激安葬儀にクレーム多数。追加料金いらずは真っ赤なウソ?
日刊SPA! 2019/05/15
各TV番組や週刊誌が絶賛する“激安葬儀”。
しかし、調査してみると多くの落とし穴が!?
◆激安葬儀業者って何?
最近の激安葬儀ブームで一般的となった「家族葬」「直葬」という言葉。
業者側は全国一律料金をウリにするが、実情は違うようだ。
「地域や宗教によって内容や進め方が違うからです。
突然の訃報の場合などは、葬儀が進行するなかで、喪主さまの要望が変わったり、追加依頼があることも多いです」
そう話すのは、年間約250件の葬儀を請け負う「佐藤葬祭」の社長・佐藤信顕氏だ。
「ご遺体の状態でも納棺費用が異なります。
滅菌や保存処理、修復も施すエンバーミングが必要な場合は、一般的に約20万円。
処置の程度で金額が変動します」
この個々に違う葬儀の細目が理解されていないため、「『葬儀費用は不明瞭』『法外に高い』との批判が多い」という。
そのため、最近ではクレームがないように、事前に見積もりを出して説明する葬儀社がほとんどだそうだ。
「そんな懐疑の目、葬儀代金のグレーゾーンを突いたのが、激安葬儀業者。
彼らは葬儀全体の価格を明記し、追加料金なしを謳います」
例えば激安葬儀業者Aの直葬プラン。
価格は18万8000円だが、支払ったお金のすべてが葬儀費用に回るわけではないという。
「激安葬儀業者は提携先の葬儀社に仕事を発注しますが、葬儀後に利用者が支払った代金から、手数料を中抜きします。
私の調査だと、このプランの場合、7万円が激安葬儀業者の取り分となります」
なぜ、激安葬儀業者はこれほどむちゃで高額な中抜きを行うのか。
「彼らの集客の場はインターネット。検索連動型広告では、成約に至らずとも、1クリックで500〜1300円がサイト運営会社に徴収されます。
私の見積もりだと、激安葬儀業者Aの年間広告費は、10億円にも上ります」
そのインターネットでの景品表示法違反で、一昨年はイオングループの葬儀会社・イオンのお葬式に、昨年は葬儀ブランド「小さなお葬式」を展開するユニクエストに、措置命令が出された。
追加料金が発生する事案が散見されるのに「追加料金なし」を謳ったからだ。
「現在も、自社サイトで一般葬も含んだ葬儀の全国平均金額と、自社の直葬プランの価格を比較して、お得感を強調する景品表示法違反スレスレの業者が見受けられます」
◆クレーム多数。追加料金いらずは真っ赤なウソ?
しかし、である。激安葬儀業者Aの直葬プランの場合、中抜きされて残った11万8000円で、葬儀を執り行うことになる。火葬代(東京都の場合2万5000円)も込みで、だ。これで本当に追加料金なしで済むのだろうか。
激安葬儀経験者からはこんな声が……。
「業者指定の斎場に空きがなく、追加料金を取られた。
しかも自宅から25qも離れた会館で、親族20人分のタクシー代が発生する始末。
揚げ句の果てには寝台車の走行距離が50qを超えたと追加料金を取られるハメに」(50歳・専業主婦)
「業者の都合で斎場が見つからず、10日間、遺体を安置する結果に。
ドライアイス、安置料の追加料金を取られた」(50歳・公務員)
提携する斎場が少ないことから生じるトラブルだが、下請けの葬儀社へのクレームも。
「妻が亡くなった直後、遺体が傷むからと安置所への搬送をせかし、(のちに安置料を稼ぎたいだけと判明)連れていかれた。
安置所が廃屋のようだったので、やはり自宅で安置したいと言うと『納棺後なので、追加費用がかなりかかる』と言われ諦めた」(46歳・無職)
「棺代も込みなのに『これはベニヤの安物だから良い棺にしましょう』と、追加で8万円も取られた。
抗議すると『葬式やらないぞ』と脅された」(45歳・サービス)
「下請けの葬儀社さんもカツカツなので、利益を出そうと必死なのかもしれません」(佐藤氏)
多発する激安葬儀の被害報告の実態だ。
◆<激安葬儀業者に相次ぐ消費者庁の措置命令>
2017年12月「イオンのお葬式」に措置命令
2018年12月「小さなお葬式」に措置命令
景品表示法違反で再発防止を求められた2社。
「追加料金不要」と記載した葬儀プランの4割ほどで実際には追加料金が発生していた「イオンのお葬式」。
「小さなお葬式」は年間の葬儀契約の約2割で追加料金が発生していた
【1級葬祭ディレクター・佐藤信顕氏】
東京で90年続く老舗葬儀社経営。
テレビ、週刊誌への登場多数。
葬儀に関する著書もある。
登録者4.7万人の葬儀葬式chを運営する、
葬式系YouTuber
<取材・文/週刊SPA!編集部>
― [激安葬儀ブーム]の闇 ―