2018年04月22日

水に流せない! “女子トイレの行列”問題

水に流せない! 
“女子トイレの行列”問題
4/21(土) 読売新聞(大正大学准教授 岡山朋子)  

まもなく大型連休。
行く先々の施設のトイレで、順番待ちの長蛇の列に悩まされたことのある女性は多いのではないだろうか。
各地で公共トイレを清潔にするなど快適化を目指す動きが広がっているが、この“行列問題”はほとんど改善が見られない。
大正大学人間学部准教授で、日本トイレ研究所の会員でもある岡山朋子さんに、女子トイレ行列を生む背景や問題点について解説してもらった。

◆“男女平等”が不平等に
 先日、順番待ちの列ができていた女子トイレの前で、小さい女の子が我慢しきれなくなり、母親が列に割り込む形で「先に使わせてほしい」とお願いしたことをきっかけに論争がわき起こり、ツイッターでも議論になりました。
 「子どもに優先させてあげるのが大人の優しさ」と思う人がいる一方、
「過活動膀胱(ぼうこう)」などでいつも尿漏れを心配している大人の女性や、
急な生理などで一刻も早くトイレに駆け込みたいという女性もいます。
いずれも当事者にとっては非常に深刻な問題であり、簡単には譲れません。

 こうした深刻な「トイレ渋滞」の影響を受けるのは、ほとんどが女性です。
公共施設などで女子トイレの前にだけ長蛇の列ができているのを、男性も見かけたことがあるでしょう。
 その原因は、実態にそぐわない「男女平等」にあります。
公共トイレの多くが左右対称の作りで、男子トイレ、女子トイレが同じ面積で作られることが影響しているのです。

◆利用時間は男性の2.5倍
 中日本高速道路(ネクスコ中日本)が2014年度に行った調査によると、
男性が小便器を利用する時間が平均37.7秒であったのに対し、
女性の個室トイレの平均利用時間は約93.1秒で、男性の約2.5倍の時間がかかっていました。
女性のトイレは常に個室が必要で、男性より所作も多いからです。

 男女で同じ面積のトイレを作れば、すべて個室の女子トイレは、男子トイレよりも便器の数が少なくなることが多く、その上、1人当たりの利用時間が長いとなれば、女子側にだけ列ができるのは当然といえます。
 面積が「男女平等」であっても、利便性の面では「平等」とはとても言えないのです。

女性のほうが多い…山口県萩市
◆男性の2倍を目標値に
 トイレの男女比率を変え、女子トイレの渋滞問題を改善しようと取り組んでいる自治体もあります。
山口県の萩市です。
 萩市には松下村塾など、世界遺産に登録された観光地の一部があり、観光客が大型バスで訪れると、公衆トイレを利用する女性たちの長蛇の列ができていました。

市の公共施設でもイベント開催時に同様の問題が起きていたことから、市は「公共施設のトイレにかかる整備方針」を設け、「男性小便器数と女性便器数の比は概ね1:2とする」という目標値を定めています。

 同市によると、女性コーラスの全国大会などが行われる萩市民館は、男子トイレの便器が22個(小便器15個、個室7個)、女子トイレは個室のみ12個でしたが、2013年度に行われた整備で女子トイレだけを増やし、男子の1.5倍に当たる個室34個となりました(女子トイレ内に男児用小便器1個を増設)。

◆「空き」でも奥のトイレは使われない
 面積の問題以外にも、「トイレ渋滞」を生む理由があります。
 先に紹介したネクスコ中日本の調査では、トイレの列に並ぶ人の行動について、もう一つ興味深いことが分かりました。  

並んでいる人の行動を観察すると奥の個室が「空き」となっているのに、利用する人が少なく、入り口近くの個室に利用が集中していることがわかりました。
仮に1人当たりのロス時間は短くても、行列する人の数を掛ければ、相当な時間のムダになります。
 こうした調査をもとに、高速道路のサービスエリア(SA)などでトイレの混雑解消に向けた取り組みが始まっています。 

デザインでトイレ渋滞を解消
◆センサーで「空き」を表示
 静岡県沼津市の東名高速道路・愛鷹(あしたか)パーキングエリア(PA)などでは、トイレの個室の入り口にライトを設置し、センサーで利用状況を感知して、使用中なら「赤」、空いていれば「青」と自動的に表示するようにしています。
 ほかにも、人は明るい方へ行きたくなるという心理的な「サバンナ効果」を利用して、トイレの入り口から奥に向かって、壁のデザインを寒色系から暖色系に、照明も徐々に明るくするなどして、空いている奥の個室を利用するように促す工夫をしています。
これにより、奥の個室までまんべんなく利用され、以前よりも混雑が緩和されたといいます。

 順番待ちの列に整然と並んでもらうことも時間のロス解消につながります。
どこで待てば良いか分からないなどの理由で順番を抜かされた人から不満の声が出るなどして、トラブルになるのを防ぐことができます。
 圏央道の厚木PA(内回り)などでは、人の足形などを床面に描き、トイレの順番を待つ位置と並び順が分かるようにし、さらに、入る人と出る人が出入り口で交錯しないように、それぞれの動線を床に描いた矢印で示すようにしています。

 このほか、女性はトイレで化粧や身だしなみを整えることがあり、その順番待ちがトイレ内の混雑にもつかながるとして、トイレとは別に専用のスペースを設けたサービスエリアもあります。

◆デザインで混雑を解消
 スポーツ観戦の際も、トイレのタイミングは重要です。
行列に並んでいる間に、決定的な瞬間を見逃してしまうのは誰も避けたい事態でしょう。
2020年の東京五輪に向けても、大きな課題になると思います。

 Jリーグで昨季優勝した川崎フロンターレの本拠地・等々力陸上競技場(川崎市中原区)では、2015年のメインスタジアム改修に合わせて、トイレの混雑解消にも取り組みました。
サッカー観戦時のトイレ利用は、ハーフタイムなどの限られた時間に集中しがちです。
試合再開までにお客さんが客席に戻れるようにと配慮したそうです。
 ここでも、個室の「空き」がはっきりと分かるような工夫をしています。

 スタジアムの改修を行った日本設計(東京都新宿区)によると、全ての個室ドアが閉まった状態では個室の周辺はまっ白に見えるようにデザインされています。
個室内の壁は女子トイレが赤、男子トイレは青に統一され、白い扉が開くと、個室内の色が見えて、そこが「空き」になったことがわかるという仕組みです。
 動線にも工夫しています。
 用をすませて個室を出ると、すぐ目の前に小さな手洗い場所があります(写真参照)
手を洗い終えて顔を上げると、一番奥にある緑色の壁に目が向く作りになっていて、壁面には矢印が一つ描かれています。
これに従って移動すれば、出口となります。
トイレに入ってから出口までが“一方通行”で、利用者が一度も戻ることなく動くように導く仕掛けになっているのです。
この工夫で、入る人と出る人の交錯も防いでいます。

◆男性は母や妻の立場で考えて
 車で移動する際や混雑した駅、観光地など、トイレの問題が心配になる場面はいくつもありますが、女性はなかなかその悩みを言いだせません。
女性同士でも、世代間で分かり合えないことが多いと思います。

 男性にとってはなおさら、「女性のトイレの問題」は、分からないことだらけだと思います。
しかし、ここで紹介したように、社会的な理解不足や環境整備の遅れに女性は困っているのです。

知らないふりをせず、自分の母親、妻、娘の大問題として考えていただければ、本当の意味での“男女平等”のトイレ整備が実現していくのではないでしょうか。
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする