2018年12月11日

移民法未明に成立 すべてが悪法、常に強行採決の国民愚弄

移民法未明に成立 すべてが悪法、
常に強行採決の国民愚弄
2018/12/08 日刊ゲンダイ

 週明け10日の会期末を目前にして、国会は8日明け方まで大混乱が続いた。
中身スカスカのデタラメ「移民法」の成立を阻止するため、立憲民主党など野党が徹底抗戦したものの、午前4時9分、参院本会議で可決成立。
それは、アベ暴政がいよいよ極限に達していることを象徴する異様な光景だった。

 7日の参院では、野党が、法務委員長と農水委員長の解任決議案、山下法相と安倍首相の問責決議案を次々と提出。
しかし、いずれも与党が反対多数で否決し、未明の移民法の法務委可決、本会議成立を強行したのだった。
会期を絶対に延長しないという安倍官邸の強い意思も垣間見えた。

 深刻な人手不足を外国人労働者に補ってもらうこの法律は、日本が本格的な多民族国家に移行するという将来の「国の形」を変えることにもなる重要な法案である。
ところが安倍政権は、来夏の参院選対策も念頭に来年4月施行を頑として譲らない。
大多数が最低賃金以下で働かされている外国人技能実習生の失踪理由を「より高い賃金を求めて」と“捏造”までする悪辣さだ。

 外国人労働者の受け入れ人数や業種など法案の根幹部分が真っ白でも、「成立後に法務省が対応する」と逃げの一手。
そのうえ、衆参合わせて審議38時間は、過去の重要法案と比べても異例の短さで強引に押し切る横暴である。
 安倍政権はきのう、移民法とともに、漁業への企業参入を進める「水産改革関連法」も強行成立させている。

70年ぶりの漁業制度の抜本見直しだというのに、こちらもわずかの審議時間で押し切った。
そして一足早く、「水道民営化法」も強行採決のうえ成立させているが、世界は民営化↓再公営化が潮流なのに、厚労省は失敗事例をほとんど調べることなく、周回遅れの法律を通すという、これも、信じがたいデタラメ審議だった。

 最強官庁と呼ばれる財務省が、安倍政権を守るために公文書を平気で改ざんするのだから、法務省や厚労省が移民法や水道民営化法のデータをゴマカすなんて日常茶飯事なのだろう。
「数の力」さえあれば何でもねじ伏せられるという安倍のおごり高ぶった態度に、いまや永田町も霞が関も染まり切っている。
 政治評論家の野上忠興氏がこう言う。
「安倍首相にとって国会は単なる通過機関でしかないのでしょう。
安倍首相の『私が最高責任者』『私が立法府の長』という発言が全てを物語っていますよ。
『選挙で多数を獲得し、国民の負託を受けた最高責任者である自分が決めたことなのだから、何か文句あるのか』という考えなのです。
議会制民主主義や三権分立を尊重する姿勢はありませんし、安倍首相にそれを求めても無理なのかもしれません」

6年間で加速度的に量産  
会期わずか48日間の臨時国会で3つもの法案を強行採決したわけだが、第2次安倍政権になってからの6年を振り返れば、この政権に、果たしてマトモな国会運営が一度としてあったのか。
これほど強行採決を量産した政権がかつてあっただろうか。

 最初は2013年の「社会保障プログラム法」だった。
民主党政権下の3党合意で決まった「税と社会保障の一体改革」として、消費増税とセットで社会保障の充実が図られるはずが、自公政権に交代すると一転、社会保障を削減したアレである。

同年には「特定秘密保護法」も強行採決した。
15年には「改正派遣法」を強行。
当時、民主党だった山井和則衆院議員は
「労働者の命に関わることは労使合意の上でやってきた。
労働法案の強行採決は、国会史上初の暴挙」と猛批判していたが、過去の自民党政権が慎みを持ってきた領域にまで強引に突き進んだのがこの時だった。

 そして15年といえば平和憲法破壊の「安保法」だ。
かつてないほど大勢の国民が国会前に連日集結し、戦争ができる国につくりかえられることに徹底的に抗議した。
それでも安倍は容赦なく、強行採決に踏み切った。  

16年は、農業や医療などの崩壊を招く「TPP関連法」を強行。
この頃には、審議が始まる前から大臣や与党議員が強行採決の可能性を公然と口にするほど、強行採決は“当たり前”の風景となってしまった。
この年には、「年金カット法」も強行成立。
17年には「改正介護保険法」「共謀罪」だ。

安倍政権は共謀罪を成立させるにあたって、委員会採決を省略する「中間報告」という奇策にまで手を付けた。
 今年は、別名・過労死促進法と猛批判された「働き方改革法」に始まり、「カジノ実施法」「参院定数6増法」を通常国会で強行。
今臨時国会では移民法を含む3法案である。

こうして見てくると、6年間で、強行採決が加速度的に増加しているのがよく分かる。

「かつて55年体制といわれた時代は、与党の自民党と野党の社会党が表では拳を振り上げつつも、水面下で妥協点を探る政治が行われ、偽りの緊張関係ではありました。
しかしそれでも、与党は野党の意見を取り入れながら法案を修正したものです。
与党には、少数野党とはいえ、国民の代表を全く無視してはいけないという良識もありました。
三角大福中のように次の総理総裁を狙う人材が列をなしていたことも大きいでしょうね。
今は、ポスト安倍を狙う人材不足で、党内から異論が上がらないことも、安倍首相のやりたい放題を増長させる要因になっています」(野上忠興氏=前出)

■合意なく力ずくで進める劣化した政治  
12年、「TPP断固反対!」を掲げて政権に返り咲いたのに、TPPに前のめりになった安倍は「TPP断固反対と言ったことは1回もございません」と言い切った。
要するに、安倍政権というのは、嘘から始まった政権なのである。
 だから、ペテンも口から出まかせにも、痛痒を感じない。

武器輸出を「防衛装備移転」と言い換えて解禁。
戦争法は「平和安全法」で、他国の戦争に加担する集団的自衛権の行使を「積極的平和主義」という美名に、平然とスリ替えてきた。
国民に対する誠実さがみじんもない政治。それが安倍政権なのである。

 6年間に積み重ねてきた強行採決の数々は、3つの目的を持って進められた法律だということに気づく。
1.安保法や共謀罪に代表される「国民を抑圧する」法律。
2.年金カットや改正介護法など「国民に負担増を押し付ける」法律。
3.カジノ法や水道民営化など「お友達を儲けさせる」法律。

移民法、働き方改革、改正派遣法は、国民負担増とアベ友優遇の両方に当てはまるだろう。

 強行採決した法律には、世論調査で過半数が「今国会で急いで通す必要はない」と答えたものが少なくなかった。
つまり国民が望まない悪法だから、強行採決するしかなかったのである。
「由らしむべし、知らしむべからず」で、国民はただただ国家に従っていればいい。
これぞ、独裁者気取りの安倍一派が描く国家像だ。
残念ながら、この国は着々とそこへ近づいている。

政治評論家の森田実氏が言う。
「安倍政治というのは、与野党の合意や国民の理解を得ようとせず、力ずくで進める極めて劣化した政治です。
これで得をするのは自分の利益だけを追求する強欲経営者やトランプ大統領の米国。
結果、対米従属と軍国主義が加速する展開になり、国民を置き去りにしたまま走っている。
国民は目を覚まさなければいけません」  

この国の有権者は、安倍のような男に長期政権を与えたことを、いつ後悔するのだろうか。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(2) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする