人を小バカにしている安倍政治
65歳以上に職があるのか
2018/10/31 日刊ゲンダイ
毎日新聞29日付の「即位で10連休 非正規悲鳴」という記事は身につまされた。
新天皇の即位により、来年のゴールデンウイーク(GW)は10連休になる。
いま開かれている臨時国会に、即位日の5月1日を祝日とする特例法が提出され、成立の見込みで、祝日に挟まれた平日は休日となる祝日法の規定により10連休なのだが、アルバイトや派遣など非正規雇用で働く人たちは「休めない」「うれしくない」と嘆いているというのである。
旅行業界などではすでに「来年のGW予約が例年の2倍」などと景気のいい話で沸いているが、非正規の人たちにそうした明るい話題はほぼ無縁。
むしろ10連休は、月収の3分の1近くがなくなることを意味し、生活苦に直結するため深刻だ。
それを避けようと、積極的に勤務を買って出たり、別のアルバイトを考える人も。
「10連休で7万円の減収」
「主婦のパートさんが休む分まで働きづめで終わりそう」というのが現実のようだ。
記事で労働組合「首都圏青年ユニオン」の山田真吾事務局長はこう話している。
「10連休を享受できるのは月給で働く正社員だけではないでしょうか。
月収の3分の1といえば5万〜6万円、人によってはもっと減らす。
食費を切り詰めたり、借金したり、あるいはダブルワークや単発のアルバイトで乗り切るしかない人も出てくるでしょう」
■全雇用者の4割を占める非正規を放置
総務省が発表した2017年の就業調査によれば、パートや有期契約、派遣などの非正規労働者は2133万人で過去最多を更新。
雇用者全体の実に4割に達している。
人手不足でありながらも、企業は安い労働力で雇用したいから、正社員の職が大きく増えることはない。
逆に、非正規の悲鳴は「明日は我が身」、なのだ。
ちょっと病気をしたり、家族の介護で離職でもすれば、誰もがいつ非正規労働者になってもおかしくない。
しかし、労働力人口の半数近くが非正規という時代になっても、統計などでいまだ「標準世帯=夫が働いて収入を得て、妻は専業主婦、子どもは2人の4人世帯」をモデルケースにしているようなフザけた政府は、政策決定において正社員にしか目を向けない。庶民の現実を知らない上から目線の安倍政権のことだ。
「10連休で国民はみな大喜び。景気刺激策にもなるし、一石二鳥」とでも計算していることだろう。
正社員でもサービス業などにとってGWは書き入れ時だから、猛烈に働かされる。
10連休といったって、誰もがのんびり休めるわけではないのである。
経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。
「連休はないよりあった方がいいと思うが、正規と非正規など働き方が多様化する中でみんなが一緒に休めるという時代ではなくなった。
正社員でもブラック労働の問題がある。
企業がどんどん安い労働力を求める中、政府は非正規雇用の労働者を守る政策を考えなければならないのに、むしろ規制を緩める方向です。
そこへ外国人労働者の拡大となれば、同一賃金の原則で、さらに賃金は安い外国人に合わせられるでしょう。
どこを向いて政治をやっているのか、ということですよ」
ツイッターには<10連休あるのに怒ってるんじゃなくて、10連休取れない人のことをほったらかしにするから怒っているんだよな>というつぶやきも。
国の政策決定から忘れられ、放置される人たちの憂いが伝わってくる。
「生涯現役」のウソを裏付ける外国人労働者拡大策
こうした対応からもハッキリ言えるのは、安倍政権が打ち出す“バラ色”政策など、掛け声だけのペテンだということだ。
「全世代型社会保障改革」なんてきれいごと。社会保障のパイは増やさず、高齢者から子供向けに予算を付け替えるだけだし、非正規労働者は医療からもこぼれ落ちる。
若年層の非正規労働者に糖尿病患者が増えているというが、食費を削る結果、安価で高カロリーな炭水化物に偏ってしまうことが原因の一端。
仕事を休めば収入減となるため、医者にかかるのも遅れ、悪化してしまうのだという。
「生涯現役」「人生100年」だってそうだ。
高齢者を人手不足の歯車として使いたいだけというのが安倍政権や経済界の本音である。
30日、厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は1・64倍で、依然として高水準が続いている。
しかし、現場ではミスマッチが常態化しているのは周知の事実。
求人が多いのは、建設・土木関係や、介護、接客業。
体力を必要とする仕事が中心で高齢者にはハードルが高い。
経験を生かした事務職を希望する高齢者が多いものの、ハローワークにそんな求人はほとんどないのが実態だ。
経済評論家の斎藤満氏が言う。
「私も60歳を過ぎてハローワークに行った経験がありますが、端末で求人を調べても、ビル管理やIT企業のプログラミング、語学学校や幼稚園・保育園の先生、介護など、未経験の分野ばかりのうえ、体力に自信がないと応募するには勇気のいる職種ばかりでした。
年齢についても、65歳を超えると絶望的に求人が少ない。
政府が推進するように65歳以上の人が働くためには、退職延長によってもともとの職場に居続けられるようにするしかない。
いったん退職したら、65歳で仕事を見つけるのはかなり難しいのです。
国会議員は一度、自分でハローワークに行って、高齢者になったつもりで仕事を探してみたらいい」
■国民に豊かさや安心の実感ナシ
そうした厳しい現実を政府も、実は分かっているのだろう。
だから安倍政権は、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法の今臨時国会での改正に血眼になる。
法案提出前から、来年4月施行なんて拙速すぎるという批判が渦巻いても、深刻な人手不足に悲鳴を上げる経済界の要望を優先するのだ。
対象業種は単純労働を含む14業種まで拡大している。
外食業や宿泊業、ビルクリーニングなど、これが「特定技能」と首をかしげたくなるものも少なくない。
政府は今回の法改正を少子高齢化対策、と明言している。
高齢者では追いつかないから、外国人なのだ。
人手不足の職種と高齢者のマッチングが難しいことが分かっていながら、「生涯現役」と高齢者を持ち上げる悪辣。
“詐欺政権”がやりそうなことである。
「外国人労働者を定期的に受け入れるような社会体制がつくれていないのに、ただ安価で便利な労働力として使おうとしている。
外国人に失礼ですよ。
場当たり的な雇用政策の不備をごまかす弥縫策でしかありません。
安倍政権のやっていることは、一事が万事、国民や労働者のための政策ではありません。
企業のためであり、自分たちの都合しか考えていない。
有効求人倍率が1倍を超えたことを『アベノミクスの成功』のように喧伝しますが、労働者にとって実感の伴った豊かさや安心感が創出できていますか?
見せかけと現実のギャップがここれほど大きな政権は過去にありません」(斎藤満氏=前出)
所得が少ない人ほど負担が重くなる「逆進性」の悪魔的な消費増税で弱者をイジメるだけでなく、キャッシュレスで2%ポイント還元とか商品券とか、小手先対応で庶民を小バカにしている安倍政権。
10連休も全世代型社会保障も、それに追い打ちをかける国民騙しのイカサマ政策だ。本当に本当に許し難い。