2018年12月06日

18年版「ブラック企業大賞」

18年版「ブラック企業大賞」
9社ノミネート
野村不動産、スルガ銀、財務省など
2018/12/05 ITmedia ビジネスオンライン

 ブラック企業大賞企画委員会は12月5日、“今年1番のブラック企業”を決める「第7回ブラック企業大賞」のノミネート企業を発表した。
今回は野村不動産、スルガ銀行、財務省など9社が挙がった。
「大賞」「業界賞」などの各賞は12月23日に発表される。

 労働環境の悪さなどが問題となった企業を毎年選出し、皮肉を込めて“賞”を送るというコンセプトの企画。
長時間労働、セクハラ・パワハラ、いじめ、低賃金、コンプライアンス違反――などの観点から、弁護士やジャーナリストなどで構成される企画委が評価する。

 2016年は女性新入社員が過労自殺した電通、17年は男性営業社員をシュレッダー係に左遷するなどした「アリさんマークの引越社」(引越社グループ)が大賞を受賞していた。

 18年のノミネート企業と、主な選定理由は以下の通り。

・野村不動産
:「裁量労働制」が違法適用されており、16年9月に50代の男性社員が過労自殺していたことが18年3月に発覚。
同社は05年に、会社の中枢で経営企画の立案や情報分析を行う社員を対象に、「企画業務型裁量労働制」を導入していたが、本来は適用対象とならないマンションの営業担当など約600人にも適用していた。
 亡くなった社員もこれが適用されており、1カ月の残業時間が180時間を超えるなど長時間労働を強いられていた。

・スルガ銀行
:18年5月に破産手続きを開始した不動産会社「スマートデイズ」が展開していたシェアハウス投資を巡り、一般投資家に不当な融資をしていたことが判明。
第三者委員会がこの背景を調査した結果、同行が行員に過大なノルマを押し付け、達成できない人に悪質なパワーハラスメントを行っていたことが分かった。
 第三者委がまとめた報告書によると、行員からは「(従業員の)首をつかんで壁に押し当て、顔の横の壁を殴られた」「数字が(達成)できないなら、ビルから飛び降りろといわれた」などの声が挙がっているという。

・財務省
:18年4月、財務省の福田淳一事務次官(当時)がテレビ朝日の女性記者に対し、取材中に「抱きしめていい?」などのセクハラ発言を行っていたと報じられた。
その後、同省の顧問弁護士もセクハラがあったと断定した。
ただ、福田氏は事務次官を辞任したものの、セクハラを否定。
麻生太郎財務大臣も「セクハラという罪はない」「男を番記者にすればいい」などと発言し、事態を軽視していることをうかがわせた。
 公的機関がノミネートされるのは、14年の東京都議会に次いで2度目。
「『女性活躍』をうたう政府の中枢機関で起きたセクハラ事件に対して、その対応がお粗末であったと言わざるを得ないため、民間企業ではないが特別にノミネートした」(企画委の佐々木亮弁護士)という。

●三菱電機、日立製作所など著名企業も
三菱電機
:14〜17年にかけて、男性社員5人が長時間労働に起因する精神障害や脳疾患を発症し、相次いで労災認定されていたことが発覚した。
このうち3人には裁量労働制が適用されており、その中の2人は過労自殺を遂げていた。
 自殺した男性の1人は技術職についており、システムの不具合を修正するため月100時間を超える残業を数カ月繰り返していた。

・日立製作所、
日立プラントサービス
:13年に日立製作所に新卒入社し、のちに日立プラントサービスに出向した20代社員が精神疾患を患っていたことが発覚。同社員は富山県の工事現場で設計・施工管理監督を行って居た際、月に100〜160時間もの時間外労働を余儀なくされた。

また、上司から「いらない」「目障りだから帰れ」「仕事辞めてしまえ」などの暴言も吐かれていた。
 また、山口県の笠戸事業所で、数百人のフィリピン人技能実習生を不正に働かせていたことも発覚。
本来は配電盤や制御盤などの電気機器組み立てを任せるはずが、実際は窓・排水パイプ・カーペット・トイレなどを鉄道車両に取り付ける作業をさせていた。
在留資格の更新ができないことを理由に、すでに99人の技能実習生が解雇されていることも分かっている。

・ジャパンビジネスラボ
:同社は都内で語学学校を運営している。
14年、英語講師を務めていた正社員の女性が、育児休暇中に子どもを通わせる保育園をみつけられず、休暇の延長を求めた。

これを受けた同社は「正社員への契約変更が前提」とした上で、週3日・契約1年の有期雇用への転換を条件に延長を認めた。  

女性は1週間後に保育園をみつけ、職場復帰を希望したが、同社は正社員への復帰を拒否。
15年には「期間満了」を理由に雇い止めをした。
女性は面談で上司から「俺は彼女が妊娠したら、俺の稼ぎだけで食わせるつもり」などの言葉を掛けられた。
18年9月、東京地裁は、同社の雇い止めを無効とする判決を下した。

・ジャパンビバレッジ東京
:ある支店の支店長がクイズを出し、正解者のみに有給休暇の取得を認める“有給チャンス”と呼ばれるパワハラを行っていたことがネット上で話題になった。
「事業場外みなし労働時間制度」を違法適用しており、社員に月間100時間を超える時間外労働を課していたことも発覚した。

・ゴンチャロフ製菓
:神戸市に本社を置き、チョコレートや焼き菓子を製造している同社は、16年6月に当時20歳の男性社員が電車に飛び込んで自殺。
のちに長時間労働と上司によるパワハラが原因であることが発覚し、18年6月に労災認定された。
 同社は製造に失敗した菓子を牧場に送り、動物のえさとして再利用しているという。
そのため男性はミスをすると、上司から「牛のえさ、つくりに来とんか」と責められ、辞意を申し出ると「お前の出身高校からはもう採用しない」と言われていた。
また、この男性は月約80〜100時間の長時間労働も余儀なくされていた。

●「笑笑」「魚民」のモンテローザも
・モンテローザ
:「白木屋」「魚民」などの居酒屋チェーンを展開する同社は、17年6月に福岡市で「笑笑」の店長だった男性が開店準備中に倒れ、不整脈で死亡した。
 この男性は生前、友人とのLINEで
「午後3時から深夜3時まで勤務し、午前6時台の始発まで帰れない。午前8時前にやっと帰宅できるが、正午には起きないといけない」「地獄だ」などと漏らしていたという。

 各賞は今後、企画委内の議論と、同委公式Webサイトで行うWeb投票によって決定する。
同委の担当者は「亡くなられた方もおり、非常に痛ましい事件が多い」と話している。
posted by 小だぬき at 11:14 | 神奈川 ☔ | Comment(2) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「死の恐怖を乗り越える術」多くの患者に出会い考えたこと

がんと向き合い生きていく
死の恐怖を乗り越える術
多くの患者に出会い考えたこと
2018年12月05日 日刊ゲンダイ(佐々木常雄)

「もう治療法はありません」
「あと3カ月の命ていです」
 担当医からそう告げられ、セカンドオピニオンを求めて私の外来へ相談に来られたがん患者がたくさんいます。

 まだほかに治療法がある患者には入院してもらって治療を行います。
しかし、もう治療法が残っていない患者にはどう答えればよいのか?
 しかも初めてお会いする方ばかりです。
結局、真実を話すしかありません。
それでも、眼光鋭く私を見つめる患者の目は、「生きたい」と訴えているのです。

 私は、そんな「生きたい目」とたくさん出会って、「死に直面し奈落に落とされた患者が這い上がる術」や「宗教なしで死の恐怖を乗り越える術」を知りたい、そしてそれを患者に伝えたいと思いました。
しかし、過去の医療において、このような医療は行われてはきませんでした。

 江戸時代に書かれた「医戒」には、
死を告げるとは死を与えると名づけるものである
医師はけっして患者の生きる希望を断ち切ることをしてはならない」とあります。
その伝統は長く続き、ずっと「短い命」、死を隠す医療が行われてきたのです。

 ところが、患者の知る権利や自己決定権が叫ばれるようになった2000年以後は、「あと3カ月の命です」などといとも簡単に告げられ、死の恐怖にさいなまれる患者が多くみられるようになりました。
平均寿命が延び、100歳を越える方も珍しくない時代になりましたが、がんにかかって途中で人生を諦めなければならない厳しさは変わりません。

 哲学者の梅原猛氏は
私たちの生命のなかには、永遠の生命がやどり、それが子孫に甦っていく。
この世の生命は受け継がれていくことに救いがある」と言われます。
しかし、それでは子に恵まれない方はどうすればよいのでしょうか。

 1万人をみとった米国の精神科医キューブラー・ロスは、「人間はさなぎから蝶になるように肉体を脱ぎ捨てて魂となって別の次元に入っていく。
だから死を恐れることはない」と患者に言って回りました。

牧師の窪寺俊之氏は、「たった数十年、仮のこの世に現れただけで、魂は宇宙の彼方に戻るのです。
死は怖くありません」と言っています。
両者とも宗教的な考えが背景にあるのです。

 ドイツの哲学者ハイデッガーはこう述べています。
「死んだら天国にいくとか、自分が死んでも子供が自分の生命を受け継ぐとかいうイメージによって、人は誰でも死の観念を隠蔽しようとする。
しかし、これらは死に対する十分な了解ではなく、ただその厳しさを覆い隠すだけのものである。
逆に、ここから死の不安ということが人間の気分の本質としてつきまとうことになる
「死を直視せよ。良心の呼び声が聞こえてくる」

 ただ、そう言いながら良心の呼び声の説明がないのです。
「がん患者・家族語らいの会通信」には、ある方のこんな言葉が記されています。
「人間の体は死によって解体しても、他の生物や物の一部として永遠に存在し続ける」
 こうした先哲の助言はたくさんあります。
しかし、その多くは自分自身が“安全地帯”にいるうえでの言葉に思えて、命が差し迫っている患者に響くのか、奈落から這い上がれる術になれるかどうかは疑問なのです。

■心の奥には必ず這い上がれる心がある
 悪性黒色腫にさいなまれ続けた宗教学者の岸本英夫氏は、著書「死を見つめる心」の中で「死を無である」とし、これを「大きな別れ」と解するとしています。
これはかなりの説得力を感じ、参考になるように思われました。

 さらに私は、奈落に落ちたが這い上がったと思われる患者に、「どうして這い上がれたか」を聞いてみることにしました。

そうした患者の言葉の中で、最も心に残ったヒントは「心の奥には必ず這い上がれる心がある」ということでした。
 私は拙著「がんを生きる」の中でこの点を取り上げました。
そして、自然に天寿を全うした方が「恐怖でない死」を得られるように、がんで亡くなるとしても安寧な心が表れることはできないのか。
それを模索することにしたのです。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする