町内会や自治会って何をする組織なの?
気になる疑問をぜんぶ聞いてきた!
2018/05/24 マイナビニュース(山田井ユウキ)
●ゴミの収集場所を決めているのは実は……
町内会や自治会という言葉を聞いたこと、ありますか?
町や地域の人たちが集まって作った組織や団体のことで、その場所で住んでいる人たちが加入してさまざまな活動を行っています。
とはいえ、町内会や自治会が実際にどんな活動をしているのか、よくわかっていないという人も多いのでは。
「引っ越したら入らないといけないのか」「加入したらいろいろ大変なんじゃないか」など……疑問は尽きません。
そこで今回、町内会や自治会について研究をされている首都大学東京の玉野和志教授に詳しいお話を伺いました。
――そもそも町内会や自治会といった組織がなぜ生まれたのでしょうか。
玉野教授「現在のような町内会や自治会は、その地域に住んでいる人が全員加入することを前提にしています。
これは世界的に見ても珍しい仕組みです。
こうした組織が生まれたのは、大正や昭和といった近代になってからのことです」
――意外に歴史が浅いのですね。その時期に何かあったのですか?
玉野教授「大正時代は都市化の時期で、都市部へたくさんの人が流入しました。
すると、それまでと異なり、隣に誰が住んでいるのかわかりにくくなってくるわけです。
そうした不安を解消するために、町内会や自治会が組織されていきました。
日頃から親睦を深めることで、ある意味自分の身を守ろうとしたんですね。
私はこれを、共同防衛と呼んでいます」
――なるほど。隣人が誰なのかわからないという不安を払拭するためだったんですね。
玉野教授「戦時中はこれが『隣組』という形で、国家の末端組織として機能したわけですが、戦争が終わるとGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により解散させられます。
戦争に協力した組織、とみなされたのです」
――でもその後、復活したと。
玉野教授「ええ。共同防衛という観点から、そういった組織はむしろ戦後こそ必要だったし、住民が自ら地域活動を行う分には行政からしたらありがたいですからね。
70年代くらいからは行政が推奨するようになったし、阪神淡路大震災あたりからは、公然と『自治会に入りましょう』と言うようになりました。
GHQに禁止されていた時代を知っている世代にとっては驚きだったようです」
――よくわかりました。現代の町内会や自治会の活動とはどんなものなのでしょう。
玉野教授「まず、盆踊りや夏祭りといった親睦事業があります。
これは先ほどの共同防衛の観点がもとになっています。
日頃からお互いによく知り合って、仲良くしましょうというわけです。
それから防災訓練、そしてゴミの収集場所の決定ですね」
――ゴミを出す場所も町内会が?
玉野教授「はい。ゴミの収集場所は、町内会や自治会が行政と相談して決めている場合が多いんですよ。
自分の家の前がゴミ置き場になるのは、嫌がる人が多いでしょう?」
――嫌ですね……。
玉野教授「行政が一方的に場所を決めると、揉めるんですよ。
行政には文句を言いやすいですからね。
ですから行政は『地域のみなさんで決めてください』と言うわけです。
『みんなで決めた』なら文句も出にくいですからね。」
――なるほど! ところで、町内会や自治会に入るのは義務なのですか?
玉野教授「町内会・自治会は民間の組織ですから、強制力はありません。
ですから入っても入らなくても問題はありません」
――そうでしたか!
玉野教授「ただ、町内会や自治会の立場からすると、全戸加入でないと意味がないですけどね。
そうでないと共同防衛になりませんから」
●賃貸でも町内会に入るべき?
――正直、賃貸マンション暮らしでいつ別の地域に引っ越すかわからない身としては、今のお話を聞いてもなお町内会に入りたいとはあまり思えないのですが、町内会・自治会に入るメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
玉野教授「メリットと言われると正直難しいですね。
いざ、というときのために近所の人とは仲良くしておいたほうがいい、ということでしょうか。
たとえば被災した場合などはご近所付き合いがあるほうが助かるでしょう」
――それはたしかに。
玉野教授「単身の高齢者であれば孤独死を防ぐことにもつながるかもしれません。
町内会・自治会に入っておくことは、将来、何かあったときのための投資でもあるんです」
――ただ、今は入らない人も多いのですよね?
玉野教授「多いですね。それが今の町内会・自治会の抱える大きな課題です」
――なぜ入る人が減ったのでしょう。
玉野教授「昔はマンションが建つなど新しい住民が入ってきたときには、町内会の人が1軒1軒回って加入を勧めていたんですよ。
ただ、町内会や自治会の人手が少なくなり、高齢化も進んだせいで、それがなかなか難しくなっています。
最近では賃貸マンションなどは回らないことも多くなりました」
――分譲はまだしも、賃貸マンションの住人はまた引っ越していなくなるかもしれませんしね。
玉野教授「賃貸住宅に住んでいる人も、向こうから来ないのにわざわざ自ら町内会や自治会を探して入ろうとする人は少ないでしょう」
――それはそうですね。
玉野教授「そういう事情もあり、以前は8割以上が加入していたような郊外の町でも加入率はどんどん下がっています。
それから、タワーマンションが増えたことも影響していますね。
タワーマンションは人も多いですし、マンション内に自治会を持っていたりしますから」
――そういう意味では地域単位ではなく、建物単位になりつつあるとも言えるわけですね。
衰退というよりも"あり方"が変わりつつあるという。
玉野教授「ただ、そこでも全戸加入と言うとなかなか難しいですね。
近所付き合いを避けるためにマンションに住んでいるという人もいますから」
――ちなみに、きちんと機能している町内会を見分ける方法はありますか?
玉野教授「新たな住民がやってきたら、家まで誘いにきてくれる町内会は機能していると言えると思いますよ。
組織自体にそれだけ体力があるということですから。
あとは、町内会の仕事を輪番でちゃんと回しているところですね。
逆に気をつけたほうがいいのは、仕事を平等に回さず、特定の誰かに任せっきりになっている町内会でしょう」
――なるほど。「勧誘に来てくれるかどうか」というのはわかりやすい見分け方ですね。
どうもありがとうございました!
町内会・自治会の役割や仕事、加入することの意義について伺ってきました。必ずしも加入は義務ではないとのことですが、今後長くその場所で暮らしていくことを考えるなら、地域ぐるみのお付き合いという意味で加入する、というのも1つの安心材料になりそうです。
とはいえ、機能していない町内会・自治会もあるようですので、そのあたりはしっかり見極めておきたいですね。
○玉野和志教授プロフィール
首都大学東京・人文科学研究科教授。
専攻は地域社会学、都市社会学で、町内会・自治会やNPO・ボランティアといった、地域生活や市民活動の社会学的な調査・研究に従事している。
著書に「東京のローカル・コミュニティ」「近代日本の都市化と町内会の成立」「実践社会調査入門」など。