2018年08月19日

沖縄県知事選、最期まで沖縄を守るために生きた翁長知事の遺志を継ぐ戦いの行方

沖縄県知事選、
最期まで沖縄を守るために
生きた翁長知事の
遺志を継ぐ戦いの行方
2018/08/18 HARBOR BUSINESS

 8月8日、沖縄県副知事の謝花喜一郎さんが記者会見を開き、沖縄県知事の翁長雄志さんに意識の混濁が見られるようになったため、しばらくの間、知事の仕事を代行すると発表しました。
 この日の記者会見で初めて、翁長雄志さんの病気の状態があまり良くないことを知らされることになったのですが、その日の晩、翁長雄志さんはそのまま天国へと旅立ってしまいました。

翁長雄志さんのお通夜は10日、告別式は13日に行われ、政治家はもちろん、経済界や米軍からも別れを惜しむために各関係者が駆けつけ、そこには辺野古基地の建設をめぐって対立していた菅義偉官房長官の姿もありました。

 基地をめぐる意見は大きく違えど、そこは同じ政治家です。
本当の心の内は分かりませんが、それでもお悔やみの気持ちがなければ、お通夜に駆けつけることはなかったでしょう。
翁長雄志さんが亡くなったことは、沖縄の未来、いや、日本の未来に大きな影響を及ぼす政治的に重大な出来事。
なので、お通夜が10日、告別式が13日であることは多くの関係者に共有されていたはずで、菅義偉官房長官がお通夜に参列しているのですから、安倍晋三総理が知らないはずはありません。

そして、こちらが告別式が行われる13日の12時45分にTwitterでアップした安倍晋三総理のツイートです。
 これはけっして不注意なんかではありません。
翁長雄志さんの告別式があることを知りながら、あえてアップされている安倍晋三総理のメッセージです。
 どこぞのインスタ女子じゃあるまいし、日頃からかき氷を食べる姿をアップしているわけでもないのに、わざわざアップする必要のない「かき氷を食べる写真」を載せる。
嫌いな奴が死んで、今日もかき氷がうまいのです。
とても大人とは思えませんが、これが「日本の総理大臣」なのです。
今さら始まった話ではありませんが、この国のイカれっぷりは、なかなかハイグレードです。

◆翁長雄志さん以外に
選択肢がなかった
「オール沖縄」の衝撃
 翁長雄志さんの突然の訃報を受け、世の中がお盆休みでウェイウェイする中、一年で最も飛行機代とホテル代が高いシーズンに沖縄に入り、取材することになりました。
お財布へのダメージを考えると、産卵するウミガメのように涙が出てきますが、どこより早く情報をお届けしたかったのです。

翁長雄志さんの遺志を継ぎ、「オール沖縄」は誰を擁立するのでしょうか。
 関係者に話を聞いていくと、衝撃の事実が明らかになりました。
 沖縄県知事選は当初、今年の11月に行われる予定だったのですが、あれだけ痩せ細って体調を不安視する声があったのに、「オール沖縄」は翁長雄志さん一択で、それ以外の選択肢を用意していなかったのです。
つまり、「万が一」のことは何も想定していませんでした。
さすがに亡くなることは想定しなかったとしても、入院する可能性は否定できないだろうに、そういう「万が一」には何も備えていなかったのですから、あまりにピュアすぎます。
なので、自民党や公明党が推す政権側の候補が宜野湾市長の佐喜眞淳さんに一本化される中、翁長雄志さんを失ってしまったオール沖縄に持ち札はなかったということになります。

◆オール沖縄が翁長雄志さんしか
      考えられなかった理由
 今となっては多くの人が「オール沖縄」を、共産党や社民党が中心の「革新系」だと思っているかもしれませんが、そもそも「オール沖縄」は「保守」であり、翁長雄志さんは自民党出身の政治家です。
本当の意味で沖縄県民を守るためにやるべきことは「基地をなくすこと」であり、世界で何があっても、この沖縄を再び戦地にすることがあってはならない。
また、沖縄経済を停滞させている元凶こそが基地であり、これらを解消するには基地を縮小することはあっても拡大することはない。
翁長雄志さんは本来の「保守」としての考え方で、命を削ってまで辺野古基地の建設に反対したのです。  

沖縄は今から73年前に壮絶な地上戦の末、アメリカ軍に占領されました。
 あの時も沖縄では「皇国日本を守るために戦うことが正義」とされ、それこそ誰もが知る「ひめゆりの塔」のような悲劇が、沖縄のあちこちで起こったのです。

「ひめゆりの塔」とは、15歳から19歳の沖縄師範学校女子部と沖縄県第一高等女学校の女子学生たちが召集され、ほとんど機能を失った沖縄陸軍病院で負傷する日本兵たちの救護に尽力したものの、戦況が悪化の一途を辿り、地下壕で潜むことになったのですが、あまりに絶望的な戦況となり、彼女たちが突然、上官から「解散」を命じられた悲劇です。

今さら「解散」と言われても、地下壕から出ることは「死」を意味します。
地下壕に残っても死を待つだけなので、小さなグループを作って地下壕を出ることになったのですが、多くの女子学生たちが逃げようとするも砲弾やガス弾を受け、命を落とすことになりました。
ひめゆり平和祈念資料館には女子学生222名が当時、どんな女の子たちだったのかが書かれており、テニスが好きだったり、オルガンを練習していたり、ごくごく普通の女子学生らしい女の子たちだったことがよくわかります。

 忘れてはいけないのは、こうした沖縄で起こった数々の悲劇は「日本を守るため」と言われた末に起こったことであるということです。

 いまや自民党議員の多くが「日本会議」や「神道政治連盟」などの大日本帝国復活に憧れるカルト団体に籍を置き、ネトウヨをこじらせている安倍晋三総理になってからは、同じ思想を持った人だけが出世するようになってしまったため、ますますネトウヨが幅を利かせるようになり、「日本が攻撃されたらどうするんだ。日本を守るためには自衛隊を軍隊として認め、時として先制攻撃も認めるべきである」と言うようになりました。

 今から73年前の沖縄と同じ話を繰り返しているのですが、実は、文明が進化した現在の日本の防衛システムは73年前より圧倒的に「茶番」です。
なんてったって、日本をぶっ壊そうと思ったら、大きな戦艦も、最新鋭の戦闘機も、頑丈な戦車も必要ないからです。
必要なのはお手軽なロケットランチャーのみ。
こいつをたったの1発、原子力発電所にぶちこんでやれば、一瞬にして日本を人が住めない土地にできるのです。
数千億円かけて建設するイージス・アショア、こんなの「ゴミ」です。

残念ながら、日本は原子力発電所なんてものを重宝して全国に建ててしまった時点で「平和」を前提にしているため、どれだけ勇ましいことを言っても茶番でしかありません。
もちろん、いくら「戦争」だと言っても一応のルールがあり、民間人を殺してはいけなかったり、原子力発電所を狙ってはいけなかったりするのですが、今どき「民間人を殺してはいけない」なんてルールが守られた試しは一度もないので、戦争とは「ノールールの殴り合い」です。
 それを踏まえた上で、「日本を守る」とか言っているオジサンたちの顔を見てください。

「日本を守るために基地を作る」と言いながら、一方では原子力発電を日本のベースロード電源に位置付けると言っているのです。
小学生でも想定できる原発への攻撃は「想定外」。
辺野古基地が完成したところで、普天間基地を返還してもらえる約束ができているわけではないのに、約束してもらえていない段階から基地を作り、珊瑚の海に土砂を投入して、取り返しのつかないことをしようとしている。
これでは基地を減らすどころか増やしてしまう可能性が高い。

翁長雄志知事が命懸けで何を守ろうとしていたのか。皆さんもわかるはずです。
 翁長雄志さんは「保守」の政治家です。
 翁長雄志さんを推してきた地元の有力者たちは、けっして共産党や社民党を支持しているわけではなく、あくまで「保守」である翁長雄志さんを推してきたのです。
だから、翁長雄志さんに万が一のことがあったとしても翁長雄志さん以外に考えられない。
これが「オール沖縄」の現実なのです。

 翁長雄志さんは亡くなりました。
本当はもう少し悲しみに暮れる時間が欲しいところですが、涙を流す時間的余裕はありません。
翁長雄志さんがやりたかった「本当の意味で沖縄を守る」という遺志を継ぎ、立候補する人物を探さなければならないのです。
「オール沖縄」は26日までに話をまとめるとしており、仮に「革新系」と言われる人の中から候補者を立てる場合でも、本当の意味での「保守」の思想が理解できる人でなければまとまりません。
ただ、これまでに入っている情報を精査すると、どうやら有力候補が浮上しているようで、そこまで難航しているようには見えません。
さまざま可能性を考え、協議を続けているところだと思いますが、もしかしたら翁長雄志さんと同じくらい沖縄県民に愛される候補が誕生するかもしれません。
もう少し沖縄に滞在し、取材を続けたいと思います。

◆翁長雄志さんの
     知事としての責任感
 翁長雄志さんは、ギリギリまで病気の状態を伝えていなかったようです。
 僕は取材の過程で、翁長雄志さんの死亡届を受理した市役所の職員さんに話を聞くことができたのですが、死亡届にはどのような過程で死亡したのかを記入する欄があり、それを見ると、ニュースなどで見てきた翁長雄志さんの衰弱する姿とリンクし、「普通はこんな病状であれば誰か他の人に話しただろうに、それをしなかったというのは最後まで自分がやりきるという責任感だったのではないか」と感じたそうです。
 今、沖縄県民の間では「翁長雄志さんは沖縄のために戦って死んだ」と評価されています。

