2019年09月15日

【悪化する日韓関係】嫌韓を煽るメディアよ、頭を冷やせ…江川紹子の提言

【悪化する日韓関係】嫌韓を煽るメディアよ、頭を冷やせ…江川紹子の提言
2019.09.04 ビジネスジャーナル(江川紹子)

 今の日韓関係をめぐる報道やインターネットでの発信を見ていて、メディアの堕落ぶりがつくづく情けない。
 たとえば、「週刊ポスト」(小学館)は「『嫌韓』ではなく『断韓』だ/やっかいな隣人にサヨウナラ/韓国なんて要らない」というヘイトを煽るような大見出しで、特集を組んだ。

その中には「『10人に1人は治療が必要』――怒りを抑制できない『韓国人という病理』」といった、極めて差別的な記事も含まれている。

嫌韓を煽るメディアの“罪”  
オウム真理教事件などもあって、雑誌がよく売れていた1995年には94万9000部を売り上げ、週刊誌のトップランナーだった同誌が、その後凋落の一途をたどり、今や印刷部数で34万6591部(今年1〜3月)。
嫌韓ムードにでもなんにでも乗っかって、1部でも多く売り上げたい、ということなのだろうが、浅ましすぎる。

 テレビの情報番組は、韓国問題の扱い方にうんざりして、このところ極力見ないようにしていたが、いやでもネット等で情報は飛び込んでくる。
なかでもとびきりひどかったのが、TBS系CBCテレビ(名古屋市)の情報番組『ゴゴスマ〜GOGO!Smile!〜』でのコメンテーター武田邦彦・中部大学特任教授の発言だった。

 観光でソウルを訪れていた日本人女性が、韓国人の男性に暴行を受けた事件を番組が取り上げた際、「路上で、日本人の女性観光客を、訪れた国の男性が襲うなんてのはね、こらあもう、世界で韓国しかありません」などと述べた。
さらに、大阪で韓国人観光客が激減している話題でも、「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しなけりゃいかんからね」と言い放った。

 いずれも、司会者や共演者から「先生、言い過ぎ」などという反応はあったが、これは「言い過ぎ」などというレベルではない。
 当然、批判が巻き起こったが、CBCの反応は鈍かった。
ようやく3日後、番組の中で「ヘイトや犯罪の助長を容認することはできません」として謝罪はしたが、武田氏の名前など、何を謝罪しているのかについて具体的な言及はなかった。

 加えて、コメンテーターとして出演したタレントの東国原英夫氏が、同じくコメント役の金慶珠(キム・キョンジュ)東海大教授に対し、「黙ってろ、お前は!」などと怒鳴る場面が問題となった。
これも、司会者が「穏やかにいきましょう」などと東国原氏をなだめたが、同氏の罵倒はすぐにはおさまらなかった。
 こうした事態が相次ぐのは、日頃の同局の番組づくりについての姿勢から、この番組なら、こうした暴言や韓国人への侮辱的振る舞いは許される、と出演者が思っているからだろう。

さらに、世の中に嫌韓の雰囲気が広がっていることもある。
メディアに韓国に対する批判、非難があふれ、韓国人を見下した物言いや国交断絶を言い募るコメントまでまかり通る“空気”を読み、「今は韓国をボロカスに言う発言がウケル」と調子に乗って、こういう暴言などが飛び出すのではないか。

 韓国に対する差別的な発言では、関西テレビ(大阪市)のバラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、作家の岩井志麻子氏が慰安婦問題に関するスタジオトークのなかで、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言したことについて、つい最近、BPO(放送倫理・番組向上機構)が審議入りしたばかりだ。
 しかし、今のところBPOはなんのブレーキにもなっていないように見える。

BPOは、今回の武田、東国原両氏の問題についても、早急に審議に入り、過剰な韓国叩きの風潮に対して、強い警告のメッセージを発するべきだ。
 差別的で品のない言葉で韓国を罵倒し、人々のヘイト感情を煽っている人たちや、それを世の中に拡散しているメディアは、自分たちが日本の品格をどれほど貶めているかを自覚してもらいたい。
 それに、現在のような状況は、韓国を罵倒して「スカッとする」人たちにとっては楽しいかもしれないが、多くの人たちにとっては何の利益にもならない。

それどころか、観光業を初めとして、経済的にはマイナスの影響ばかりだ。
 少し頭を冷やして、なぜこれほどまでに関係がこじれるのかを分析したり、考えたりする機会を、メディアが提供することこそ必要だ。
メディア自身が嫌韓を煽ってどうするつもりなのだろうか。

失われていく加害の「実感」
 それにしても、なぜ終戦から70年以上がたち、日韓基本条約が結ばれて国交が正常化してから来年で55年になろうという今になって、以前よりも歴史の問題がクローズアップしてしまうのだろう。

実際に、韓国でも日本による被害を体験した人は少なくなり、さまざまな交流のなかで、傷は癒やされてきたと思っていたのは、甘かったのだろうか。
 逆に戦前戦中を直接知る人が少なくなってきたことで、実態に即さない、知識やイメージ先行で歴史を語る人が増えたことが、歴史認識をめぐる対立を激しくしてしまっているのかもしれない。

 かつての日本の政治家や識者は、自分の体験や親しい人の話から、日本が植民地としたことで迷惑をかけて申し訳ない、という意識を大なり小なり持っていた。
そのため、さまざまな機会をとらえて、謝罪を述べてきたし、それに見合う態度をとってきた。
 たとえば、1984年に全斗煥・韓国大統領が国賓として初来日した時の晩餐会で、当時の中曽根康弘首相は次のように述べた。

「日韓交流史の中で、遺憾ながら今世紀の一時期、わが国が貴国及び貴国国民に対し多大の苦難をもたらしたという事実を否定できない。
私は政府及びわが国民がこのあやまちに対し、深い遺憾の念を覚えるとともに、将来を固く戒めようと決意していることを表明したい」

 1992年に盧泰愚大統領が訪日した際にも、宮沢喜一首相が「数千年にわたる交流のなかで、歴史上の一時期に、我が国が加害者であり、貴国がその被害者だったという事実」を忘れてはならないと述べ、「この間、朝鮮半島の方々が我が国の行為により耐え難い苦しみと悲しみを体験されたことについて、ここに改めて、心からの反省の意とお詫びの気持ち」を表明した。
慰安婦問題についても、「実に心の痛むことであり、誠に申し訳なく思っております」と謝罪した。

 ただ、こうした謝罪は、映像として広く世界に伝わったわけではない。
世界各地にホロコーストを生き延びたユダヤ人がいて、ドイツ首相の謝罪が世界に伝えられたのとは異なり、東アジア、しかも日韓関係に限定される問題は、国際的にも関心を集めなかったのだろう。

 調べれば首相の発言などの資料はあるが、言葉の壁もある。
日本語が読めない人が容易にアクセスできる資料がないと、謝罪の事実すら忘れられ、なかったかのように受け止められてしまう。
今、日本が過去の問題に向き合わずにきたような論評を海外からされるのは、そうした事情もあると思う。

 だからこそ、2015年暮れの慰安婦問題に関する日韓外相合議の際には、安倍晋三首相がカメラの前で、歴代首相の謝罪に触れつつ、改めて謝罪の言葉を述べることを期待したが、それはかなわなかった。
それがあれば、元慰安婦の方々にとって癒やしになるだけでなく、国際社会に向かって、日本の立場をアピールできる材料にもなっただろうに、と残念だ。
謝罪を外相が代弁するというのが、安倍首相の限界だったのだろう。

 それはともかく、過去に首相として謝罪の言葉を述べた中曽根氏は戦時中、海軍の将校であり、慰安所の開設にも関わった。
宮沢氏も、大蔵官僚として戦争を体験している。
そうした人たちは、日本が韓国にかけた迷惑を「実感」としてわかっていた。

一方の韓国側は、北朝鮮の脅威にもさらされており、安全保障や経済発展を優先する事情があった。
 しかし、当事者として戦争に関わった人たちが現役を退き、さらにはこの世を去っていくにつれ、加害の「実感」は失われていく。
世代交代の過程でも、原爆や空襲などの被害の経験は語りやすいが、加害の経験は伝わりにくい。

安倍首相も、祖父の岸信介元首相から、加害の事実は教わっていなかったのだろう。
 戦争を知らない世代にとっては、「加害の事実」は、自分たちがしでかしたわけではなく、実感も持てない。
それなのに、いつまでも「加害者」という立場に置かれることに倦み、不満を募らせる人たちが増えていく。

日韓における歴史の否定や単純化  
そして2015年夏、安倍首相が戦後70年談話でついにこう宣言した。
「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」
 これに、加害の事実を否定した人たちが呼応する。
かつての朝鮮人に対する対応について、日本側にまったく非がないかのように主張する声も大きくなっていく。
慰安婦となった女性を貶めるような物言いも飛び交う。
自分たちにとって都合のいい事実のみを寄せ集め、新たな歴史ストーリーをつくり上げたり、関東大震災の際の朝鮮人虐殺などの史実をまるごと否定する歴史修正も横行している。

 さまざまな出来事が絡み合ってできている歴史を、単純化し、自分たちの都合のいい部分だけをつなぎ合わせて語る人たちがもてはやされるようになった。
 ただし、歴史を単純化し、都合のいい部分だけを語る、という点は、韓国側にも言えるのではないか。

 戦前の朝鮮の人たちは、日本に支配される屈辱を苦痛に思う一方で、儒教文化に根ざした男尊女卑的価値観や経済的な困難による苦労も味わっていたのではないか。
一口に日本人といっても、いろいろな人がいることを、実体験として知っていた人もいただろう。
 しかし、生の体験をしていない人には、「強制連行されて慰安婦にさせられた」「強制連行されて劣悪な環境でただ働きさせられた」などという、強烈で単純化された被害体験のみが伝えられ、そうしたシンプルな構図からはみ出すエピソードや、背景となった社会的時代的状況など置き去りにされてはいないだろうか。

 こうして、どちらの国でも、後世に伝えられる歴史は、実態とは離れ、単純化されていっているのではないか。
一時期、日韓双方で歴史学者が史実に基づいて歴史認識のすりあわせをしようと試みたこともあったが、とりわけ韓国側が自国の歴史認識にこだわったこともあり、うまくいかなかった。

 しかし、だからといって、日本が加害の事実まですべて「なかったこと」にするのはどうか。
れは、日韓関係を修復するのに壁となるだけでなく、国際社会における日本の評価を著しく貶めると思う。
 日本の加害の事実はきちんと伝えつつ、そんななかでも人々の人権を擁護し、その人生を助けた日本人の姿を伝えるということは、矛盾なくできるはずだ。

そうした教育は、過去の過ちを学ぶと同時に、日本人として誇りを感じさせ、国や所属する組織が誤った時に人間としてどう振る舞うべきかを学ぶ機会にもなる。
犠牲者の無念を忘れずにいると共に、日本が過去の歴史に向き合う姿を、国際社会に知ってもらうことにもなろう。

そしてなにより、歴史の実相に近づくことができ、物事は「善vs悪」といった単純なものばかりではない知らせ、物事を単純化する風潮にもブレーキをかけるのではないか。
 もっとも、それで韓国側が納得するかというと、そう簡単にはいかないだろう。

 作家の村上春樹さんが、「相手国が『すっきりしたわけじゃないけれど、それだけ謝ってくれたから、わかりました、もういいでしょう』と言うまで謝るしかないんじゃないかな」と述べているが、果たしてどうか。
  ドイツにもギリシャから戦争賠償請求が  最近、ナチス・ドイツの侵攻を受けたポーランドや占領を経験したギリシャの現政権において、ドイツへの賠償を求める動きが相次いで報じられた。

 第1次世界大戦の後、敗戦国のドイツには戦勝国からの巨額の賠償請求がのしかかり、それがナチスの台頭の一因となった教訓から、第2次世界大戦後、戦勝国はドイツや日本に対して、賠償を放棄するなど寛大な対応をした。

 1953年にソ連がドイツへの賠償請求権を放棄し、ポーランドも同意。
さらに1970年のワルシャワ条約でも、ポーランドのドイツへの賠償請求放棄が確認されている。
しかし、ポーランドの現政権は、「賠償放棄は冷戦時代のソ連に強要されたもので無効」と主張している。
 ドイツは、ギリシャに対しては1960年に1億1500万マルクを支払ったことで賠償義務を果たしているとしているが、ギリシャの現政権は求める賠償金の額が3000億ユーロ(約35兆円)以上になると見込んでいる。

 冷戦の影響や、巨額の財政赤字が発覚した「ギリシャ危機」で債権国のドイツが厳しい緊縮財政を求めたことなど、さまざまな要素が絡んでいるが、ナチス政権への反省を表明し続けている“優等生”のドイツでさえ、今なお賠償問題から逃れられずにいる現実は重い。

 まして韓国の軟化は容易ではないだろう。
しかし、日本が意識しなければならないのは、韓国だけではない。
日本は、その丁寧な対応を、第三国から見て理解してもらえるようふるまうことも必要だと思う。
 そのためにも、韓国や韓国の人たちに対しては敬意をもちつつ、法的な主張や対応を誠実にしていく。

加害の事実については、後世にきちんと伝える。
差別など人権侵害に抗った人たちについても、しっかり教えていく。
 こうした地道な対応を、誠実に淡々と続けていくしかないのではないか。
      (文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ) 東京都出身。
神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。
著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。
『「歴史認識」とは何か – 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。
江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com
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posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☀| Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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