2019年09月29日

表現の自由も風前の灯 昭和初期を彷彿させる政権の醜悪

表現の自由も風前の灯
昭和初期を彷彿させる政権の醜悪
2019/09/28 日刊ゲンダイ

 全ての表現活動を脅かす、最低、最悪の判断だ。
「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」(不自由展)が再開に向けて動きだした翌日(26日)、萩生田光一文科相が採択を決めていた補助金約7800万円の全額不交付を発表した。
 内定した補助金の取りやめは前代未聞だ。
萩生田は展示内容でなく手続き上の不備が原因と説明し、「検閲には当たらない」と強調するが、真に受けるバカはいない。  

不自由展は、慰安婦を表現した少女像などの展示に抗議が殺到。
放火をほのめかす脅迫もあり、わずか3日で中止に追い込まれた。
 文化庁は不交付の理由を、申請した愛知県が会場警備など警察に相談したのに文化庁に申告しなかった「不適当な行為」により、展示の実現可能性と継続性を適正に審査できなかったためとした。
だが、補助金の申請書類に実は安全性の懸念を記載する欄はない。

 県はどう申告すればよかったか――東京新聞の取材に文化庁の審査担当者は「仮定の話には答えられない」ときたからムチャクチャだ。
自ら後出しの屁理屈を認めたようなもの。
会期中の決定に不十分な説明。
その上、106あるうち1つの企画展の手続きで芸術祭全体の補助金を全額カットとは乱暴極まりない。
「ワイルド」な判断は、どう考えても官邸への忖度だ。

 菅官房長官は先月初めに「事実関係を確認、精査した上で適切に対応したい」と補助金の見直しを示唆。
“菅の一声”が文化庁に交付取り消しを決めさせたと言っても過言ではない。

韓国叩きで支持率上昇の過信の表れ
 しかも内閣改造で、よりによって安倍側近の萩生田が文科相に就任。
戦前回帰を目指す日本会議の超が付くシンパだけに、少女像などの展示は不快だろう。
 新大臣の存在が不交付を後押ししたとの見方もできる。

 理由はどうあれ、札束ドーカツで公権力が表現活動を抑圧するのは断じて許されない。
ましてや、不自由展を巡っては「ガソリン携行缶を持っておじゃまする」と脅迫ファクスを送った50代の男が逮捕されている。

今回の判断は、不自由展を中止に追い込んだ卑劣な行為を公権力が追認。
気に入らない表現は実力行使で潰してしまえ。
そんな表現の自由への挑戦を肯定し、助長する悪しき前例となる。

コラムニストの小田嶋隆氏が言う。
「政権の発想は卑劣な行為で不自由展を中止に追い込んだ人々と同じ。
慰安婦絡みなので、嫌韓一直線の政権として突っ張ったのでしょうが、悪しき前例により、全ての表現が脅かされる。
文化庁の屁理屈だと『騒ぎになる』作品を展示する限り、『事業の継続性』を疑われ“後出しジャンケン”で補助金不交付の圧力が働く。
その萎縮効果は計り知れません。
マトモな政権なら反発を恐れますが、今の政権は韓国叩きで支持率上昇に味を占めています。
今回の判断は、この程度のことをやっても国民はついてくるという過信の表れでもあるのです」

 公権力による「新たな検閲」は絶対に撤回させなくてはいけない。
“愛国心”教育を盛り込んだ改正教育基本法に始まり、
NHK支配と放送法をタテに取ったメディアへの忖度強要、
アジア諸国への歴史的配慮を義務付けた教科書検定の「近隣諸国条項」の骨抜きなど、安倍政権はこれまでも狡猾な手口で表現の自由を蹂躙し、教育に介入、歴史修正を進めてきた。

 芸術家グループ「Chim↑Pom」は不自由展に原発事故の被災地を舞台にした映像作品を出品。
その説明文で過去に別の展示会に出そうとした際、主催者から「安倍政権になってから、海外事業へのチェックが厳しい。
福島、慰安婦、朝鮮などはNGワードで、背くと首相周辺からクレームが来る」との趣旨の説明を受けたと明かす。

 ただでさえ、真綿で首を絞め上げるように表現の自由への侵害が各地で起きているのに、今度の札束ドーカツは言論統制の総仕上げ。
 その危うさは戦前と酷似しているという声が期せずして学者から上がっている。

 24日付の毎日新聞夕刊で〈今は「昭和3年」と酷似〉と警鐘を鳴らしたのは九大名誉教授の内田博文氏(近代刑法史)だ。
昭和3年とはどんな時代だったのか。
内田氏はこう解説していた。
〈その3年前に制定された治安維持法は、昭和3年に緊急勅令および議会の事後承諾という形で大幅に改定されました。
国体の変革が厳罰化され、最高刑は死刑となりました〉
〈昭和3年の段階であれば、治安維持法を廃止し、引き返す選択もできた。
しかし当時の世論は軍部にくみし、後戻りできない状況に進んでいったのです〉
 そして、今の日本は〈(昭和3年と)まるで同じです。
現政権は日本を新たな「戦前」にしようと企てています。

その証拠に、戦時体制の構築に向けてさまざまな下準備を進めてきました〉と喝破したのだ。

国連演説の16歳少女を見習って声を上げろ
 内田氏によると、国が戦時体制を推進する際
@治安体制
A秘密保護・情報統制
B国家総動員法制
C組織法制などをセットで整備する。

安倍政権も特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安全保障関連法、共謀罪などを矢継ぎ早に整備。
内田氏は〈一連の法整備で、国は都合の悪い情報を国民に隠し、国民を監視することができるようになりました。
これこそが「戦前回帰の企て」です〉と危機感をあらわにするのだ。

前出の小田嶋隆氏はこう言った。
「今の嫌韓ムードもアジアを見下していた戦前を彷彿させます。
不自由展についても、極端なやつが弾圧されるだけで俺たちは痛くもかゆくもない。
変わり者が困るだけとの軽い感覚で、そんな自由なら、なくなった方がいいと思う人も多いでしょう。
戦前もそうでした。

当初の弾圧対象は無政府主義者や共産党員ら“変わり者”だけでしたが、次第に『普通の人たち』が対象となっていった。
公権力の横暴を一度許すと、気が付けば自由は奪われていく。
そのことを肌感覚で知らない人々が増えていることが怖いのです」

愛知県の大村秀章知事は不自由展への補助金不交付について「表現の自由を保障する憲法21条を高らかに掲げ、裁判で争う」と徹底抗戦の構えだ。
「頼みはマトモな知事の抵抗だけでは情けない。
国連で気候変動の危機を訴えた16歳少女を見習い、主権者たる国民が手遅れになる前に声を上げるべきです」(政治評論家・本澤二郎氏)

 奪われた自由は二度と戻ってこないと自覚すべきだ。
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする