2018年06月06日

風邪薬や解熱鎮痛剤の怖い副作用

風邪薬や解熱鎮痛剤、
怖い副作用はなぜ起こる?
2018.05.30 Business Journal

文=小谷寿美子/薬剤師

「この薬は副作用があるのですか?」
 薬剤師として、患者さんからこれは必ずと言っていいほど聞かれる質問です。
すべての薬に副作用があるのですが、だからといって「あります」と答えてしまうと、言われた方は薬を飲まなくなってしまう恐れがあります。

副作用がないように思える「水」でさえ、量を間違えれば人は死にます。
だから「溺死」があり、2015年には4804人の方が家庭内浴槽で亡くなっています。
川やプールでも溺死はありますから、もっと多くの方が「水」で死ぬのです。
それでも水が安全だと人々が思っているのは、「適量」を守れば水で死なないことを経験を通じてわかっているからです。

 薬の場合、「適量」というのはどれくらいなのでしょうか?
 それを決めるために動物実験と臨床試験があります。

動物実験では、どの量を入れたら薬効を発揮するか? 
どの量を入れたら中毒症状が起こるか? 
さらに、どの量を入れたら死ぬか? ということを調べます。
薬効を発揮する量と中毒症状が起こる量が大きく離れていると、「合格」として次の臨床試験に進むことができます。
 なかには薬効を発揮する量と中毒症状が起こる量が近い薬も「合格」とされることがあります。
多くの動物たちには薬効を発揮しているものの、同じ量で一部の動物たちに中毒症状が出てしまうこともあります。
しかし、それでも「合格」とされるのは、その薬効がどうしても治療上必要だからです。
有名なところでは、「テオフィリン」(喘息治療薬)、「ジゴキシン」(心不全治療薬)、「ワルファリン」(血栓塞栓症治療薬)などがあります。

臨床試験の内容とは?
 臨床試験とは、ヒトを対象とした「人体実験」です。
安全に試験をするためには、動物実験で「合格」したものでなくてはなりません。
まず「ボランティア」と呼ばれる健康成人男性10名程度に薬を飲んでもらい、「用法用量」を決めていきます。
そして次は少人数の患者さんに、この「用法用量」で効果が出ているかを確認します。
効果がより出る最小限の量を「用法用量」として決めます。
さらに患者さんの人数を増やした試験をして、多くのデータを取ります。
有効率、副作用発生率、その副作用にどんなものがあったのか、などです。

ここでいう副作用というのは、薬効以外の症状すべてをいいます。
有効率が低かったり、副作用発生率が高かったりしたものは、薬として発売できません。
 発売されているすべての薬では、「用法用量」が決められています。
この通り使うと薬効が最大限に発揮され、副作用が少なくてすむようになっています。
これが薬の「適量」ということになります。

 前述のとおり、薬の副作用とは薬効以外の症状すべてを指すので、数が多いですし、患者さんはどんな副作用があるか不安になってしまうのです。

副作用の3つの種類
 副作用は、大きく分けると3種類あります。知っているだけで不安は緩和されます。

(1)期待する部位以外で薬効を発揮してしまった
 飲んだ薬は吸収されたのち、血液循環に乗って目的地へ運ばれます。
もちろん目的地以外も通るので、そこで薬効を発揮するのです。
わかりやすい例でいうと「鼻炎薬」です。
この薬の作用は水分の排泄を止めることです。
鼻でその作用を発揮すると、鼻の水分を止める、つまり鼻水が止まるわけです。
これが期待する薬効です。
 それが、もし口の水分を止めるとどうなるでしょう?
 口の水分、唾液の分泌が止まります。
口が乾くのです。
大腸の水分を止めるとどうなるでしょう?
 便秘になってしまいます。実はステロイド薬の副作用もこのパターンで考えていきます。
ステロイド薬は多くの作用があります。
その多くの作用がさまざまな場所で発揮されるので、症状によって投与量は変わります。

(2)肝臓や腎臓へ負担がかかった
 飲んだ薬は排泄されます。
肝臓で分解されて胆汁として排泄される場合と、腎臓でこし取られて排泄される場合があります。
もちろんどちらか一方の時もありますし、両方の臓器で排泄されることもあります。
薬を多くの種類飲んでいると、肝臓や腎臓がアップアップになり、「もう疲れた」とストライキを起こします。
 また、薬そのものや分解中の物質が直接臓器を破壊することもあります。
アルコールが肝臓に悪いというのはご存知かと思います。
アルコールが肝臓で分解される時に発生する「アセトアルデヒド」が直接肝臓を破壊します。
風邪薬や痛み止めで有名な「アセトアミノフェン」は一度CYPという酵素でN−アセチル−p−ベンゾキノンイミンという毒性物質に変換され、その後グルタチオンという物質にくっつくことで無害化して排泄されます。
このグルタチオンという物質にも限りがあるので、くっつけずにあふれた毒性物質が肝臓を直接破壊します。
排泄機能が落ちると体内に残る薬の量が増えるため、それによる中毒症状が出てしまうことが考えられます。

(3)アレルギー反応が起こった
 食べ物アレルギーと同様に薬にもアレルギーが出てしまうものです。
その症状は軽いものから死に至るものまで出てきます。
軽いものは蕁麻疹で、薬を中止してステロイド薬を飲んだり点滴したりすれば治ります。
ひどいものはアナフィラキシーといって全身の蕁麻疹はもちろん、目や口の粘膜が腫れあがり、血圧低下と呼吸困難になります。
これはすぐに対処しないと死にます。
どの薬でもアレルギー反応は出る可能性があります。
そのなかでも多いのが抗生物質、解熱鎮痛薬、造影剤です。

 以上みてきたように、薬を服用する際には、副作用について正しく理解することが大切です。

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posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする