2019年03月11日

東日本大震災、賠償金を「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」の格差

東日本大震災、賠償金を「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」の格差
日刊SPA! 2019/03/11

 東日本大震災から8年。

被災地では復興に向かい協力し合う姿がクローズアップされがちだが、美談だけではない。
原発から30キロのラインを境に問題が起こっているという。
賠償金を手にすることができるのは、この圏内に住んでいた人たちだけなのである。
わずかでも外に出れば、一切、賠償金は支払われない。

 そんななか、「賠償金によって被災者の間に生まれた格差が暗い影を落としている」と話すのは、いわき市の元大手住宅メーカー営業マンで、『震災バブルの怪物たち』(鉄人社)の著者である屋敷康蔵氏だ。

今回は、着々と復興に向かっているように見える被災地で、東電からの莫大な賠償金に翻弄され続ける住民たちの実情を語ってもらった。

◆被災地におけるお金の話題は一種のタブーだった
 栃木県出身の屋敷氏は1995年から大手消費者金融で10年間、不動産担保ローンの貸付けと回収業務に携わった後、2005年より不動産業界に転身。
2010年代に大手住宅メーカーに入社し、いわき市内の営業所で働く住宅販売の営業マンとして、東日本大震災以降は多くの被災者に住宅を販売してきた。

「住宅メーカーの社員はお客さんの所得証明を見る機会が多く、東電からの賠償金をもらった人とそれ以外の被災者との格差を感じる機会が多かったですね」

 屋敷氏の身内にも実際に被災者がおり、震災前後の被災地で住宅メーカーの社員として働くなかではもちろん、同業者から賠償金の話を聞かされることも多かったという。

 17年以上にわたり福島県で暮らす屋敷氏だが、現在は同社を退職。
自宅のリフォームや修繕をメインに扱う会社に勤務している。
人のお金に対する執着や欲望に当てられ、半ばノイローゼになりながらも、実情を明らかにすることを決意した。
 原発事故の賠償金を手にした人のなかには、働くことをやめてしまったり、派手に遊んでいたり、パチンコをしながら悠々自適に暮らしている人もいたそうだ。
そんな姿に憤りを感じることもあったというが……。

「ぶつけようのない怒りのような衝動で『震災バブルの怪物たち』を書いたようなところもありますが、被災者すべてが賠償金で派手な生活をしていると思われるのは、また新たな誤解を生むことになる。

賠償金の額の多寡に関わらず、ほとんどの方は賠償金をもらいひっそりと慎ましく暮らしています。
ただ、地元でも気心の知れた仲間内ならともかく、あまり公に賠償金の話をすることはありません。
被災地におけるお金の話題は一種タブー視され、メディアでもあまり大々的には取り上げられてこなかった。

それだけに、私も福島県から一歩県の外に出ると、福島県というだけで被災者として相当お金をもらっていると勘違いされることもあり、多くの県民の実状と乖離を感じていました」

◆「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」
 そもそも被災地に縁遠い人なら、原発避難者と津波被災者の支援が一緒くたに考えられている向きもあるが、東電の賠償金の対象者は原発〜20キロ圏内と20キロ超〜30キロ圏内の住民だけ。
前述のとおり、この30キロラインからわずかでも外に出れば自主避難区域となり一切、支払われない。

 東電による賠償金が平均的な4人世帯で約6300万〜1億円超という莫大な金額である一方、
逆に津波被災者の場合、被災者全てが対象の「生活再建支援金」しか基本的には存在しないのが現状だという。

「生活再建支援金は数百万円単位で、家や暮らしを本当に再建するにはとても足りない。
あとは代替地といって津波で流された代わりの土地を安く買えたり、好条件で融資が受けられたりする程度。
東電の賠償金の額もバラツキはありますが、東電からの賠償金をもらえる人ともらえない人では、特に大きな差がある。
少なくとも津波被災の方は相当複雑な感情を抱いていると思います。
生活していた家を失ったという意味では、原発避難者も津波被災者も同じわけですから」

 しかも、いわき市は東日本最大級の津波被災地。
いわき市沿岸部の薄磯地区の津波被害は死亡者115名(2017年7月いわき市調べ)と甚大だ。
 原発避難者も数多く移り住み、いわき市は境界線の内側と外側とで東電からの賠償金を「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」が多く住むことも、事態を複雑にしているようだ。

「どこで線引きしても結局同じような問題は起きただろうと思いますが、単純に原発を中心とする同心円状の線引きは、どこまで科学的な根拠に沿ったものか疑問です。
田舎なので大家族も少なくないですが、世帯一人当たり月10万円というどんぶり勘定で、7人家族だと毎月70万円も援助される。
加えて就労不能損害の補償では震災前の年収も保証され、たとえ、新しい仕事に就いたとしてもその収入分が補償から差し引かれるだけ。
それで働けという方が無理な話かもしれませんが、中にはお金の使い方が露骨にハデな人も一部で見かけます」

 また、東電社員の所得証明を見た際、震災直後の“ボーナスカット”でも震災前と遜色ない年収だったという点にも屋敷氏は苦言を呈する。
実際に政府から東電に資金が流れている以上、寄らば大樹の陰とも言うべき状況もあるようだ。

◆原発御殿が一等地に建設される一方で…
「いわきには広大な土地があるにも関わらず、ほとんどが農地を推奨している調整区域という土地で、住宅に使える市街化区域という土地は本当にわずか。
調整区域を解除して宅地造成すればもう少し状況は変わったかもしれませんが、住宅として使える土地は調整区域の3分の1もない。
調整区域は4年に一回解除の見直しができますが、結局解除しても民間の宅地造成業者や不動産業者が間に入る。
そうすると地権者の方も土地が不足している中で、なるべく高く売ろうとするのが普通です」

 平成27年度全国直上昇率ベスト10では、そのすべてをいわき市が独占しているが、宅地不足に伴う土地の値上がりよって、住宅事情は一変。
様々な形で市民生活に影響を及ぼしているという。
 賠償金でパチンコをしようが何をしようが、当人の自由であることは強調しておくべきだが、莫大な東電からの賠償金の影響をモロに受けるいわき市の地元住民たちの心情がざわつかせるのも無理からぬことだろう。

 原発御殿が一等地にどんどん建設され、「警戒区域の自宅は別荘として思い切りリゾートっぽくリフォームしたい」と要望する人も、一人や二人ではないそうだが、家賃補助などの賠償金もないいわき市民は家賃の高騰で同居もままならない新婚カップルも続出したそうだ。 「私も持ち家ですが、震災前に900万円で買った土地を査定に出してみたらいま1500万円でした。住宅メーカーは所得証明から、その人にあった土地を提案しなくてはいけません。 現金のある原発被災者の方は自然と高台のいい土地に集まり、いわき市民の方はそうしたいい土地は手が届きにくくなってしまった。

避難解除に合わせて補償も徐々に打ち切りになってきていますが、土地の値は急激に下がることはなく、賃貸価格もピーク時からほぼ横ばい。
一度火のついた部分はなかなか元には戻らないですね。
避難解除で戻るとしても高齢者の方が多く、8年も経つと特に子供がいる世帯はもう避難先での生活があります。
特に小さい子供がいる場合、いくら除染しているとはいっても、あえて戻ろうとは考えにくいでしょう」

「川の流れの澱みに浮かんでいる水の泡は一方では消え、一方では生じて、長いあいだそのまま留まり続ける例はない」とは方丈記の一節だが、数千万円単位の賠償金によるバブルの影響は、そう簡単には消えないようだ。

             <取材・文/伊藤綾>
posted by 小だぬき at 11:15 | 神奈川 ☔ | Comment(3) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

 有名なことわざに存在した「科学的根拠」6選

言語学博士が解説! 有名なことわざに存在した「科学的根拠」6選
週刊女性2019年3月19日号 2019/3/9

 先人の知恵であることわざには、世代を超えて納得してしまう含蓄がありますよね。
そんなことわざは、迷信でもただの言い伝えでもなく、社会における人間の行動原則を端的に表しているという、科学的根拠があるものもあったんです。
いにしえの教えと最新科学が融合する!? 驚きのレポートですよ!

立証その1・笑う門には福来る
■教育やプレゼンはユーモアによって信頼度が上がる
─アリゾナ州立大学 クーパーらの研究

 ユーモアのある話には自然と笑顔がこぼれるもの。
アリゾナ州立大学の研究によれば、教育やプレゼンの現場でも効果抜群だとか!
 1600人以上もの学生からアンケートを取った結果、99%の学生がユーモアのある授業を好意的に評価。
 さらに研究を進めると、ユーモアがあることで49.4%の学生が授業に対してより聞く耳を持つようになり、21.4%が記憶の助けになったと回答。
7.8%の学生にいたっては、「ユーモアがあると、難しい内容や情報をより時間をかけて処理できる」と報告しているほど。

また、笑顔にはストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを軽減する効果があることも立証ずみ。
 しかも、表情筋を笑顔にするだけで効果があるため、作り笑いでもOK。
まさに、笑っているだけでよいことづくしというわけ。

立証その2・豚もおだてりゃ木に登る
■人の可能性を信じて期待すると、期待された本人も応えようとする
─ハーバード大学 ローゼンタールの研究

 信用するなら、おだててみると効果アリ!
 ローゼンタールは、知能テストを行い、その結果と関係なく、各クラスの20%にあたる生徒の名前をランダムに挙げ、「この生徒たちは、知能テストの結果、急速に知的能力が伸びると予測された生徒です」と伝える、ちょっと意地悪な(!?)実験を行った。
 その8か月後に再び知能テストを行ったところ、「伸びる」と告げられた生徒たちは、そうでない生徒たちに比べ、著しく成績がアップしていたというからビックリ! 
「自分にはそんな才能があるんだ!?」と思い込むことで、自分の潜在能力を解き放ってしまったというわけ。
けなすよりも、ほめることが大事なのだ!

 ただし! 別の研究では、結果をほめるのではなく、プロセスをほめないと逆効果とも。
「〇〇ちゃんは90点を取って偉いね」ではなく、「毎日30分欠かさず勉強した〇〇ちゃんは賢い」とほめると◎。
じゃないと、木に登るどころか、“猿も木から落ちる”になってしまうかも。

立証その3・後悔先に立たず/思い立ったが吉日
■やらなかった後悔は長期にわたって、さらに大きな後悔を生み出す
─コーネル大学 ギロビッチの研究  

心理学者でもあるギロビッチは、「なぜ人は、判断を間違えてしまい、あいまいな信念のもと、合理的とは言いがたい行動を選択するのか」といったことをテーマに研究を行い、さまざまな形で老若男女からデータを集めた。
その結果、人はやらなかったことに対する後悔をより強く覚えているということを突き止めたという。

 彼はこういった事象を「行動非行動の法則」と呼び、行動したことによる後悔と、行動しなかったことによる後悔であれば、後者の後悔のほうが大きくなるとしている。

 おまけに、ドイツの心理学者エビングハウスの研究によると「人間はやらなければならないことを後回しにするようにできている」というから恐ろしい。
 だからこそ、後回しにして後悔しないように、“思い立ったが吉日マインド”が大切。
林先生の「今でしょ!」は、人間の本質を突いていたから大ブレイクしたのかも。

立証その4・類は友を呼ぶ
■類似性の多い人ほど、好感度が高くなる
─テキサス大学 バーンとネルソンの研究

 科学の世界では、「類似性の法則(対人魅力と態度の類似性)」と呼ばれているように、“類は友を呼ぶ”にもエビデンスがあった!
 人は、自分の趣味嗜好に近い人ほど親近感を覚えてしまい、逆に遠い人ほど反発しがちになる、というから妙に納得。
 この傾向は、男女の恋愛のケースにも当てはまるといい、“おしどり夫婦”が、“似たもの夫婦”になっていくことも、科学的に見れば自然な流れというわけ。
 ただし、研究を行ったバーンとネルソンは、「自分と同じ、または似たような考え方を持つ相手は、自分の考え方が正しいというひとつの証明になることから好意を抱きやすい」とも言及。

自分が正しいと主張したいがために、類似性の高い人とつながることを求めるのは黄色信号。
自分の成長を止めてしまいかねないので、ときには自分と異なる性質の人と触れ合うことも大事!

立証その5・嘘つきは泥棒の始まり
■偽物のブランド品を身につけていると誠実性がなくなっていく
─ハーバード・ビジネス・スクール ノートンらの研究

 85人の女性を対象に、本物のブランド品のサングラスをかけさせたAグループ。
本当は本物なのに「偽物」とあえて伝えて同じサングラスをかけさせたBグループ。
何も伝えずにサングラスをかけさせたCグループ。  

3つのグループに、正解率に応じて報酬がもらえる数字を使ったテスト実験を行い、その正解数を自己申告制にしたところ、なんとBグループの71%が、ウソの正解数を報告! 偽物を身にまとっていると感じると、言動も嘘っぽくなることが示唆された!
 この実験、「偽物のブランド品を身につけていると批判的になる」という無慈悲な続報まで提唱していて、偽物ブランドをつけてまで見栄を張るような人は、他人の行動を「不誠実だ」、「ウソくさい」などと評価する傾向が強いと指摘。
 言葉のウソ以外に、所持品やアイテムも偽物で固めていると、不誠実な人間になってしまうなんて怖すぎる! 
泥棒はないにしても、嘘つきは詐欺師の始まりかも!?

立証その6・早起きは三文の徳
■無理をして早起きをするとストレスが増加する
─ウエストミンスター大学 クロウらの研究

 ことわざの中には、逆に「そうとも言い切れない」ものもあるみたい。
例えば、“早起きは三文の徳”は、その最たる例。
 ウエストミンスター大学は、2日間にわたってさまざまな睡眠リズムを持つ42人の被験者の唾液を1日8回分析したところ、早起き傾向にある人は起きるのが遅い人に比べて、より多くのコルチゾールが検出された……
つまり、早起きする人ほどストレス値が上がる可能性があると論及したのだ。

 また、サクロ・クオーレ・カトリック大学の研究では、夜更かしタイプのほうが、創造性や柔軟性に富んでいるという結果が明らかになっているとか。
「早起きして朝活や運動をしないと、良識ある社会人やデキるビジネスパーソンになれない」なんて、過度に考える必要はないみたい。
 結局、朝型であろうと夜型であろうと、自分のペースを崩さずに時間配分ができ、上手に時間を使える人が“三文の徳”をゲットするってこと。  寝不足こそいちばんの大敵!

無理して朝活はしないように。
「私たちが普段している行動が、実は心身の健康にも有効だということが科学的に証明されているとわかれば心強いですよね?
 同様に、私たちにとって身近なことわざに、実は科学的な根拠があるとわかれば、その教えを実践したり、より強い説得力を持って受け入れられたりできるはず! 
先人たちの知恵に科学的根拠が加われば、まさに、ことわざの“鬼に金棒”状態です。
ぜひ試してみてくださいね♪」

教えてくれたのは……
堀田秀吾先生◎ほった・しゅうご
 熊本県生まれ。
明治大学法学部教授。
言語学博士。
言語とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学など、さまざまな学問分野を融合したアプローチで研究を行う。
本誌で大人気連載中!
『このことわざ、科学的に立証されているんです』 (主婦と生活社刊/税込み1404円)
先人の知恵である「ことわざ」を、科学的根拠から検証。
人間の行動原理を踏まえた、よりよい人生を送る道しるべとして解説した一冊。

(取材・文/我妻アヅ子)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする