2018年12月13日

:現代の奴隷制、恥ずかしい日本

やはりどう考えても改正入管法が「現代の奴隷制」だとしか思えない件
2018/12/12  HARBOR BUSINESS Online

ついに「現代の奴隷制度を認める」法案が強行採決を経て成立してしまいました。
そう、改正出入国管理・難民認定法(以下、入管法)です。
 これで自分たちのことを「先進国」だと思っているのですから、ずいぶん恥ずかしいことになっています。
どれだけメチャクチャなことをしていても、国民はほとんど政治に関心がないので、昨今の「何でも批判するのは良くない」という風潮から、いつまでも安倍政権の支持率は高い状態にあり、みんなが気づかないうちに、世界ではどんどん恥ずべきポジションに成り下がっています。
いよいよ日本は「奴隷を作ることに何のためらいもない」という人権の存在しない国になってしまったのです。

もともと日本の国会議員の意識が「下々の国民に人権など必要ない」というものになっているため、いつしかこんな日が来るんじゃないかと心配されていましたが、本当にそういう時代が来てしまったので笑えません。

 本来は人の命にも関わる問題なので、しっかり話し合い、とことん議論を煮詰めなければならないのですが、安倍晋三総理がアルゼンチンに外遊に行くスケジュールになっているためなのか、財界からの強い要請があったせいなのか、こんな法案はとっとと通してしまった方がいいということで、データが捏造されていようが、野党がどれだけ反対していようが、国民の過半数が納得していなかろうが、とにかく通すといったら通すということで、今となってはほとんど形式だけになってしまった野党のフィリバスターも虚しく、あっさりと衆議院を可決し、参議院も数の論理であっさり通過してしまいました。

「こんなに話し合わないなら国会なんて必要ない」と言えるところまで来ています。
あまりにも酷いことになっていて、新聞の社説などでは厳しく批判されているのですが、最近は新聞を読む人が減り、多くの人が見るであろうテレビのワイドショーは貴乃花の離婚や宮崎県の一家心中に夢中です。
国家的な危機をほとんど報じてくれないのです。

◆外国人労働者の環境は「奴隷」と呼ぶにふさわしいもの
 ブローカーのような人たちに日本に連れてこられた技能実習生たちは、パスポートを取り上げられ、過酷な労働環境の中で仕事をさせられ、転職の自由を認められていないため、逃げ出す人たちが後を絶ちません。
 逃げ出した人たちは「不法滞在」という罪を着せられ、逮捕されれば人権のない牛久などの「入国管理センター」の収容所で過ごすことになり、自殺する人まで出ているのです。(参照:相次ぐ外国人収容者の死。牛久の東日本入国管理センターで何が起きているか)

 日本で技術を習得し、母国で活躍しようと夢見た人たちが、想像以上のディストピアに遭遇し、絶望に暮れて命を絶つのです。
日本がこんな国に成り下がっていることを日本人は知らないし、人権が無視されていることを無視している状態なので、世界中から少しずつ非難されるようになってきています。

 日本はたびたびドヤ顔で「先進国」を自称しますが、世界の人たちは誰も日本のことを「先進国」だなんて思っちゃいません。
先進国と呼ぶには200年遅れと言えるほど人権が酷く無視されていて、時給換算で300円になるとか、残業代が一切支払われないとか、狭い部屋に大量の労働者が押し込められているとか、そういうことについての対策を一切話し合うことなく、安倍政権は強行採決してしまったのです。

◆東京入国管理局の人権に対する意識の無さ
 これだけ人権が無視されているにもかかわらず、11月20日に東京入国管理局はTwitterで「落書きはやめましょう」というツイートをアップし、東京入国管理局から徒歩5分ほどの場所にある港南大橋の歩道橋に書かれた抗議のメッセージである「FREE REFEGEES(難民に自由を)」を紹介し、
「表現の自由は重要ですが、公共物です。
少しひどくはないですか」としたのです。

 人権が無視された末に絶たれた命があるというのに、東京入国管理局はこれを「固定されたツイート」にして12月11日現在もアカウントのトップに表示し続けています。
加害者である東京入国管理局がまるで被害者のような立ち回りを見せているというわけです。
 このツイートには「これが落書きにしか見えないオマエたちは心底腐っている」と抗議する人たちがいる一方で、肯定的に受け止めるネトウヨがいるということも知っておかなければなりません。

 不法滞在という罪を犯している人間なのだから捕まるのは当然だろうというのです。
しかし、どうして彼らが不法滞在を犯すことになってしまったのか。
その原因は日本の企業や政治が作り出しており、奴隷のように働く外国人労働者に対し、「酷いことをしている」という意識が欠如していることにあります。

日本が美しい国だと言っているのは一部のネトウヨだけで、政府も民間も一緒になって外国人労働者が奴隷のように働かされる環境を整え、そういった人たちを捕まえては収容所に閉じ込め、そして、耐えられない人や病気の人は殺しているのです。  

僕たちには職業選択の自由があり、それは憲法で保障されています。
 会社に勤めてみたものの、その仕事が続けられないと思ったら辞めればいいし、別の仕事をしても良いのです。
ところが、日本にやってくる技能実習生には職業選択の自由が与えられていません。
パスポートを取り上げられ、逃げられない環境を作られた上で低賃金のブラック労働を強いられるのです。
その時給は最賃以下。酷い場合は180円とか300円とかいうケースもあるほどです。
いずれにしても拷問のような低賃金で働かされる日々が繰り返されています。

 1日16時間とか17時間とか働かされ、病気になったら自己責任だと言われる。
仕事で指を切断する事故に巻き込まれた男性が、医療費を自己負担させられたあげく解雇され、とっとと国に帰れと使い捨てにされた例も報告されています。
 こうした事例が相次ぎ、働いてもお金を稼げない環境の中で「帰国するなら自己負担」と言われた人たちが、そこから逃れる手段は「会社から逃げる」しかありません。
どこかの知り合いを頼りにひっそりと暮らし、時に不法滞在と言われるようになってしまうのです。
日本人はこれを重罪を犯した犯罪者のように扱い、牛久にある東日本入国管理センターの施設に収容された末、病気を訴えても病院に連れて行ってもらえず、腐った食事を食べさせられて腹を壊すようなことがあっても「自己責任」という言葉を突きつけています。

今に外国人たちにやっていることが自分たちに向けられるかもしれないのに、何が起こっているのかをよく見ることなく、ただ「不法入国は犯罪である」という部分的な正義を手にフルスイングでぶん殴る。
これが今の日本の姿です。
そういう人たちが語る「愛国」って何なのでしょうか。

◆入管法の改正「その必要はない」が64%
 朝日新聞社が11月17日と18日に実施した全国世論調査では、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法の改正案を今国会で成立するべきかどうかを尋ねたところ、64%が「その必要はない」と答え、「成立させるべきだ」という人は22%でした。

 国民の過半数が「必要ない」と考えているのに、まったく話し合うことなく強行採決に踏み切っているのですから、世論をまったく無視していると言えます。
ちなみに、外国人労働者の受け入れそのものについてどう思っているのかという点では、賛成が45%、反対が43%となっており、かなり拮抗しています。
 そもそも外国人労働者を受け入れるかどうかについても賛否あり、どちらにしても時間をかけて話し合わなければならないはずなのに、時間をかけて話し合うより強行採決してしまった方が世の中に騒がれないで済むとでも思っているのでしょう。

しかし、そうやって国民の声を聞かずに自分たちのやりたい放題をやっていると、絶対にそのしわ寄せがやって来るのです。しかも、そのしわ寄せは安倍政権に来るのではなく、僕たち国民に襲いかかってくるのです。

◆成立を急ぐばっかりに中身はスカスカ
 入管法の改正案は「特定技能1号」という資格を取れば、5年間の在留期間を認められるというものです。
「特定技能1号」は日常生活に支障がない程度の日本語能力試験と、各業種を所管する省庁の技能試験などを経て取得することができ、家族と一緒に過ごすことはできません。

家族と一緒に過ごせないというハードルを設けることで帰国を促す意味があるのだと思いますが、日本の労働力不足というピンチを助けてもらう存在なのに、その人たちが5年間も家族と過ごせないというのは、その人の人生をどう思っているのでしょうか。
 そして、「特定技能2号」という資格を取れば、在留期間の更新ができ、家族と一緒に過ごすことができるというものになるそうですが、そのハードルはめちゃくちゃ高くすると宣言しています。

 安倍政権は、この「特定技能2号」を取得できる人は少なくするので、ほとんどが5年以内に母国に帰ることになるのだから、これは「移民ではない」という主張をしています。
しかし、1号と2号にどれくらい難易度の違いがあるのか、2号の水準に達していると判断する測定方法は何なのかなど、細かい部分が何も決まっていないのに、とりあえずその外側だけを決めて通過させているので、完全なるザル法案です。

 また、外国人労働者を奴隷のように使っている悪質ブローカー的な企業が野放しになっているため、こうしたブローカーたちが法の抜け穴を利用しないとも限らないのに、ろくすっぽ話し合わないため、問題点の指摘が終わらないまま、このザルみたいな法案が通過してしまったのです。
 本当は「保守」とか「愛国」とか言っている人たちこそ真剣に考えなければならない問題にもかかわらず、ネトウヨの皆さんは無言です。
なぜなら、この問題を騒ぐネトウヨのリーダーがいないため、ネットで何を騒いだらいいのか分からないので、特に意見を持ち合わせていないからです。
そして、こうした問題がザルになると、将来的に社会不安が増大するかもしれないのに、問題が起こったらその時はその時ということで対処しようとしているのです。

◆日本人労働者の待遇も改善される道が絶たれた
 通常、需要と供給というのはバランスの上に成り立っているもののため、働く人が減ってしまった時には需要が高まって給料が上がるはずですが、働く人が減っても給料は据え置き、もしくは減らしているというのが現代の日本です。
 外国人労働者は搾取の温床になっていますが、だからと言って、日本人労働者が搾取の温床になっていないのかと言われたら、そんなことはありません。

仕事の量は増えるばかりなのに給料が上がらず、そこに安価な賃金で働く外国人労働者が入ってくる。
そうすると今度は安価な外国人労働者に比べて日本人が働いていないということになり、日本人まで外国人労働者と同じような賃金で働かされるか、職を失うかの2択になります。

 こんなことにならないように慎重に検討しなければならないのが「入管法」のはずなのですが、安倍政権は現場で働く労働者のことなんて微塵も考えていません。
政治家の皆さんが仲良しなのは全員「経営者」なので、上級国民様が儲かるのであれば、これは良い法案ということになるのです。
 ただ、会社というのは労働者がいなければ成り立ちません。
賃金が上がらないとモチベーションも上がりません。
諸外国ではいかに給料を上げるかが会社の売上を上げるポイントだということに気づき、どんどん給料を上げようという動きになっているのに、日本は世界の潮流と逆を進んでいます。
いよいよ韓国の都市部と日本の田舎だったら、韓国の方が時給が高いというところまで来てしまいました。
もはや賃金の上で韓国に抜かされ、日本人が高い賃金を求めて韓国に出稼ぎに行く日は、そう遠くない未来になってきているのです。
「保守」とか「愛国」とか言っている皆さんこそ、本当にそれでいいのでしょうか。

 技能実習生の問題は人権問題であり、明らかに人の命がかかっている問題です。
そして改正入管法はその技能実習生の問題と地続きの話です。
従業員の多くが非正規雇用になり、それなのに責任は社員並み。
それどころか「オマエも働く以上はプロなんだから、経営者のような意識を持て!」みたいなことを平気で言ってしまう、脳味噌が何かでやられているとしか思えない経営者がたくさんいるほどです。


しかし、それを安倍首相が海外に行くから、あんまり話し合わずに強行採決するなんて愚の骨頂です。
 可決するにしても、デリケートな問題だからこそしっかり話し合うべきだと思いますが、話し合うことすらしないというのが現在の安倍政権です。
 こんなに人権を無視できる安倍政権は酷いですが、それを認めている国民がたくさんいることも事実です。
 今の日本は外国人労働者を奴隷のように働かせることを正義としている国。
いつか立場が逆転するような出来事が起こり、日本人が奴隷のように扱われるようになって初めて反省する日が来るのかもしれません。
そうなってから気付くのでは遅いのです。
少しでもいいから政治に関心を持つところから始めましょう。
<取材・文/選挙ウォッチャーちだい(Twitter ID:@chidaisan)>


ちだい
●選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材活動を行う。
選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどをTwitterやnote「チダイズム」を中心に公開中。立候補する方、当選させたい議員がいる方は、すべてのレポートが必見。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(2) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする