【富田林署逃走】
大阪府民に危険な樋田容疑者を放った
「大阪府警の怠慢ぶり」は常軌を逸する
2018.08.23 Business Journal
文=粟野仁雄/ジャーナリスト
「皆様に多大な不安とご心配をかけ、大変申し訳なく思っている」
大失態に大阪府警の広田耕一本部長は平身低頭だ。
猛暑でぼけているのか。
8月12日夜、強盗致傷や強制性交などの疑いで逮捕されていた樋田淳也容疑者(30)が、富田林署の留置所から逃走した。
所持品はゼロ。
自転車を盗んで羽曳野市に乗り捨て、その後、ミニバイクを盗んで大阪市内などで自転車の女性などからひったくりを繰り返していると見られたが、それらの動きが報じられるとパタリと動きが止まっている。
盗んだとみられる女性の携帯電話を、移動するトラックの荷台に放り込むなど、攪乱作戦はなかなかのもの。
府警は市民に顔写真入りの手配書を配布し、変装を想定した複数の種類の似顔絵をつくる一方、捜査員3000人体制を敷き加重逃走容疑などで捜査しているが8月23日現在、捕まっていない。
どこに潜んでいるのか。
樋田容疑者は身長163センチと小柄なせいか、男はほとんど襲わず、夜間に女性を襲うことが多いので女性は特に要注意だ。
左足ふくらはぎにウサギが小槌を振り上げている姿の入れ墨がある。
兎年生まれ。
逃走時は黒のジャージに灰色のスウェットパンツだった。
なんと、樋田容疑者は面会の際に面会者と拘留者を隔てる厚さ1センチのアクリル板を蹴飛ばして隙間をつくり、弾性を利用してすり抜けたとみられる。
スリッパを署にあったスニーカーに履き替え、脚立を使って裏の塀を乗り越える堂々たる逃走劇。
長い拘留で署の構造を知り尽くしていたようだが、お盆の日曜の夜で出勤者は少なく、署員は誰も気づかなかった。
この日の面会者は弁護人で「接見」という。
一般の面会人のときは署員が立ち会うが、弁護人との接見では、立会人を置かない「秘密交通権」が刑事訴訟法で保証されている。
これは立ち合い署員から会話内容が捜査側へ漏れることを防ぐためで、いわば容疑者の権利擁護のものだ。
しかし「逃走の権利」まで与えてしまっては元も子もない。
弁護士は何も悪くない
樋田容疑者は12日午後7時半頃から弁護人の接見を受けていた。
午後9時45分に面会時間が長いことを不審に思った署員が容疑者の姿がないことに気づいた。
弁護人は午後8時ごろに終了して帰っていた。
署が住民への登録制防犯メールで「男が逃走しました。
戸締りなど確実に行ってください」と注意喚起したのは翌13日午前6時半ごろ。
近所の年配女性は「しっかりしてもらわんと。警察はちょっと怠慢すぎるんとちゃう」と話し、子供を持つ若い母親は「怖くて子供を外で遊ばせられない」と怒る。
接見を終了した弁護人が面会室を出るときにはブザーが鳴るが、耳障りなことから署員があらかじめ電池を抜いてしまっていた。
弁護人が署員に何も告げずに出て行ったことが不思議がられたが、その後の調べで、樋田容疑者に「署員には僕から言っておきますのでそのまま帰ってください」と言われていたことがわかった。
それもこの時の接見だけではなかった。
樋田容疑者は弁護人の退出後、どのくらいの時間で署員が来るのか、などを調べて計画的に脱走作戦を練っていたとみられる。
こうした場合、弁護人の責任はどうなのか。
甲南大学大学院の園田寿教授はこう説明する。
「ネットなどで弁護人を批判する記事も見ますが、このケースではまったく責任はありません。
接見終了を知らせる義務はまったくないのです。
そのために大阪府警は全署にブザーを設置しています。
それを切っておいて逃げられたのなら100%警察の責任ですよ。
弁護人と共謀していたなら別ですが、極端に言えば、署内で逃走するのを見ていても通報義務はないのです。
これは一般の人も弁護人も変わりません」
新たな容疑内容も難しいという。
「署の施設を壊したりして逃げれば加重逃走罪になりますが、初めから外れていて、たとえば押せば開くようなアクリル板だったなら単純逃走罪にしかならない」(同)
おそらく樋田容疑者はある時にアクリル板が外れていることを見つけ、チャンスをうかがっていたのだろう。
今回、留置管理官ら署員の人的な落ち度が際立つが、老朽化した警察署も多い。
簡単に外れるアクリル板など設備のチェックもしてもらいたい。
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