山本太郎氏、日本母親連盟を支持者の面前でぶった斬り!
2019.02.28 ハーバービジネスオンライン
藤倉善郎(やや日刊カルト新聞総裁)
2月26日、くにたち市民芸術小ホールで開かれた日本母親連盟西東京地区主催の講演会に参議院議員の山本太郎氏が登壇。
同連盟の関係者の非科学的な言動や、ニセ科学と指摘されている「ホメオパシー」との関係、右派団体「倫理法人会」や「日本会議」等との関係などを指摘し、今夏の参院選において同連盟からの支援は受けないと断言した。
日本母親連盟は、昨年設立された政治団体。
代表者の阪田浩子氏は、神奈川県倫理法人会・女性副委員長。
日本会議代表委員を務める加瀬英明氏を会長とする「国家ビジョン研究会」のメンバーでもある。
顧問の医師・内海聡氏は、宗教団体「サイエントロジー」とともに反精神医療運動を行うほか、反ワクチン運動やホメオパシーにも関わる。
山本氏は講演で、いわば「敵地」に乗り込んで右派とニセ科学・ニセ医療の人脈・思想が交錯する日本母親連盟の実情を面と向かって指摘し、自らとの立場の違いを突きつけた形だ。
ネット上では、「正しいカルトの叩き方」などと称賛の声も挙がっている。
◆日本母親連盟はネトウヨ?
日本母親連盟は、昨年8月に前出の内海氏がブログで設立を表明した。
〈目先の目標としては47都道府県に一支部、一地方議員(市議会議員や町議会議員や県議会議員)とし、来年にある統一地方選挙および参議院選挙での議席獲得を考えます。〉
Facebook等で「目標1000万人!メンバー募集中」と宣伝し、所在地や代表者などを明確にしないまま全国に支部を設立したと称して多数のFacebookページを開設。
同連盟のメールマガジンによれば、今年1月時点で41支部が開設されている。
日本母親連盟は、「薬に頼らない医療の推進」「ワクチン及び検診強制の禁止」「近代史教育の強化」「原発稼働ゼロおよび原発廃炉の推進」「生活保護システムの見直しと不正受給の徹底調査」「外国に依存しない国造りの推進」「憲法改正および憲法9条問題については議論を深める」といった内容の「マニフェスト」を掲げる。
これらを「ネトウヨ的」と指摘する声もあった。
この点はわかりにくいかもしれないが、それを明確にして見せたのが、今回の山本太郎氏の講演だった。
◆日本母親連盟流「反原発」の正体
2月26日の講演会は、前半が、山本氏の政治活動を描いたドキュメンタリー映画『BEYOND THE WAVES』(アラン・ドゥ・アルー監督)の上映会。
後半が、約2時間にわたって山本氏が会場との間で政治や政策について質疑を行うという構成だ。
午後7時10分頃から始まった質疑で山本氏は、フロアからの質問や話題提供を受ける形で貧困対策や経済政策を語り、安倍政権を批判した。
特に消費税をめぐっては、消費税の減税や撤廃ではなく税率の凍結を主張する野党の戦略も批判し、野党に消費税減税を政策とすることを求める署名活動を呼びかけた。
クライマックスは、質疑の残り20分というタイミングで唐突に訪れた。
フロアの男性のこの質問。
「山本太郎さんは日本母親連盟から選挙に出るんですか」
山本氏が「日本母親連盟に入られている方、どれくらいおられますか」と問いかけると、ほぼ満員となった定員270席の会場では来場者の3〜4割が挙手。
半数以上が、会員ではない人々だ。
「お話を聞きたいと言われる方は、スケジュールが合えば行きます。考え方が違う人とでも話はしようと思います。ですが、いまお尋ねがあったのは、選挙も一緒にやるんですかということなんですが、(日本母親連盟と)選挙を一緒にやるというのは難しいなというのが私の見解です」(山本氏)
山本氏は、もともとこの講演で日本母親連盟について話すつもりでいたようだ。
「日本母親連盟と山本太郎の考え方の相違」
そんなタイトルがスクリーンに映し出される。
続いて、こんな文章が前提として示される。
「政治的な主張や思想信条等は、いかなるものであっても、個人の自由。
たとえ、それが論理的な矛盾、非科学的なものであっても、究極的には『それを信じる』ことは自由。
それ自体を批判しているわけではなく、個人を攻撃する意図はありませんという前提条件を最初にご了解下さい」
ここから、日本母親連盟が掲げる政策や関係者の発言などを具体的に指摘し批判する、怒涛のスライドショーが始まる。
「(『原発稼働ゼロおよび原発廃炉の推進』という政策は)これだけ読めば山本の考えとズレはないと思うんですけども、一方で、今年2月の母親連盟神奈川県支部の発足集会で母親連盟の顧問(杉田穂高氏=歯科医)の発言を見てみると、こうです」
スライドで、その発言が映し出される。
〈311福島大震災、あれはやられたんです。
(略)福島からはるか離れた海洋上にいた空母があるんです。
アメリカの。個々の乗組員もすごく被爆して、みんなガンになってるんです。
(略)海底に核爆発を起こして、みんな被曝したから〉
これについて山本氏は、東日本震災の新元が宮城県の東南東130km付近であり、地震発生時にその空母(ロナルド・レーガン)がいた位置が日本の東方約1500キロの西太平洋だったことを指摘。
「ちょっと、話がよくわかんないといいますか……」(山本氏)
ここで再び、先程の前提条件を読み上げる山本氏。
「政治的な主張や思想信条等は、いかなるものであっても、個人の自由。
たとえ、それが論理的な矛盾、非科学的なものであっても、究極的には『それを信じる』ことは自由(以下略)。
けれども、そういう方が顧問にいるところと一緒に選挙をやるというのは、なかなか考えづらい」
次に、母親連盟の顧問ではないが、顧問である人(内海聡氏)を応援している由井寅子氏の発言が紹介される。
〈放射能に対してどのように振る舞うべきなのかが、理解されるでしょう。
(略)放射能を信頼することです。
(略)そしてその自信の中で病原体や放射能に撒けない免疫力を取り戻すことができるのです。
そしてそのときに病原体がその存在意義を失い消滅するように、原発も核兵器も消滅していくと思うのです。(略)〉
「なんか信仰か何かなのかなあと一瞬、思っちゃうんですね。
これ、安倍昭恵さんとも同じような主張なんですよね」(山本氏)
安倍昭恵氏のFacebook投稿が紹介される。
〈私は放射能に感謝の気持ちを送ります。ありがとう・・・〉
会場からは笑い声。
「考え方は自由なんですよ」(山本氏)
話は由井寅子氏に戻る。
病気の原因とされる物質を極限まで希釈した水を砂糖玉(レメディー)にたらし、それを飲むことで病気が治るとするホメオパシーの主張を山本氏が説明。
由井氏が代表を務めるホメオパシー医学協会のウェブサイトにある由井氏の文章が示される。
〈今回の原発事故は私たち日本人が敗戦と共に失ってしまった民族の誇りと愛国心を取り戻す大きなチャンスでもあるのです。
そのためにはウラニウムのレメディーとプルトニウムのレメディーが必要でありホメオパシーは必要なのです〉
「で、実際にこの由井さんの団体が商品化されているものが、福島の土を採取して作られたホメオパシーレメディなんですね。
それって、まあ、いいんですけどね。
選びたい人は選んで、選びたくない人は選ばないっていうのはアリなんですけど、ちょっと理解に苦しむ部分があるなというのが、私の気持ちです。
で、この母連の代表の阪田(浩子)さんという方と東京支部長も、由井寅子氏に協力を仰いでいたと」(山本氏)
母親連盟東京支部長のブログが示される。
〈ホメオパシーの基本キットが全国に行き渡るように…というのが、寅子先生の願いです。私たちも賛成!〉
「政治的な主張や思想信条等は、いかなるものであっても、個人の自由。
たとえ、それが論理的な矛盾、非科学的なものであっても、究極的には『それを信じる』ことは自由(以下略)」(山本氏)
◆倫理法人会、日本会議、歴史修正主義……
「で、その(日本母親連盟代表の)阪田さんという方は、倫理法人会の関係の方であると。
阪田氏の現在の肩書で気になるのは、『神奈川県倫理法人会・女性副委員長』の経歴であると。
倫理法人会は、一般社団法人「法人倫理研究所」が企業経営者向けに展開する自己啓発セミナーのこと。
倫理研究所は、あの日本会議の有力構成団体である。
これ、歴史修正主義に詳しいジャーナリストの上杉聰さんのお話。
倫理研究所の活動から、日本会議の運動に目覚めた中小企業経営者は多く、その最たる事例が、倫理法人会が主催する『早起き会』で愛国運動に目覚め、日本会議にのめり込んだ籠池泰典夫妻(菅野完氏にょる調査)」
安倍昭恵氏と並んで写る籠池夫妻の写真が映写される。
続いて山本氏は、日本母親連盟の「マニフェスト」への批判に移った。
対象となったのは、「メディカルゴールド免許制度の実施」「近代史教育の強化」「児童相談所のシステム見直し」「生活保護システムの見直しと不正受給の徹底調査」「水と土地を外国に渡さない施策」「憲法改正及び憲法9条問題については議論を深める」。
「メディカルゴールド免許制度」は、健康維持に取り組み病院に1年間通わなかった人の保険料を減額するシステムだ。 「自ら健康な状態を維持することには異論はないが、一方でこれは『保険の自己責任化』の主張にも繋がりかねない。弱者切り捨てのために利用される恐れがある」(山本氏)
「近代史教育の強化」については、日本母親連盟は、歴史の指導要領を改定し、国が一部費用を負担して「近代史の専門家」を学校に外部招聘するとしている。
「『南京大虐殺はなかった』『従軍慰安婦はデマ』といった歴史修正主義的な主張を展開する、日本会議系の保守系諸団体は、近年、そのような主張をする『保守系論壇人』を『近代史の専門家』と名乗らせ、行政内部や学校現場に派遣する活動を活発化させている。
政策の『近代史の専門家』がどのような人々を指すのか判然としない」(山本氏)
山本氏は、ウェブメディア「トカナ」に掲載された前出の杉田氏(日本母親連盟顧問)のインタビュー記事を示した。
〈連合国側は500年も続いた欧米による支配の歴史を知られたくなかったし、それを覆そうと試みた日本の貢献を封印し、何もかも日本軍が悪かったという洗脳をしたかったのです。
(略)日本バッシングはまだまだ続きます。
昨今、日韓関係において問題になっている慰安婦問題や南京虐殺をめぐる歴史にも、見直されるべき点が多数ある。
(略)自ら真実を主張することを固く禁じられた状態が、70年以上経った今も継続している。
これはもう、人々がウソの歴史に徹底的に洗脳されていることにほかなりません〉
「政治的な主張や思想信条等は、いかなるものであっても、個人の自由。たとえ、それが論理的な矛盾、非科学的なものであっても、究極的には『それを信じる』ことは自由ですけどね、はい」(山本氏)
「児童相談所のシステム見直し」は、児童相談所が児童虐待を防止する役割を果たせていないため改革するというのが、日本母親連盟の主張だ。
山本氏は、この主張については否定しなかったが、代わりにこんな問題を指摘した。
「この母親連盟の内海さんの著書には、親の体罰を肯定する記述というのもあるんですね。
『児童相談所の怖い話』の中には、ケツバットだけで5年間、(子供と)完全隔離というケースがあると。
『体罰の是非はどうあれアザが出るほどケツバットすることの是非が問われることはあるかもしれないが、親の非を挙げるとすれば、それだけである』と。
十分じゃないですか? ありえないでしょ?
ケツバットしてケツにアザができるほどやるというのは。
この本では、内海さんと『体罰の会』の会員と、この事例の父親が対談したと。
児童相談所に問題があることは確かだけど、その問題と体罰を肯定することとは全く別問題です」(山本氏)
「体罰の会」は、「子供には体罰を受ける権利がある」と主張する団体で、会長は日本会議代表委員・加瀬英明氏。加瀬氏は、日本母親連盟の阪田浩子代表がメンバーとなっている「グローバル政策研究所」の会長でもある。
日本母親連盟の「水と土地を外国に渡さない施策」は、水道民営化に反対するというもの。
山本氏はこれについて「全く異論なし!」と言い切ったが、その後にこんな話が続く。
「けれどもですね、日本母親連盟の神奈川県支部の集会での神奈川県市部長の水道民営化反対についての発言を聞いてみると、ちょっと首を傾げてしまう部分がありました」(山本氏)
スクリーンに、その発言内容が映し出される。
〈今日、私はお水を持っているんですけど、これは『マザー・ウォーター』と呼ばれています。
どんなお水かと言うと、多分、7、8年くらい前に南極に世界の長老たちが集められたことがありました。
『グレート・シャーマン』と言われるような人たちですね。
彼らが南極に集められて、地球のために儀式をしたんです。
その儀式をしたときに彼らが受け取ったメッセージが、『地球の水の波動をもとに戻しなさい、波動を原初のものに戻しなさい』ということだったそうで、地球の波動を原初のものに戻すために造られたのが、このマザーウォーターなんです。
(略)私はこのマザーウォーターと水道民営化ってたいへんつながっているなあって思うんです〉
会場から、クスクス笑い声が起こる。
〈水というのは情報を記憶する媒体でもあるので、水に記憶されている情報自体がダメだから、リセットしなさいという話なんですね。
(略)ある日突然、品川区の水質が下がったことがあったんですが、ちょうど湾岸戦争が起こった日だったんですね。
人間活動の中で一番ダメなことは戦争なのですが、その戦争という周波数を水が吸い込んで、それが一気に広がったんですよ。
なぜなら世界は水でつながっているから!
そういうこともあって、水の波動をもとに戻しなさいという長老たちのメッセージを受け取っておるわけですけれども、そんなことまで含めて母連としてはやってきたいな、というふうに今、思っています〉
「じゃあ、湾岸戦争以降に起こった戦争を見てみましょう。アフガン戦争、イラク戦争、レバノン戦争、シリア内戦、リビア内戦、クリミア紛争、グルジア紛争、シエラレオネ紛争、コンゴ内戦、エチオピア紛争、スロベニア内戦、クロアチア内戦、コソボ紛争、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦(『防衛ハンドブック』から)……。これもう、品川の水飲んだら死にますよ(笑い)」(山本氏)
さらに、この「水の記憶」という主張は安倍昭恵氏が信じるオカルトやスピリチュアリズムのひとつでもあると山本氏は指摘した。
「生活保護システムの見直しと不正受給の徹底調査」については、一刀両断だ。
「今までの話は、まあ自由ですからいいですけど、この主張には賛同できません」
高齢者や障害者などの生活を支える唯一のセーフティネットを見直すべきではないとした上で、不正受給は世帯にして2%、金額では0.45%しかないことを提示。
この政策に限っては、その主張を支える背景や「裏の論理」ではなく政策自体を批判した。
そして最後に憲法問題。
日本母親連盟は、憲法9条について明言を避けると「マニフェスト」に記載している。
「ちょっと待ってください。いままで、どういう主張をされてましたっけ?
『食、医療、環境、教育、保育などの問題を広く社会に投げかける、啓蒙活動を行い、子どもたちの未来のために母親や女性たちの力で健康な社会を生み出す』という主張があるにもかかわらず、憲法のところになると、なんで9条なんですか?
