2019年08月04日

安倍政権に飼いならされ貧困が当たり前に

「最低賃金901円」を評価し「月給23万円への不満」を攻撃する世論の異常!
安倍政権に飼いならされ貧困が当たり前に
2019.08.02 LITERA編集部

「最低賃金、東京・神奈川1000円超え」……7月31日、中央最低賃金審議会の小委員会は2019年度の全国最低賃金の目安を27円引き上げ、時給901円にする方針を決定した。
 この結果について「2002年以降、最大の引き上げ」「最高額更新」などと評するメディアもあるが、自民党が参院選の公約で掲げた「年率3%をめどに引き上げ」はクリアしたものの、「全国平均1000円」にはほど遠い。

だいたい、最低賃金がもっとも低い鹿児島県では26円引き上げの787円となったが、この時給は1日8時間・22日働いても月収13万8512円、年収にして166万2144円にしかならないものだ。
これで生活しろというのはどうかしていると言うほかないだろう。

 これは全国平均の901円にしても同様で、1日8時間・22日働いた場合で月収15万8576円、年収190万2912円でしかない。
つまり、全国平均でもいわゆるワーキングプアの水準なのだ。

 10月からは消費税が10%に引き上げられ、生活はさらに苦しくなるというのに、この最低賃金で国は「老後のために自助で2000万円貯蓄しろ」とまで言う……。
「国民を殺す気か」と政治に怒りをぶつけたくなるが、しかし、ネット上では逆の現象が起こった。

 というのも、この最低賃金の問題を31日放送の『news zero』(日本テレビ)が取り上げ、以前から長時間労働などの問題が取り沙汰されている飲料自販機中堅企業・大蔵屋商事に務める男性の例が紹介されたのだが、生活が困窮していることを訴えるこの男性が、時給換算すると東京都の最低賃金水準である「手取り23万円」であることや、1カ月の収支で「食費4万円」「通信費2万円」などになっていることに対し、SNS上ではこんな意見が噴出したのだ。

〈手取り23万貰って文句言ってんじゃねえよ〉
〈手取り23万でやっていけないだと??喧嘩売ってるのかこのニュースは…〉
〈えっ、手取り23万で通信費2万?????どういうこと?????〉
〈手取り23万貰えてたら普通に自炊して暮らせるだろうに 交際費3万とか携帯代に2万使ってるあたりおかしい〉
〈資格取るなり、仕事頑張って賃金上げてもらえる努力しろ、あと一人暮らしで食費40000円は使いすぎや自炊せえ〉

 挙げ出せばキリがないほど、このように「手取り23万円で文句を言うな」「給料に見合った生活をしろ」という意見が溢れかえり、ついには「手取り23万」「食費4万」などの言葉がトレンド入りしたのだった。

「こんな最低賃金で生活できるか!」
「最低賃金は上げないと結婚もできないよ」という声があがるかと思いきや、逆に自助努力が叫ばれる──。
言っておくが、この男性は長時間労働に晒され、しかも残業代は未払いで、昨年のある月の給料は時給に換算すると最低賃金以下だったという違法な働かせ方を強いられている人だ。
だが、そういう問題よりも、「食費4万円は使いすぎ」と責められてしまうのである。

 これは、母子家庭の女子高生が経済的な理由で進学を諦めた例をNHKが紹介したところ、
「貧困だと言うならアニメのグッズを買うな」
「生活が苦しいのに1000円のランチなんか食べるな」などと批判が巻き起こった「貧困女子高生バッシング」によく似た現象とも言えるが、今回、あらためて浮き彫りになったのは、いかに多くの人が“最低賃金以下の生活”を送っているか、ということだろう。

米ブルームバーグは「貧困が自己責任でないことを日本が証明している」
 事実、安倍首相はアベノミクスの成果として「就業者が384万人増加」と誇るが、安倍政権下での非正規雇用の増加数は304万人にものぼる。
しかも、総務省の「就業構造基本調査」(2017年)によると、非正規の70%が年収200万円未満だった。
アベノミクスによって、多くの人がワーキングプアの状態に陥っているのである。

 普通ならば、こうした政策に対する不満が高まるはずだが、この国ではそうならず「自己責任」となり、不満を述べると「わがまま」「努力不足」と叩かれてしまう……。

これは安倍政権が大企業・富裕層優遇の一方で弱者切り捨て政策を推進し、そのために繰り返してきた「自己責任論」が浸透し、それに国民が慣らされてしまった結果なのだろう。

 実際、7月30日付の米・ブルームバーグ紙の社説では、いかに日本が自己責任論に犯されているかが逆説的に紹介されている。
 この社説では、アメリカと日本を比較し、犯罪率、違法薬物の使用件数、労働年齢の就業率などにおいて日本は〈素行が良い〉国だと紹介するのだが、にもかかわらず、日本では先進国のなかでも貧しい人が多いと指摘する。

つまり、日本は暴力事件も起こさず、違法薬物にも溺れず、一生懸命働くなど真面目で勤勉なのに日本の貧困率はアメリカより少しマシな程度でドイツ、カナダ、オーストラリアなどほかの先進国に比べかなり高いということは、アメリカの保守派が考えるように「貧困は自己責任」で解決できない、と述べているのだ。

 貧困に陥るのは自己責任ではない、それは日本という国が証明している──。
日頃「日本スゴイ!」で悦に浸るテレビ番組やネトウヨにこそ紹介していただきたい社説だが、同時に、国民も「自己責任論」から脱却し、安倍首相が一向に向き合わない貧困・格差の問題に怒りをぶつけるべきなのではないか。

 そして、そうした流れは生まれつつある。
山本太郎率いる「れいわ新選組」と共産党は「最低賃金1500円」を掲げており、れいわは「年収200万円以下世帯をゼロ」とも訴えている。

一方、安倍首相は「無理やり最低賃金を上げることによって失業が増えていく」などと述べているが、これはノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマンをはじめ、経済学の専門家からもすでに否定されているものでしかない。

れいわや共産党が主張するように、中小企業の支援とセットで最低賃金を上げることは十分可能なものだ。
 ブルームバーグの社説にあるように、貧困は自己責任ではない
生活が苦しいと声をあげた人を叩くだけで、国民の生活の苦しさを直視しない政治を温存させていれば、現状はどんどん悪くなってゆくだけだ。
posted by 小だぬき at 07:35 | 神奈川 ☀ | Comment(2) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

消費税10%に過半数が反対なのに…自民党が勝った理由は?

消費税10%に過半数が反対なのに…自民党が勝った理由は?
2019年08月03日 SPA!
― 連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗> ―

◆増税を「信任」したと誤解するなかれ!
「政治というのは、必ずしもよりよい選択をすることではない。
時には、最悪(worst)を避けるため、より悪い(worse)を選ぶこともある」。

永田町で仕事をしていると名言(迷言?)を聞くことがあるが、これはなるほどと思ったものだ。
 関連して、今は亡き、あるベテラン政治家と話をしていたとき、こうした話を聞いたことがある。

「例えば、規制緩和をすれば、新しいビジネスが生まれるが、規制によって既得権益を守られている人たちにとってはダメージになる。
政治の決断は、ある人には利益をもたらすが、別の人には不利益をもたらす。
その両面を見ながら、国益と多数派の国民たちにとって、最善の選択は何かという観点とともに、最悪を避けるためにどうするか、を考えるものなのだ」

 自らに言い聞かせるように話してきたので問い返したことがある。

「しかし、結果的に“最悪”の選択をしたということはなかったのですか?」

「そうだねえ。そのときは有権者からノーを突きつけられることになる。
それは選挙で落選するか、投票率の低下というかたちで民意が示されるだろうから」
 なんでこんな話をするかといえば、今回の参議院選挙のことだ。
残念ながら、盛り上がりに欠けた国政選挙だった。

◆過半数が増税に反対。自民党が勝った理由
 何しろ今回の選挙は、「デフレから脱却もしていないにもかかわらず、消費税を上げて景気を悪くする自民党と公明党」と、「増税しないと言いながら、政権を獲得したら消費増税を決定し、平気で公約を破った民主党の残党」との戦いだった。

「アメリカのように減税に踏み切り、景気回復、デフレ脱却を最優先にする」という選択肢は示されなかった。
 NHKの出口調査によれば、消費税率が10月に引き上げられることについて「賛成」と答えた人は43%であったのに対して、「反対」は57%にのぼった。
過半数が増税に反対なのに、増税を掲げた自民党がなぜ勝利したのか。

 出口調査によれば、増税「反対」と答えた有権者のうち、自民党に投票したと答えた人は29%、立憲民主党に投票した人が21%などとなっている。
 一方、「棄権」を選んだ有権者は過半数を超えた。

総務省が7月22日に発表した参院選の投票率(選挙区)は48.8%だった。
過去最低だった1995年参院選の44.52%に次ぐ低水準で、24年ぶりに50%を割り込んだのだ。

「より悪い」と「最悪」の選択になれば、「より悪い」を選ばざるを得ないが、景気を悪化させる消費増税には反対だ。

ところが、今回の選挙で示された、こうした「民意」を理解しない政治家もいる。
 例えば、麻生太郎財務相は23日の記者会見で「消費税率の引き上げは最初から申し上げてきた。
その意味では信任をいただいたと思う」と述べた。

 いや、「増税」を信任したわけではないのだ。
しかし、こうした「誤解」がまかり通ると、日本の景気はさらに悪化していくことになるだろう。

江崎道朗
’62年生まれ。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。
著書に『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)など
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする