると、次のようなことが言えるのではと考え始めています。
《メール返信率についての傾向》
1:年齢が若ければ若いほどメール返信率が低い。
2:所属企業がベンチャー企業であったりして組織の縛りが希薄であればあるほどメール返信率が低い。
3:学歴が高ければ高いほどメール返信率が低い。
メールを返信して来ない人の何人かと雑談をする中で、その理由を聞いてみました。
すると、私にとってはとても意外な答えが返ってきたのです。
◆業務効率の追求は必要だが、
返信まで省略するのはアリ?
メール返信してこない人に理由を聞いてみると、次のような答えが返ってきました。
《メールを返信しない理由(未開封編)》
●多忙でメール内容を確認できずに、返信できなかった
●業務効率を追求する中で、タイトルを見て、開封するメールと、開封しないメールを瞬時に判断しているので、開封しないメールについては、返答していない
●優先順位を付けて返信している。緊急や重大な要件であれば、督促メールや電話連絡が来るだろうから、それから対応するようにしている
●基本的にあまりメールに頼らない。重要な案件はLINEやFacebookのメッセージで迅速にやりとりしている
これらは、メールを開封していないケースです。
次に、メールを開封している人が返信しなかった理由を聞くと、次のような声が返ってきました
《メールを返信しない理由(開封するも未返信編)》
●どのように返信したらよいか考えているうちに、時間がたってしまった
●依頼に対しての対処が完了していないので、意識はしていたが、返信していなかった
●次に会った時に、口頭で話そうと思った
●依頼に対して断るのは失礼なので、応じられないという意思を、返信しないことで示そうとした
メールを開封していないケースの人の、受信箱を見せてもらいましたが、確かに未読のメールがずらりと並んでいました。
多忙で開封できなかったのか、タイトルを見て判断しているかの違いはあるが、未読であれば返信しようがありません。
業務効率の追求する観点で、優先順位付することは極めて重要です。
しかし、優先順位を付けた上で、優先順位の低いメールに対しても、短かろうとも丁重に、今は対応が難しいことや、依頼に応えられないという主旨のメール返信をして、少なくともある程度の関係性を維持することも一つのビジネス手法ではないでしょうか。
LINEやFacebookでやりとりするのであれば、それらでコンタクトして返信すればよいだけのことです。
私がやりとりしている中国のビジネスパーソンは、ほとんどがWeChatでのやりとりをしています。
お互いがそれをわかっていればよいだけです。
一方、メールを確認した上で返信していないケースは、問題の根が深いです。
◆賛成なのか反対なのかわからない
どのように返信したらよいか考えているうちに、時間が経ってしまったケースや、依頼に対する対処が完了していないケースでは、とりあえず、これから検討したり対処したりするので、まずはメールを受信したという返信をするだけでもよいと思います。
同様に、次に会った時に口頭で話そうと思ったのであれば、その旨をメール返信すればよいでしょう。
依頼に対して断るのは失礼なので、応じられないという意思を、返信しないことで示そうとしたというケースは、これは受け取る側によっては、異論がないから返信しないケースと、賛成できないので返信しないケースとの峻別が難しいのです。
私がかつて在籍したグローバル企業では、メール返信してこない海外オフィスの同僚が実にたくさんいました。
日本法人の中では、
Aさんが返信して来ないのは少なくとも反対しないという意思表示、
Bさんが返信して来ないのは賛成しないという意思表示、
Cさんは不明……という解読表のようなものがあったほどです。
一般社団法人日本ビジネスメール協会の調べによれば、7割を超える人が「1日(24時間)以内」に返信が来ないと遅いと感じるといいます。
本人にとっては業務効率の向上であるかもしれませんが、周囲にとっては非効率極まりなく、またストレスを感じさせる事態を生んでしまっているのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第69回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】
グローバルトレーニングトレーナー。
モチベーションファクター株式会社代表取締役。
国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。
近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。