今のままの憲法でいいならこんなこと書かなくてもいいし、どちらかと言うと考え方からしたら憲法13条(個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉)だったりとか25条(生存権とそれを実現するための国家の義務)であったりとか。
そういうところに行きそうだけども、そういうところに触れないで9条以外触れないということは、9条に本当は興味があるんじゃないの?という見え方をしてしまうんですよ。
で、会員募集時に『憲法9条については言明しない』といって会員を集めるのは、日本会議系諸団体の常套手段です(菅野完氏の調査による)」(山本氏)
「善良な意図で母親連盟に接近した人が、スピリチュアルな運動や右派の改憲運動、愛国運動に動員されるのであれば、それは、あの『日本会議』がやっているのと同じこと。
母親連盟の極端な主張を知った餓えで信じて賛同するならそれは皆さんの自由ですが、山本太郎の政治活動とは接点を持ちません。という話でした」(山本氏)
会場からは大きな拍手。
「みんなが実際に自分がやっている運動に関して了解した上でやるって、これ基本中の基本なんですけども、やっぱり、私もうかつなこと結構いままであったんですよね。
よくわからずに『一緒にやろう』みたいな話で『やりましょう!』ってやってったら、『ちょっと、ちょっと待って、え〜っ!?』みたいなことがあったから、一人ひとりがどういう団体と関っていくのか、どういう人とつながっていくのかということも含めて、世の中を一緒に変えていけたらなあという風に思います。
団体からの応援は一切受けないです。
東電の応援も受けません。
東電が応援してくれるかは知りませんよ。
すべての団体の応援は受けません。
ただ、団体ではなく、人として応援してくださる方は拒みません。個人で応援してくださる方の応援は拒みませんが、団体からの応援は受け付けないんです。
という話でずっとやってきている状態なので、(日本母親連盟と)一緒にやるということはないです。
すいません、こんな答えになっちゃって。ありがとうございます」(山本氏)
会場からの「山本太郎さんは日本母親連盟から選挙に出るんですか」という一言の質問に、30分近く費やして答えた山本氏。
最後に改めて、消費税減税への理解を求めて、講演を締めくくった。
会場からは、改めて大きな拍手が贈られた。
◆日本母親連盟代表に直撃インタビュー
山本氏が舞台を降りた後、日本母親連盟の阪田浩子代表がマイクを持って壇上に。笑顔ではあるが、照明のせいか目がうつろなように見える。
「ちょっと一言よろしいでしょうか。
まず、みなさんこんばんは。
今、名前が出ました日本母親連盟の代表をしております阪田浩子と申します。
今日はたくさんお集まりいただきましてありがとうございます。
今直接あの、いつも山本太郎先生、お忙しくてすぐ出られてしまったので、直接お話しできないのは残念なんですけれども、山本太郎先生、ホントによく勉強されて私たちのこともよく調べてくださったと思うんですけれども、たくさんの誤解があります」(阪田氏)
しかし、具体的に何がどう誤解であるのかについては、一切言及がなかった。
「今までのような金権利権そして派閥党派そういったものを全部越えなければ日本を変えられないと思っています。
今までと同じようなやり方では変えられないと思っています。
だから立ち上がったんです。
ぜひ、そのところは理解していただきたいと思っております。
今日は本当にありがとうございました」 と、抽象的な言葉で取り繕うだけだった。
会場から大半の来場者が消えた後、ジャーナリストの鈴木エイト氏が阪田氏に直撃インタビュー。
それが終わるのを待っていた筆者の耳には、直ぐそばで立ち話をしている日本母親連盟関係者たちの会話が聞こえてきた。
まずは、鈴木氏による阪田氏へのインタビュー。
――今日の山本さんの話はいきなり裏切られたみたいな感じですか?
阪田氏:「そうですねぇ」
――まさかそんな話になるとはと?
阪田氏:「なんか、話してくださいと言ったのに、話受けてくれずにこういう風なところでやるというのはどうなのかなっていうのはちょっと思いますけどね」
――前もって(こういう話をするよという)話はなかったんですか?
阪田氏:「何回も話してほしいって、話をさせてほしいっていうことを何回も言ってたんですけど受けてくれずに、受けてくれないでこれかぁみたいな感じなので、ちょっとがっかり」
――じゃあ(山本議員から)前もって最後に批判的なことを話しますよということは前もってなかったんですか?
阪田氏:「なんにも仰っていただけなかったんですよ」
――じゃあいきなりびっくり仰天みたいな?
阪田氏:「いきなりびっくり。そうバッサリやられましたね。
黙って、結局、国会でもほら通告しないで切り込むじゃないですか、それとおんなじだと」
――やられたと?
阪田氏:「そう思います」
――これ、なんか報復じゃないけど(何かやりますか?)
阪田氏:「これ否定に否定は否定を生むだけなので、否定をすることは私たちは絶対しない、それよりもそれを一旦受け容れてどうしたらいいかというのをちゃんと考えていきたいと思います」
――参院選や統一地方選は(候補者を)出すんですか?
阪田氏:「私たちの中から出すっていうことはまず難しいんじゃないかと思うので、出せばいいってもんじゃなくて例えば5人10人出したところで何にもならないし、中途半端な野党になって次の年には誰もいなくなっちゃったというのでは何の意味もないので」
――山本太郎を推薦したかったとかそういうのはありますか?
阪田氏:「推薦していいのかどうかというのはちょっと私たちも逆に考えていたので、どういう風に・・・」
――今日のことでもう完全に無いなと?
阪田氏:「まあ、団体の応援は受けないということだったので団体として支持するということは、きっとないと思うんですけれども、でも協力しあえることはたくさんあるかと思うので、逆に私たちの力を使ってくださったらいいのになという風には思っていたんですけれど」
――普段医療系の取材もしていて日本母親連盟がワクチンに反対というのが(マニフェストに)出ているので僕もちょっと批判的な目では見てるところはあるんですよ。今後も注目して見てはいきますので。
阪田氏:「ありがとうございます。(中略)こういうふうに突っ込まれると逆にそういうところで突っ込まれるんだみたいなビックリ。
逆に勉強になったみたいなところもあるので」
――とりあえず一野次馬として観ている分にはすごく面白かった。
阪田氏:「そうなんですか(笑)いろいろまた教えてください是非」
――最後に慌てて阪田さんが私たちはこうですと挽回したのもまあそういうことなんだなと。
阪田氏:「これで黙ったままで(講演会を)終わらせるわけにはいかないなと思って」
――ぜひ第2弾やリベンジ企画を。
阪田氏:「ぜひしたいと思います」
◆錯乱する会員たち
一方、そのすぐそばでは関係者同士が、こんな会話を繰り広げていた。
「ぼくヒーラーとかやってるんで、ああ(山本)太郎さん、そこ斬っちゃったって思いながら聞いてたんですよ」
「非科学な部分でも結果が出るものはいいと思うんですよ」
「選挙に勝つという意味では、太郎さんがバッサリ斬ったのは、リアリストとして素晴らしいなと思った」
「うんうん、でも早い時期にこういう斬られ方してよかった」
とりあえずポジティブ。
別の一群からは、中年女性同士のこんな会話が聞こえてきた。
「ショックが……ショックが……」
「え〜こんなのショックとか思ってたら変えられない。
こんなの鼻くその屁のウンコですから!」
「アハハハハ!」
「笑うんですよ、こんなことぐらい全然大丈夫です」
「そうやって強くなっていくんですよね」
「なので、今日スピ系って言われましたけど、申し訳ないけどスピ系の人の票持ってるんですよ。
今、日本全国、世界的にスピ系の信者ってどれだけいると思ってますか。
私スピ系の代表に全部会ってきて票もらいます」
「スピ系は、できるって洗脳されてるから、言えばやるんです。三次元は動かなきゃ変わらないと、彼ら(スピ系)もわかってるんです。
じゃあ、動いてよ。
票ちょうだいよ。
私、スピ系と倫理法人会どっちもつながってるんで、どっちからも票取ってきます!」
スピ系の人が聞いたら「私たちを何だと思っているんだ」と怒り出しそうだ。
「実は、財閥の会長が、いま私達が考えていることに協力してくれるという人を知っている人と一緒にやってるんですよ。
財閥ですよ。
何個しかないからわかってますよね。
その会長が日本を変えたいんだと。
頭がいいんで、わかるんですよ。
だから私はもう財閥の力でやりますよ。
お金ですよ。あと力ですよ」
ついさっき阪田代表が壇上で「今までのような金権利権を超えなければならない」と言っていたのに、立ち話をしているメンバーは財閥だのカネだの力だのと……。
「こんなこと気にしてて! 特攻隊で亡くなっていった子どもたちのこと考えてください!」
もはや何を言っているのかさっぱりわからない。
山本太郎氏は「信じるのは自由だ」と繰り返し強調し、日本母親連盟のスピリチュアリズムの側面も右派的な側面も全面否定することはしなかった。背景を可視化し、事実関係を示し、「自分が目指すものと違う」という立場を表明しただけだ。 それだけのことなのに関係者たちがここまで錯乱し、人目もはばからずわけのわからない言動を重ねる。
山本氏のおかげで、日本母親連盟の背景や人脈だけではなく、活動現場におけるメンバーたちの体質まで可視化された。
<取材・文/藤倉善郎(やや日刊カルト新聞総裁)
・Twitter ID:@daily_cult3
取材協力/鈴木エイト
Twitter ID:@cult_and_fraud>
ふじくらよしろう●1974年、東京生まれ。
北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。
ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)