◆佐喜眞淳さん陣営が
主張し始めた「沖縄の分断」
 自民党・公明党推薦で沖縄県知事選に立候補を表明している佐喜眞淳さんは、「基地問題に反対しているオール沖縄が沖縄県民を分断している」と主張し始めました。
 確かに、基地問題は「賛成派」と「反対派」がいますが、みんながみんな同じ感性であるはずがないので、どんなものにも意見の対立は起こります。

 例えば、みんなで旅行をするとしましょう。
ある人は北海道に行きたいと言い、ある人は沖縄に行きたいと言ったとします。
北海道は連日の猛暑を忘れられるくらい涼しくて、広い大地に花が咲き、美しい景色と、味噌ラーメンやスープカレー、海の幸が美味しくて最高です。
いやいや、どうせ暑いなら沖縄でゆったりとした時間を過ごし、青い空に青い海、泳いで踊ってステーキを食べて、泡盛パーティーしちゃいましょう。
意見は対立するけれど、それで「分断」されることはありません。
「ステーキおごるよ」とか「泡盛パーティーに沖縄の友達を誘っちゃうよ」とか、さっきまで北海道に行きたかった人たちに「沖縄に行ってもいいかな」と思わせることで、意見をまとめることができるからです。
そして、これをするのが本来の政治家の仕事です。

 ところが、分断が起こるというのはどういう時かと言うと、北海道に行きたかった人の分まで沖縄行きのチケットを取ってしまうことです。
まったく行きたくなかった沖縄の飛行機を勝手に取って料金を請求する。
その人は飛行機恐怖症で、新幹線で北海道に行きたかったかもしれないのに、有無を言わさず、沖縄行きの飛行機のチケットを取ったらどうでしょうか。
たぶん「行かない」ということになるでしょう。
それでいて「行かないのはオマエが悪いんだからキャンセル代はオマエが払え」とか言ったら、友達は終わります。
これが分断です。

 では、基地問題はどうなっているでしょうか。
自民・公明党で構成される「政権側」は、反対する人たちの意見を聞かずに工事を強行しました。
実力行使をしているのはオール沖縄ではなく、安倍政権であり、分断を作り出しているのは他でもない安倍政権にもかかわらず、沖縄県民を分断しているのはオール沖縄だと主張し始めたのです。
 これはもう完全に、自分からぶん殴っておいてコイツが悪いのパターンです。

 しかし、モリカケ問題にしろ、公文書改竄問題にしろ、いろいろな問題が起こっても「日本を守る」とか言っていれば応援されてしまうのが今のニッポン。
「オール沖縄が分断しているんだ!」と大きな声で言えば、ネトウヨを中心に「分断!分断!」の大合唱です。
こうして日本がどんどん偏っていく。
新しい基地ができ、オスプレイが落ちて、沖縄県民が新たに死ぬようなことがあっても「こんなことがないように沖縄を守る!」とか言っておけば、まるっと解決。
日本はチョロいのです。

◆選挙ウォッチャーの分析&考察
 何事にも「順番」ってものが大切です。
僕は先日、沖縄のガールズバーで可愛い女のコに出会いましたが、いきなり告白なんかしたら超気持ち悪いオジサンです。
だから、まずは彼女に良い印象を持ってもらうために何度か通って、温度を探りながら、仲良くなるところから始めなければなりません。

 基地の問題も同じです。
本当に問題を解決したいのなら、何はともあれ、「辺野古基地ができたら、本当の本当に普天間基地を返してもらう」という約束を取り付けることが大切です。
そうじゃないと沖縄に新しい基地を増やすだけになるからです。

 どうやら日本政府は、「普天間基地を返してもらう」と言いながら、米軍とその約束をするどころか、イージス・アショアやオスプレイの購入に数千億円突っ込んでいるので、返してもらう気持ちは微塵もないようです。
 これだけ戦争の歴史や遺産が残っているのに、あれやこれやと言い訳をつけて戦争を肯定している人たちが政治の上では主流派になろうとしている現実。
ひとたび戦争が起きれば、真っ先に狙われるのは基地のある沖縄ということになりますが、どうせ死ぬのは自分じゃないし、やがて緊急事態条項ができれば、反対する奴らは全員「パヨクの非国民」ってことで牢屋にぶち込んでやればいいのです。

だから、今日も故郷のかき氷はうまい。やっぱり夏はこれですね。
<取材・文/選挙ウォッチャーちだい
(Twitter ID:@chidaisan)>

ちだい
●選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材活動を行う。
選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどをTwitterやnote「チダイズム」を中心に公開中。
立候補する方、当選させたい議員がいる方は、すべてのレポートが必見。
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする